第49話
「なんだこれ……」
光を浴びた森の木々が一瞬で腐り落ち、光が収まるところで大きな爆発を起こしていた。
そんな凶悪な光がドラゴンゾンビの身体を起点に全方位に放たれる。
俺とミルムはなんとか全て躱したが、この攻撃は思わぬところにまで被害をもたらした。
「ぎゃあああああああああ」
「なっ!? 森に誰かいたのか!?」
「今は気にしてる場合じゃないわ!」
「くっ……!」
ミルムの言う通りだ。それにあの攻撃なら今さら回復魔法も持たない俺が行ったところでどうしようもないだろう。
やむを得ない。
「あれは……!?」
「ブレスの一種ね! ただし普通の竜と違って即死攻撃だけど!」
「で、あれは……?!」
「あっちが本物のブレス!」
空中で大口を開けたドラゴンゾンビの口元に黒紫の光が溢れ出していた。
真っ直ぐ向いた矛先は俺へ吸い込まれるように照準を合わせている。
──死ぬ
一瞬でこれまでの記憶が頭の中を駆け巡った。走馬灯ってやつだこれ。
スローになった景色の中で必死に頭を回転させる。
回避は……無理だ。ドラゴンの口はあの骨と同じサイズ。今からでは間に合わない。
霧化? いやあれは魔法には効かない事が多いと言われたばかりだ。
夜の王? 宵闇の魔力をコウモリなどの魔物に変える力だが、それをしたとしてもあの攻撃を防いでくれるとは思えない。
レイとエースをだしても被害が増えるだけだろう……。【宵闇の棺】は封印する。
打つ手がない。
次の瞬間、世界の時間がもとに戻ったかのように動き出した。
ドラゴンゾンビの口からはなたれた極大の死のブレスが、まるで周囲の景色ごと飲み込むように迫り来るのが見えた。
「短い人生だった……」
「何を勝手に終わらせてるのかしら……?」
「は……?」
不思議なことにブレスは俺のもとに到達することがなかった。
射線上にミルムがいる。
いや、ミルムだったものと言ってもいいかもしれない。
突き出した左腕ごと身体の大部分が持っていかれたような状態。
ドラゴンゾンビの姿と重なるほどにボロボロになって、俺を守ってくれていた。
「なんで……」
「馬鹿ね。私を誰だと思っているのかしら?」
ヴァンパイア。
アンデッドの頂点。
不死の王の意味を。俺は改めて目の辺りにした。
「【夜の王】」
短く、そう唱えただけでミルムの身体に無数のコウモリのような黒い影がまとわりついた。
そして─
「はい、元通り……っ!」
「大丈夫か?」
一瞬顔を歪ませたものの、その姿は確かに元のミルムのものに戻っていた。
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