第53話

「で、いまあなたのスキルはどうなってるのかしら」

「どうなってるんだろうな……」


 ミルムと出会うまでの道中で色々取得はしたんだが正直あんまり覚えていない。

 初級剣術や耐性系はまあ、持っているだけで意味があるからいいとして……。


「食事回復、食事強化、血液回復とかあったな……」

「血液回復って完全に私の使い魔のね」

「ごめん……」

「いや、もういいのだけど……ただそれはあんまり役に立たなそうね」

「そうなのか」

「だってあなた、血を飲むことあるのかしら?」

「ないな」


 文字通り血液を飲むと回復できるスキルらしいが、まあよほどのことがない限りは使わないだろう。


「あれ? じゃあ食事回復と食事強化は使えるのか」

「あなたはいまなにか食べるたびに回復するし強くなれるという状況ね」

「すごいスキルに聞こえるんだが……」

「エクストラスキルになってないってことは、強化補正が微増、ほとんど役に立ってないってことだと思うけれど、もし強化されたらあなたは食べてるだけで強くなるわね」

「なんか絵面としては嫌だな……」


 頭に浮かんだひたすら食べ物を口に運びブクブクと太りきった自分の姿をかき消すように首を振った。


「ま、エクストラスキルを整理しましょ」

「そうだな」


 今俺が持っているエクストラスキルはこれだ。


【超怪力】

【超反応】

【超感覚】

【白炎】

【雷光】

【血液再生】

【黒の翼】

【闇魔法大強化】


 そして今回手に入れた竜系三種。


【竜の加護】

【竜の咆哮】

【竜の息吹】


「私より多いわよこれ……ちなみに自覚がないようだけど【宵闇の棺】もエクストラ級、というかそもそもあなたの【ネクロマンス】なんて下手したらユニーククラスよ」

「そうなのか……」


 とりあえずスキルの数だけはミルムに追いついていたらしい。

 使い手次第ということがよくわかる事実であると同時に、これから頑張ろうと思える話だった。


「で、今回の竜系のスキルだけど、一つ一つ整理するわね」

「よろしくおねがいします」


 ミルムの説明によると今回の三つのスキルはこんな内容だった。


 【竜の加護】は状態異常耐性(全・極大)、防御力強化(極大)など、防御系スキルの詰め合わせパックと言われた。暑さや寒さもある程度かき消すほどのものらしい。


 【竜の咆哮】は【威圧】の上位互換。

 今後人間相手に何かあれば最優先で使える便利なスキルらしい。吠える必要はなく、ただスキルによって相手と自分のステータスに差があればあるほど相手を萎縮させ動きを封じるスキルのようだ。


 そして【竜の息吹】。これは全属性ブレスらしい。

 といっても実験したところ手から出すことができたので要するに全属性の攻撃魔法を得たということになるようだ。


【白炎】、【雷光】も【竜の息吹】のおかげで性能が上がっていた。

 慣れてきたら複合したスキルに目覚めるかも知れないという話らしい。


「次はあなたに任せてもなんとかなりそうね」

「いや……」


 できればこんな、ドラゴンゾンビと戦う必要があるようなことはもう避けたいんだけどな……。


「改めて、とんでもないスキル構成だな……」


 ちぐはぐだし使いこなしていない状態ではあるが、数と内容がとんでもないことは自分でもよくわかった。

 そんな俺をみて、ミルムが呆れた表情でこう告げた。


「だから言ったじゃない。化け物だって」


 アンデッド最強のヴァンパイアのその王にそう言われてしまうのもなかなかのものだなと思いながら、竜の墓場を後にした。

 今日は近くの村にでも泊まるとしよう。

 流石に色々あって疲れたからな……。

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