第90話 イース公国攻略編 第二、第三試合

第二試合

ミルコップvsバハラ


リングに髭を生やした長髪の男が出てきた。


黒いからまだ若々しさがあるが、あれが白髪ならまるっきり仙人だ。


「バハラという男はゼルニダ家が大陸中央から拾ってきた用心棒です。


十数年前に滅んだ王国の将軍だったらしいですね。


寡黙で近寄りがたいと評判ですが、ゼルニダ家には固い忠誠を誓っていると聞きました。


好きな食べ物は魚のフライだそうです」


解説ありがとうユーキン。


好きな食べ物とかは別にいいよ、うん。


ミルコップもバハラも冷静で落ち着いた佇まいだった。


第一試合と違ってこちらは技術戦になりそうだ。


数発のコンビネーションを放って打ち合い、また離れる。


その繰り返し。


バルバレスの豪快な試合から巧みさが光る技術戦に。


観客は別種の興奮に囚われていた。


第1ラウンド、第2ラウンド共に互角の打ち合いのまま終わり、


第3ラウンドに試合は動いた。


徐々にミルコップがプレッシャーをかけ、


強烈なミドルキックとハイキックでバハラを追い詰めていく。


ガードの上からでも肉を打つ音がその威力を物語っていた。


バハラはスタミナが切れてきたようだった。


確かにそこまで若くない。


最後はローキックで下に意識を持っていったミルコップが


がら空きの頭にハイキックを叩きこんで勝利した。


綺麗なKO勝利に観客からは感嘆の声が溢れた。


「第二試合、勝者ミルコップ・ノストラ!!」




第三試合

ダルハンvsベミー


まるで相撲取りのようなダルハンの重量に、


軽いベミーがどう対応するのかがポイントだ。


ちなみにベミーの〝狂戦士化〟は禁止だ。


軍団長なんだから完璧にコントロールできるようにしろと厳命したので、


毎日のように訓練していたようだ。


観衆は獣人が戦う所を見たことが無いのでベミーに興味津々だ。


「ダルハンは昔、はぐれ白毛竜を素手で倒したことがあると聞いています。


加えてあの腹の脂肪の厚さ。


そもそも軍団長になれる人間はもはや人間じゃないですからね。


ベミーが人間を遥かに超える速さで攻撃したとしてもなんせ軽い。


致命傷は与えられないでしょうな」


ユーキンはそう言うが俺はベミーが戦う所を間近で見ている。


「いや、ベミーは腐王を殴り飛ばしてるからな。


たとえダルハンでも分からんぞ」


試合が始まった。


ベミーの速さはずば抜けていた。


ジグザグに駆け寄り、早速全体重を乗せた拳をダルハンの腹に叩きこんだ。


後ろに下がるダルハン。


ダウンこそしないが、顔をしかめ腹を押さえている。


距離を取ったベミーはまた同じ様に攻撃を仕掛けた。


それにしても猫耳と尻尾が目立つ。


しかし、今度は寸前でダルハンがカウンターを当て、ベミーは横に吹っ飛ばされた。


容赦のない一撃だった。


ベミーは立ち上がったがすぐにうずくまった。


ダウンだ。


速さが乗った分相当なダメージだったはず。


辛うじて立ち上がったベミーは接近戦に切り替えた。


まるで舞うように蹴りと拳を繰り出し、


ダルハンはそれらを8割くらい防ぎながら後退する。


ベミーは執拗に頭を狙っているが、ダルハンはガードを崩さない。


隙を見てダルハンも大振りの拳を見舞う。


大抵は躱されたが、一発いいのが入った。


ベミー2度目のダウン。


しかし打たれ弱いな、あいつ。


ダルハン優勢のまま第3ラウンドへ。


勝敗は一瞬だった。


頭上高く飛んだベミーは真上から蹴りを叩きこんだ。


両腕で耐えたダルハンはしかし、


素早く正面に回ったベミーの速さについていくことが出来ず、


がら空きのあごに右ストレートを貰い、ダウンした。


十秒でファイティングポーズを取れなかったため、


勝者はベミーに決まった。



「第三試合、勝者ベミー・リガリオン!!」

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