第20話

「さて、Sランク冒険者として認められたわけですが……」

「名乗らないぞ? まだ」

「そうだろうと思っていましたので大丈夫です。しばらくはギルドとしても観察期間ですしね」


 動じることなくニィナさんは続ける。


「まずネクロマンサーの関連情報に関してですが……現在ギルドにネクロマンサーとして登録された冒険者の数は、ゼロでした」

「ゼロ!?」

「はい。過去のデータを洗いましたが、ネクロマンサーという名は見当たりませんでした」

「そんなに珍しいものなのか……?」


 見知らぬスキルや職種名が現れることは良くあることだが、その数がゼロになることは想定していなかった。


「珍しい、というより、ギルドはこれをユニーク職種と認定しました」

「ユニーク……」


 ユニークは文字通り、それだけの固有の力として認識されているもののことだ。

 例を挙げるなら、一番有名なものは魔王と勇者だろう。

 他には賢者、剣聖、聖女とかか……。

 とにかくすごいことだった。


「ユニークは何かしら特殊な条件の上で成り立つ存在。勇者のように形骸化して複数存在する任命式のものもありますが……各種属のキングや、龍種、固有精霊種なども職種とは異なりますが同じですからね」

「なるほど……こうして並べるとやっぱり……」

「はい。それぞれユニークの名を冠するものは全て、その能力も抜群に優れています」

「いいのか俺をそこに並べて」


 龍なんてもう、神話の世界の種族だ。

 勇者や魔王はもちろん、賢者、剣聖、聖女もそうだ。その並びにネクロマンサー、というより俺がいて良いのだろうか?


「ランドさんはSランクパーティーに順調に進んでいったので実感がないかもしれませんが、本来Sランクというのはもはや人知の及ばない超級の存在ですからね?」

「まあ俺はただの荷物持ちだったからなぁ……」

「ただの荷物持ちにギルドもSランクは出さないのですが……まあいいです。とにかく、今や単体戦力でSランクを名乗れるのですから、十分に並ぶのですよ。これらの強大な存在と」


 実感がない……。

 だがまあギルドの決定にいちいち何か言っても仕方もないな。


「ユニーク……まあ、名に恥じないように頑張るか」

「ギルドとしても期待しています」


 ニィナさんはにこやかに言うが、なかなか荷の重い話ではある。

 まして一般的に外れ職種と揶揄されがちなテイマーからの昇進だ。


「頑張るか……」


 改めて呟いた俺をニィナさんはニコニコした顔で眺めていた。

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