第8話
「あーそういえば……フロアボス倒すと宝箱がもらえるんじゃなかったっけ?」
『グモオオ!』
肯定するようにエースが吠えてくれた。
「案内してくれたりするか?」
『グモ!』
着いてこいと歩き出してくれた。
「いくか、レイ」
『ワォオオン』
元気に返事をしたレイを撫でて後を追った。
◇
「これは……」
フロアボスの間に戻った俺は思わず息を呑んだ。
置いてあるのは5つの宝箱。
それぞれに最高品質のダンジョンでしか生成されない武具が置いてあった。
「なるほど……入ったメンバーに対応させたのか」
剣、鎧、ローブ、杖、そして……。
「指輪……か?」
『グモ!』
「つけろってか」
『グモォ!』
よくわからないけどまぁたしかに5つがパーティーメンバーに対応しているならこれが俺担当で不思議ではない。
装着した途端、頭にまたあの声が響いた。
──黄泉の指輪を装着しました。使い魔の姿を自由に可視化、不可視化できます
「可視化……?」
俺には最初から姿が見えていたが、試しに可視化を念じてみる。
『グモォ!』
『ワォオン!』
エースとレイが初めて出会ったようにはしゃいでいた。
「もしかしてあれか。俺にしか見えなくなってたのか?」
二匹がなぜかじゃれ合い始めたのでそういうことかもしれない。
そうか。これは取っておいてよかった。
荷物を宙に浮かび上がらせているのと、ミノタウロスの霊を引き連れているののどちらがいいかという問題だが……見てわかってもらえたほうが楽な面も多いだろう。
ただまぁ、普段はいきなりミノタウロスが見えると驚かせるだろうからレイだけ見せてエースは隠そう。
「あとのものも後腐れのないようにあのメンバーに渡すとして……この先はまた今度だな」
『グモォ!』
「気をつけろってか? わかってる。すぐには来ないよ」
Sランクパーティーをして逃げ帰るしかなかったようなダンジョンだ。
いくらレイが強くなって、エースが加入したからと言って無茶ができるとは思えない。
「どうせソロになればこんなところ立ち入りすらできないさ。地道にやるよ」
『ワォオオオン!』
『グモォオオオ!』
「ありがとな」
一緒に頑張ってくれるようなので二匹にお礼をして帰路についた。
道中は強くなった二匹のおかげで全く苦戦することもなくすんなり抜けてこれる。
前にミノタウロス。後ろに一角狼。エースに至っては文字通り片手間に現れる魔物を粉砕していたし、そもそもエースを見て挑んでくる魔物も少なかった。
俺はほとんど何もしないで歩いているだけなので楽なもんだった。
「このまま一回ギルドに行くか」
二匹を引き連れたままだと色々言われる可能性はあったが、これからも活動していくならいずれ慣れないといけない。
一旦これまで通りレイだけ可視化しておいたが、ギルドに着いたらエースも姿を見せるようにしよう。
「にしても生きてるって知ったらどんな反応されるかね」
『くぅん』
「大丈夫。気にしてないさ」
幼馴染のフェイドが俺を事実上殺そうとしたことはやはりショックだ。
それでも行かないといけない。
「仕返ししようとは思わないけど、驚かせるくらいは許されるよな?」
『ワォン!』
エースも報酬も、驚かせるには十分すぎる手土産だ。
どうやって報告するか頭を悩ませながらギルドへと歩みを進めた。
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