第160話 〝七将帝〟と〝護国十二隊〟

今日は朝からずっと戦略会議だ。




参加者はラムレス、バルバレス、スノウ、ソーン、ユーキン、




バルバレス軍副官のベイツ、そしてザサウスニア軍の軍師アイザウル。




アイザウルは残ったザサウスニア軍を掌握するために必要不可欠な人物だ。




当人はいたってドライな性格で、




私情を挟まず淡々と仕事をこなすタイプの人間だった。




まあ感情で動くタイプなら初めからこちら側に呼んでない。




初老だが物分かりがよく、柔軟な頭を持っている。




元々はザサウスニアに侵略された小さな国出身ということで、




帝国に愛国心は無いようだ。




ちなみにこの会議は脳内チップ経由で配信している。




ザサウスニアにいる軍団長たち、隊長たちも聴いているし、参加も可能だ。 






マイヤーが昼食を持って来た。フライドポテトとピンチョス。




ピンチョスは1㎝くらいの厚さにカットしたバゲットの上に、




具材を乗せたおつまみのようなものだ。




レバーペースト、アオカビチーズにはちみつ、トマトと生ハム、




チキンのトマト煮、スパイシー焼きエビ……




あーもうビール飲みてえー。




マイヤーは俺と目が合うと昨晩はどうもと小さくウインクした。




うるさい、変態、早く仕事に戻れ!




まったく、王を縛ってあんなことやこんなこと……




よくできるな。あいつくらいだよ、そんなこと……




どうかしてるぜ、まったく……今度は逆でお願いします。




「お、ポテトがあるじゃないですか」




ラムレス……お前は変わらないな。








新しい王の間は以前の倍は広くなった。




円卓会議のテーブルはそのまま。




使い古されて歴史を感じるビンテージものだ。




俺の足元では大狼のラウとリンリアが丸まってる。




フラレウムのおかげで俺の周りは暖かいということが分かってるらしい。




リンリアの頭を撫でると彼女はこちらを見上げて舌を出した。




2頭ともお腹が大きかった。ギーの子を孕んでいるらしい。








「私の部下たちの報告によると、




大陸中央部のおよそ100近い小国が連合を組織したようです」




〝ラウラスの影〟の司令官、ユーキンが口を開いた。




相変わらず声ちっさいなー。




でもそれを見越して俺の隣に座ってもらったから今回は問題ない。




「大陸の中央を流れるブリムス大河にちなんで、ブリムス同盟と呼ばれています」




一番遠い席のベイツが聞こえないのか、さりげなく机に身を乗り出した。




「ちょこちょこ聞いてたけどさ、よくまとまったよな」




「あの辺りはほとんどの国がナザロ教ですから、




文化や価値観が近いのでしょう」




アイザウルが教えてくれた。南の国々にも精通してるので頼りになる。




「その影響で、南の大国テアトラの触手が止まったようです」




ユーキンが続く。




「テアトラは昔から商会や傭兵を使って他国を操ると聞きましたな……」




ソーンはひげを撫でながら昔を思い出しているようだ。




「その件につきましてはまだ情報が少ないので、追って報告差し上げます」




ユーキンが話し終えたので、俺は声を上げた。




「ねえみんな、食べよう。ラムレスに全部食われちゃうよ」




全員が苦笑して、料理に手を伸ばし始めた。








「オスカー様、ガシャの根の破片に触れられたようで……




悪夢を見ていると聞きました」




口元にトマトソースをつけたラムレスが心配した顔を向けてきた。




「ああ……でも毎日じゃないよ、まだ一回だけだ」




「心を壊すという伝承があります。心配ですぞ」




俺はポテトをもしゃもしゃしながら答えた。




「それについてはソーンが調査に行ってくれることになってるんだ」




ソーンは飲んでいたワインを置いて口を拭った。




「はい。大陸中央のタシャウスという小国が、




ガシャの根を信仰している珍しい国でして。




そこに行けば何か解決策があるやもしれません」




「ああ、でさソーン、ネネルからの推薦で、




旅のお供に連れて行ってほしい人物がいるんだった」




やべ、忘れてた。




「入ってきてくれ」




緊張した面持ちで入ってきたのはライカ・ダリナ・モレッツだった。




ずっと待たせてごめんね。




「……まだ子供では?」




ソーンの困った顔は珍しい。




「ダリナはネネル軍に所属している立派な兵士だ。




先の戦争でもたくさんの武功を上げている」




ダリナはよろしくお願いします、と怯えた小動物みたいに頭を下げた。






昼食が終わった時、




『オスカー様、いいでしょうか』




と、割って入ったのはミルコップだ。




『ギバ討伐の件ですが、




〝ラウラスの影〟の工作員から連絡が途絶え、




人質の情報が入ってこない状況です。




どうか我が軍に追撃を担当させて貰えないでしょうか?』




そういえば、ギバ討伐は後回しになっていた。




『私モ参加させて』




珍しくユウリナも入ってきた。




『工作員をサポートしきれナかった責任もあルし、




電波が途切れた原因も突き止めタいし。いいでしょ?』




ユウリナに言われたら断れない。




『分かった。任せるよ』








軍の再編も行った。




国土が格段に広がったので、軍団長を将軍に格上げ。




実力と経験があり信頼できる者にある程度の統治権を任せる、




〝七将帝〟という制度を作った。




七将帝    副将


バルバレス  ベイツ


マーハント  リユウ


ミルコップ  ディアゴ


ネネル    ルガクト


ベミー    マーナ   


ミーズリー  バハラ


ユウリナ   未定




ザサウスニアと南の国々を牽制、統治するには強力な軍が必要だ。




「あ、そうだ。




アルトゥールとケタルを将軍にと思ってるんだけど、




バルバレスから見てどう?」




「適任でしょう。まだ若いが実戦経験は豊富です。




今から育てておいた方がいいでしょうね」




本当ならルレも将軍候補だった。




本当に惜しい人材を無くしてしまった。




他にルガクトも候補だったが、




あくまでネネルに仕えたいとのことで断られてしまった。






それと【骸骨部隊】と護衛兵団を一緒にして、




同じ管轄にしてしまおうという話が出た。




王族、高官の護衛、敵地での工作任務、偵察、暗殺、攪乱が任務。




実力的には大差ないし、




そもそも【骸骨部隊】はザサウスニア攻略用に作った部隊だった。




攻守共に練度の高い特殊部隊だ。




一部隊五十名、全部で十二チーム作って交代制。




「国を守るので……〝護国十二隊〟と言うのではどうですかな」




ラムレス、食べてばかりかと思ったけど仕事するじゃない。




ちなみにキャディッシュは【王の左手】に戻った。隊も解体だ。




一番隊 ダカユキー


二番隊 スノウ


三番隊 シボ


四番隊 ギング


五番隊 ノワ




ここら辺まではすんなり決まったが……




残りはどこかから新たに引っ張ってくるしかないな。

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