第9話 帰還報告

 冒険者ギルドにたどり着いた瞬間、一斉に視線を集めることになった。


「これは……予想以上に注目されてるな」


 その中でも一際視線を感じるのは受付嬢のニィナさんと、フェイドたちだった。

 ニィナさんがパタパタと入り口まで駆けつけてくれていた。


「ランドさん! と……レイちゃん、ですか? 何か全然雰囲気が……」


 猫系の獣人族のニィナさん。いつもはどちらかと言うとクールで淡々と仕事をこなす美人な人気受付嬢だが、今は慌てた表情を見せてくれていた。

 後ろに控えていたレイの様子がおかしいのを見て一度は足を止めたが、敵意がないことがわかるとペタペタと俺の身体を触り出す。


「良かった……本物ですね……。雰囲気はガラッと変わりましたが……とにかく来てください。何があったかお聞きしないと」


 ニィナさんに導かれるままギルド受付へと進んでいく。

 その間もずっとこちらに視線を飛ばしていたフェイドたちが、目の前を通るタイミングでようやく声をかけてきた。


「な……? お前……どうして生きて……」

「置いていかれた後ミノタウロスを五体倒して来たんだよ」

「そんな馬鹿な……」


 愕然とするフェイドに俺は一言だけ告げた。


「レイは死んだぞ」


 相棒の死。

 さらに自分の生死を大きく揺さぶった相手に対面するとやはり、多少なりとも怒りは込み上げるものだった。


「おい、今は犬っころの話なんかどうでもいいだろうが!」


 口を挟んできたロイグの言葉は許せるものではなかったが、わざわざここで自分から揉め事を起こすのだけは我慢した。

 ロイグに何を言っても無駄だろう。無視することにした。


「ギルドには俺からコトの顛末を報告しておく」

「ま、待て!」

「ああそれから、パーティーは抜ける。そうしたかったみたいだしちょうどいいだろ?」


 四人がどんな報告をしていたかわからないが、おそらく正直に俺を身動き取れなくしておとりのための餌に使ったとは言っていないだろう。

 状況を鑑みればフェイドたちにとっては苦渋の決断だったかもしれないが、パーティーとしては拙い対応だったのは間違いない。そもそも一人でも死人が出るようなダンジョンへは基本的に行くべきでないんだ。

 行くにしても細心の注意を払い、最も死亡率の高い人間をいかにして守るか議論してから向かうものだった。

 だから俺がギルドに何を伝えるか、気が気じゃないんだろう。


「待てランド!」


 慌てて俺を止めようとするフェイドだが、無視してニィナさんに先に行くように促した。


「おいおいてめえよ。何調子にのってんだよ?」


 するとロイグが立ち上がり俺の腕を掴んだ。


「雑魚の分際で偉そうにしてんじゃねえぞ! てめえが役立たずのせいで俺らは……おい!? 何だこの力!?」


 ロイグが驚いているが俺も原因がわからない。

 と、またあの声が頭に響いた。


 ──ミノタウロスの能力吸収によりスキル「怪力」を取得しました

 ──ミノタウロスの能力吸収によりスキル「怪力」を取得しました

 ──ミノタウロスの能力吸収によりスキル「怪力」を取得しました

 ──ミノタウロスの能力吸収によりスキル「怪力」を取得しました

 ──ミノタウロスの能力吸収によりスキル「怪力」を取得しました

 ──取得スキル「怪力」がエクストラスキル「超怪力」に変化しました


 おお……エクストラスキル!?

 すごいものを取得した。

 でもなんで取得までに時差があるんだ?

 いやまあ助かったから良いけど……。


 流石はエクストラスキルだけある。

 パーティー内でも最も腕っぷしの強いロイグが掴んできてもびくともしない。

 それどころか振り払おうと思えばいつでも振り払える状況になっていた。

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