第134話 魔王、後は任せてモフるのじゃ
「ほれほれ、よーしよし」
「ポン! そこ気持ちいいポン」
「そうかそうか、お主はここが良いのか?」
「ピッピッ!」
「ははは、モフモフじゃのう」
うむ、皆モフモフで触り心地が最高じゃ!
「あの~」
と、そんなわらわにルオーダが申し訳なさそうに声を掛けてくる。
「何ダンデライポン達と戯れているんですか? 今はそれどころじゃないと思うんですけど」
そう、わらわはダンデライポンやカツラ達と戯れている真っ最中であった。
「まぁそうなんじゃが、現状クリエ達の連絡待ちじゃからな。情報が足りぬ状況で無駄に動いても無駄に力を消耗するだけじゃ。ここは向こうから連絡が来るまで、休息を取っておくべきじゃろう」
「それはそうなんですが……」
「という訳でお主もこ奴らと戯れるがよい、触り心地が良いぞ」
と、わらわはそばでまったりしているダンデダイポン達の元へルオーダを促す。
「はぁ、それじゃ失礼して……あ、フワフワ」
そうじゃろうそうじゃろう。
青空の下を飛んできたダンデライポン達は、フワフワの毛並みもさることながら。干した布団の様な柔らかな香りに包まれておった。
対してカツラ達はサラサラのシルクの様な手触りで、こちらもまた触り心地が良い。
「クリエ達が有用な常用を入手するのを待って、わらわ達は待機するのじゃ」
休むこともまた戦士の大事な役目。
決してフワフワのモフモフに身を沈めて寝たいからではないのじゃよ……グゥ。
◆クリエ◆
「むぅ、見つからぬ」
再び世界獣の背を上って探索を行っていたわらわ達じゃったが、世界獣の背中にはどこにも交信用の祭壇が見つからなんだ。
「どうなっておるんじゃ? いくらなんでもこうまで探して見つからぬのは異常じゃ」
前回交信した高さに近い場所は手当たり次第に探した。
仮に場所を間違えていたとしても、これだけ探せば見つかる筈じゃ。
「クリエ様、他の場所も探してきましたが、それらしいものはありませんでした」
と、別行動をしていた魔王のメイドが戻ってくる。
「そうか、そちらにも無いか」
困ったのう、念のためと調べて貰っていたが、それでも見つからないとなると、祭壇そのものが最初からなかったとしか思えん。
まさかの話ではあるが、姉上が関わっているのなら、そのまさかもあり得るのが怖いところじゃ。
「お主は何か意見はないのか?」
「ええ!? 私ですか!?」
わらわは同行していた魔王の弟子に意見を聞いてみる。
それにしても魔王が弟子を取るとは、もしや以前より常々愚痴っていた後継者として育てておるのかのう?
「そ、そうですねぇ、これだけ探してないとなると……別の所にあるんじゃないでしょうか?」
「別の所というと、尻尾にでも移転したとかか?」
これだけ探したというのに別の場所も何もないじゃろ。
それこそ今言ったようなありえん場所でもない限りの。
「いえ、そうではなくて、別の世界獣方じゃないかなって」
「何?」
「別の世界獣……ですか?」
「いやだって、世界獣って生き物なんですよね? ……よね? だったらオスとメスが居るんじゃないですか? それで動いてるのは祭壇の無い方で、クリエ様が交信
したのは別の世界獣……とか」
「まさかそんな……」
あり得ない、世界獣はエルフの国の守護者、そんな現世の生物の枠組みになど……
だが、しかし、この世に絶対などあるだろうか?
あるとしたら姉上の性格の悪辣さくらいであろう。
「別の世界獣……」
想像もしていなかった意見に頭をガツンと殴られた気分になる。
「クリエ様、これだけ探してもないのですから、一度我が主と合流して他にも世界獣が居ないか探してみた方が良いかと思われます」
「……そうじゃな」
メイドに促され、わらわはその案を採用する。
最初はあり得んと思っていたが、しかし時が経つほどその可能性は高いとわらわは思うようになる。
我等エルフにとって特別な存在だからこそ、神聖視しすぎてそんな当たり前の考えに至らなんだという事か。
「どうやら、魔王の後継者という考えもあながち間違いではないかもしれんな」
まだまだ未熟ではあるが、その発想は目を見張るものがあるか。
「っ!? なんか変な悪寒が!?」
お? 風邪か? 気を付けるんじゃぞ。
「よし、一度世界獣から降りて、魔王と合流するのじゃ!」
世界獣の周囲は魔力嵐が渦巻いで通信魔法が上手く繋がらんでの。
一旦世界獣から離れねば。
そうして、世界獣から降りたわらわ達は、魔王との連絡が繋がった事で、世界獣が無数にいる事を知って仰天するのじゃった。
「って、どんだけおるんじゃ世界獣―! 我が国の守護者じゃなかったんかーっ!!」
守護者ってそんなにたくさんおってええんかー!
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