第89話 イース公国攻略編 第一試合

拳闘大会のルールは前世の総合格闘技にした。


こちらで古くからあった拳闘のルールとさほど大差なかったため、


出場者に大きな混乱はなかった。


肘打ち、金的、後頭部への攻撃は禁止。


5分3ラウンド制だがジャッジがいないため


最終的には審判の独断で判断される。


あとグローブの代わりに厚手の布を拳に巻いて戦う。


男は短パンのみ、女は短パンと胸にはさらしを巻いた格好で統一。


そんなとこか。


もう一つ、剣での試合も用意した。


剣か拳か出場者が選べるスタイルだ。


対戦する二人で決めるのだが、意見が割れればコインで決定する。


剣は木剣を使用、黄色い塗料を塗って戦う。


手足は二回まで、腹と頭は一回当たれば負けだ。





「オスカー様」


「うわっびっくりした」


気付くと背後に〝ラウラスの影〟の指揮官、ユーキン・イワーグがいた。


相変わらず暗い顔でぼそっと喋る奴だ。


「私の情報によるとボサップ軍団長はバルバレス将軍の座を狙っているとか。


大方の予想ではバルバレス将軍に軍配が上がっていますが、


単純な身体の大きさではボサップ軍団長の方が上ですので、


どうなるか分かりませんな。一試合目から楽しみです」


……か、解説ありがとう。


ていうか諜報機関の長というより週刊誌の記者みたいだな。


あともっと大きな声で喋って。





審判はルガクトにお願いした。


ベテランだし、信頼のおける判断を下せそうだ。




第一試合

バルバレスvsボサップ



開始のゴングが鳴る。


バルバレスは筋肉モリモリゴリゴリゴリラだが、


ボサップはそれ以上、褐色の大巨人だ。


早くもヘビー級の決勝戦のような雰囲気で会場の盛り上がりがすごい。


双方始めはジャブなどで探り合い。


徐々に大降りになっていく。


ボサップは丸太のような腕を力づくで振り回し、


圧倒的なパワーでバルバレスに襲い掛かる。


常人ならガードの上からでも一発アウトなパンチを、


バルバレスは冷静に受け、躱し、空いたボディにフックを叩きこむ。


こちらも常人なら一発でアウトだ。


バルバレスはボサップの攻撃に吹っ飛ばされそうになりながらも


しっかりローキックを当てていた。


肉と肉がぶつかり合う激しい音が会場に響く。


バルバレスがボディに拳を入れるたび、


ボサップがガードを吹っ飛ばす強烈なパンチを繰り出すたび、


会場には大きな歓声が沸いた。



第2ラウンド、ボサップの強烈な右ストレートが、


少しガードの下がっていたバルバレスの頭を揺らし、ダウンを奪った。


割れんばかりの大歓声。特にボサップの部下たち。


審判のルガクトがバルバレスの前に立って確認する。


ファイティングポーズを取った、大丈夫そうだ。


今度はバルバレスが床に引き倒した。


うまくマウントを取って上から乱打を浴びせる。


ボサップは嫌がっている。


ボサップの牽制する腕を掴み、そのまま捩じった。アームロックだ。


苦悶の表情を浮かべるボサップ。


折れそうなほど曲がった時、ついにボサップはタップし降参した。



「第一試合、勝者バルバレス・エメリア!!」


立ち上がったバルバレスに観客の声援と拍手が送られた。

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