第77話

「神器か……」


 そもそも神器が産出されるダンジョン自体が発生原因も不明なわけだが、神器は古代の失われた技術の結晶であると言われている。神話の時代、神、悪魔、天使、龍などの超常の存在たちによって生み出されたもの……らしい。


 総じて言えばよくわからないがすごいもの、という認識だが、問題はそのすごいのレベルだ。

 汚れのつかない服。絶対に傷の入らない盾。どんな素人が振っても剣撃を飛ばし出せる魔剣。この程度ならまだ驚く範囲ではない。

 ドラゴンをも上回る戦闘力を持ったゴーレム。原理不明の長距離連絡手段。国を覆う大規模結界魔法。これらの神器は各国が国宝として保護している状況だった。


 俺の持つ可視化、不可視化を司る指輪も神器。

 そしてミルムが言ったとおり、神器の能力を本来の力まで引き出せてすらいないという話は、至るところで聞く都市伝説のようなものにもなっている。

 まあ俺の場合は文字通り使いこなせてないんだろうけどな……。


「ハイエルフとドワーフのハーフ。無限とも言える寿命とドワーフの持つ天性の技術によりその道を極めたものでございます」

「そんなのが……」


 ハイエルフって絶滅したんじゃなかったのか……。

 というかそんな存在であればどうして……。


「なるほど……私と同じね」

「ミルムと?」

「希少種。というより血族の貴重な生き残り。まして直接の戦闘力を持たないとなれば、隠れておかないと今頃どっかで解剖されるなり商人か貴族に捕まって奴隷のようにこき使われることになるはずよ」


 そうか。

 優れた技術があっても身を守る術が……。

 いや待て今の話だと。


「ええ。私が保護しております。生活の保証は私がする代わりに、優れた武具をこちらはいただく。とても釣り合った対価ではありませんので報酬は別途用意があるのですが、いかんせん無欲な職人でしてな……ただひたすらに素材を要求するばかりでして……」

「商人には捕まっていたけれど、奴隷にはなっていなかったというわけね」

「それはもちろん。それにしてもあっさり私を信頼してくださったようですね。ヴァンパイアの血族へお会いするのは初めてですがなにか知らずにご無礼を働いていなければいいのですが……」

「心配いらないわ。いえそうね……もう少しお菓子を出すのが礼儀かもしれないわね」

「はは……すぐに準備させましょう」


 遠慮のないやつだった。

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