第62話 ケモズ共和国攻略編 ユウリナvs〝パラディオン〟管理者

15層にいるユウリナは、遥か昔に使っていた古い信号を捉えた。


「懐カシイ……」


進んでいる廊下には一定間隔で隔壁があり、それらは巨大な力で全てひしゃげていた。


「……最近ノジャナイ。ダイブ昔ノ痕跡ダワ」


途中の部屋はいくつかが土に埋まっていた。


床や壁には細かな機械類が転がっていたり、ぶら下がっていたりして、


廃墟同然だったが、小さなランプが所々で瞬いている。


信号の発信源の部屋に着いた。


扉は重厚で、おまけに壊れてしまっていて、ユウリナの力でも開かない。


扉の脇にセキュリティパネルがあった。


ユウリナはそこに人差し指を近づけた。


指の先からでたコードが、パネルの隙間から機械の奥に入っていく。


しばらくの後、周囲の壁に光が戻り、バシュッと音を立てて扉が開いた。


部屋は真っ暗だがユウリナには関係ない。違う視覚パターンで見れば問題ないのだ。


部屋は卵型で、天井は丸く、高い。


全ての壁にエネルギー充填機が差し込まれ、


取っ手やレバー、制御パネルなどがズラリと並んでいる。


「ヤッパリ、中央制御室ネ」


中央の台座には黒い球体が鎮座していた。


ユウリナは台座の下部にある排熱口に、先ほどと同じ手順でコードを潜らせた。


低いブーンという音が聞こえ、地面が白い光を灯した。


照明というものではない。ただ床が、壁が光るのだ。


壁が下から順に黄色い光を放ち始める。


台座も光り、同時に黒い球体が30cmほど宙に浮いた。


ユウリナが慣れた手つきでその黒い球体に触れる。


すると球体の周りに空中投射ディスプレイが複数表示された。


「フーム、損失ハ74%……アラ、動力モヤラレテル。


ナルホド、予備動力カ……ン? コレッテ……」


「コンニチハ!」


その時、朗らかで快活な女性の声が室内に響き渡った。


周りを見渡しても、全センサーを駆使しても、人影は捉えられない。


「……コンニチハ。アナタハ誰?」


「私ハ〝エイジス社〟所属、惑星間連絡船〝パラディオン〟ノ管理者デス。アナタハ?」


「私ハ……通リスガリノ機械ヨ」


この船の人工知能か。そう思った時、目の前に立体ホログラムの女性が出現した。


赤毛ロングの美人さんだった。


「珍シイオ客サンネ。


コノ場所ニ墜落シテカラ5392年4カ月11日7時間58分経ッテイルケド、


機械人ハ初メテデス」


「ソウ、オ会イデキテ嬉シイワ。機械人以外デハ、今マデドンナ人タチニ会ッテキタノ?」


「沢山ノ生物ガ私ノ中ニ入ッテキマシタ。


人間ハモチロン、獣人ハ一時期小サナ集落ヲ私ノ中ニ作ッテイマシタ。


根人モイタシ、様々ナ動物タチ……羽兎族モイマシタ。


皆サントテモ可愛クテ、ソシテ私ノ為ニ尽クシテクレマシタ」


「尽クストハ?」


「状況ガ変ワレバ方針モ変エナクチャ! アナタモソウ思ウデショ?」 


「……尽クストハ?」


「皆サン、有機物エネルギー転換炉ニ入ッテクレマシタ。


ソレデ私ハ今マデ生キテコレタノデス。命ニ感謝デス」


ホログラムの管理者はにっこりと笑った。


「……ソウイウコトネ」


「今モ沢山入リ込ンデイマスネ。


今回ノ皆サンハ素直ニ転換炉ニ入ッテクレルデショウカ、ウフフフフフフフフ。


ソレト、アノ小サナ機械虫ハアナタノデスネ? 一体、何ヲ企ンデイルノカシラ」


ホログラムが消えた。


同時に上から3つの塊が落ちてきた。


ユウリナは後ろに下がり、身体を戦闘形態に変形させる。


出入り口の扉が自動で閉まる。


立ち上がったのは人型の機械だった。


細長い頭部に、目は一つ。腕や足は稼働部が剥き出しになっている。


パーツの色もバラバラだ。


それぞれの肩に〝02〟〝9990〟〝075G〟とペイントされている。


機械人ではない。保守点検用の人型機械といった具合だ。


ただ、戦闘用に改造してあった。


三体がぴったり揃った動きで、紫に光る電磁スピアを取り出した。


バチバチと棒の先が爆ぜる。


「アナタハ高確率デ私ノ邪魔ヲシマス。ヨッテ、ココデ無力化サセテイタダキマス」


〝9990〟がユウリナに襲い掛かった。


ユウリナはスピアをかわし、相手の腕を掴んだ。


「管理者サン、アナタ思ッタヨリ早ク動ケルノネ。コレハ楽シミ」


力は互角だった。〝9990〟がユウリナに顔を向ける。


「皆、私ノエネルギートナルノヨ!」


〝02〟〝075G〟も床を蹴り、ユウリナに襲い掛かる。

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