第100話 ラグウンド王国攻略編 侵略開始

コマザ村の生存者は18名しかいなかった。


目撃者の話によると、


どうもザサウスニア軍ではないらしい。


「根人!? 根人が襲ってきたっていうのか?」


「ええ、確かに見ました。あのおぞましい姿……


決して見間違いではありません」


生き残った年寄りの女性が、


恐怖に顔を引き攣らせながら語ってくれた。


俺はすぐに千里眼で地中を見た。


コマザ村全域にまるでアリの巣のごとく、


トンネルが掘られていた。


穴は家の軒下や、道から外れた木の陰など目立たない場所が多い。


入り口はご丁寧に塞がれている。


……これでは気が付かないわけだ。


「根人の国……ラグウンド王国は1000人ほどしかいないはず。


この時期に我が国に戦争を仕掛けるなんて考えられません。


本気で潰し合えばこちらに分があるのは分かり切っているのに……。


ザサウスニア帝国が裏で糸を引いている可能性が極めて高いと思われます」


「俺も同じ意見だよ、マーハント。直接奴らの国に向かうぞ」


「今からですか?」


「もちろん」


俺は怒りに震えていた。


俺の国に喧嘩売ったこと、必ず後悔させてやる。




出発直前、脳内チップ経由で命令を出しておいた。


ミーズリー軍をノーストリリアに、


ベミー軍、ボサップ軍、ダルハン軍を


ザサウスニアとの国境付近に移動させた。


それとダルハンにカカラルを連れてこさせた。


カカラルが俺の他に言うことを聞くのは、


一緒に飛んだことのある者だけだ。



コマザ村での指揮はネネル軍に任せ、


マーハント率いる400名、


ダカユキー率いる50名、


それに【王の左手】を連れ、


俺たちは近くのトンネルに降り、暗闇の中へ歩き出した。


トンネルはかなり大きい。


3人が横に並べるし、高さも2m以上ある。


ラグウンド王国までの道は、


ユウリナから一匹の機械蜂を授かったので、


トンネル内をスキャンさせ、案内を頼んだ。


本音を言えば千里眼で道が分かるので、


一人で向かって全てを燃やし尽くしたいくらいだ。



1時間ほど進むと、ようや七人ほどの根人を見つけた。


ランタンの明かりに木箱や荷車などがある。


全員槍を持っていた。武人だ。


根人の外観は人間の感覚から言うとモンスターそのものだ。


皮膚は木そのもので、体長2m。


手は枝のように細くて長く、8本くらいある。


足も何十もの細い枝のようなもので出来ており、


まるでスライドするかのように歩く。


そして特徴的なのが顔だ。


ハンマーヘッドシャークのように頭の両部分に突起があり、


その先端に目がついている。


体は一枚の布で巻かれているだけだ。


「何用だ?」


一人の根人が前に出る。


「私はキトゥルセン王国のオスカー・キトゥルセンだ。


お前たちの王に会わせろ」


根人兵たちは互いに顔を見合わせ、何かを示し合った。


「そんな大勢の軍を連れて王に会わせろと言われても無理な話だ。


侵略しに来たと言っているようなもんだぞ?」


「……確かにな。だが俺たちはお前たちと同じことをしに来たんだよ」


「んん? 俺たちが何をしたって?」


根人たちは乾いた笑い声を上げた。


わざとらしい。付き合ってられん。時間の無駄だ。


構わず歩き出す。


「……おい、止まれ! いいのか? これは立派な国境侵犯だ! 


お、おい! 俺たちにはザサ……」


「知ってるよ」


俺はフラレウムから炎蛇を出し、その場にいた根人全員を焼いた。


マーハントと目が合う。


彼は何も言わなかった。


「オスカー様……」


ダカユキーが恐る恐る呟く。


そういえばコマザ村から誰も俺に声をかけない。


好都合だ、今は誰の意見も聞きたくない。


根人は断末魔を上げ、よく燃えた。


俺たちは火が収まる間もなく、ラグウンド王国に進軍した。

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