第8話 魔剣フラレウム

「キトゥルセン家には古くから受け継がれる魔剣があります。


王家の血筋を継ぐ者はこの魔剣に認められなければなりません。


剣選の儀を行わなければ正式な王とは認められない、これはラムレス殿も承知のはず!」


こ、声がでかい。


「ちょ、ちょっとこちらへ」


ラムレスはバルバレスを柱の陰へ連れてった。


おっと、円卓に残ったのは無口な二人。気まずいよー、ラムレス早く戻ってきてー。


あと足寒いー。


「分かっているがバルバレス殿、彼がもし魔剣を操れなければ、


この国の王家は滅んでしまうのですぞ! 今回は異例中の異例、


剣選の儀はなしという方向で……」


「王家は血が全て。私はキトゥルセン家に忠誠を誓ったのです! 


剣選の儀を行わせたくないという事は、ラムレス殿も本当にオスカー殿が


王家の血を引いているか、不安という事ですな? 


落とし子でもジェリー様の血を引いた実の子なら、剣は反応するでしょう。


とにかく、私はあの魔剣が反応しなければ、オスカー殿に仕えないし、


軍も動かしませんぞ!」


もうね、丸聞こえ。スーパー丸聞こえ。離れた意味ないじゃん。


モルトとギルは無表情だし。あー気まずい。


気まずいから自分から動くか。はぁ、やだやだ。


「話は聞いた! その剣選の儀とやらを行おう。魔剣の前まで案内しろ」


ラムレスとバルバレスは驚いた顔をしている。


「さ、さすがはオスカー様。読唇術を使えるとは」


バカなんか、こいつら。




剣選の儀は地下の小さな神殿で行う。


もし、剣が反応しなければ、俺に王の素質がなければ、


また施設に逆戻りだろう。


それでも別にいいけど。そしたら当初の予定通り、森に入ってハンターになって


商会作って成り上がろう! それはそれで楽しそうだし、


つまりはどう転んでも俺は第二の人生楽しむから問題なしという事だ。


「ラムレス、剣が反応するというのは具体的にどういうことだ?」


「は、王家の血を継ぐ者が剣を握ると、刀身に炎が上がるのです」


「へえ、すごいなそれ。斬った相手も燃えるとかかっこいいじゃん」


「あ、いえ、さすがにそこまでは。刀身に揺らめく程度の炎が出るくらいです。


実用性はありません。ただやはり神秘的なので、力の象徴として


儀式や出陣の前などに使うくらいです」


ラムレスの息が荒くなった頃、地下の神殿に着いた。痩せろ。


明かりは松明だけかと思ったら天井付近に穴が開いており、


日の光が射し込み充分明るい。


石の台座に、魔剣は刺さっていた。


これね。小さい時から見てましたよー。


「それでは、オスカー様。剣選の儀を始めます。と言ってもただ剣を持って頂くだけです。


どうぞ、ご自身の間で……」


特に躊躇せず、俺は剣を引き抜いた。


「それが、魔剣フラレウム。どうですかオスカー様、何か感じますか?」


窺うようなラムレスの声に応えようとした瞬間、刀身が光った。


身体の奥がぞわぞわし、あ……なんかやばい、と思った時には


巨大な炎の柱が、刀身から出ていた。


「えええええ! ちょっとオスカー様! ええええ! あ、熱い!」


まるで火炎放射器だ。炎は天井にぶつかり、熱波が神殿を駆け抜けた。


やっべえ、どうしよコレ……やっべえ、どうしよコレ……。


あ、同じこと二回言っちゃった。


うん、相当焦ってるぞ、俺。


どうやったら止まんだ? 


落ち着け、考えろ、イメージだイメージ……。


俺はガスコンロのつまみを思い浮かべた。今は強火だ。


それを弱火に回す。すると炎が弱まって来た。いいぞ。


つまみを最後まで回す。消火だ。一拍置いて、炎は完全に消えた。


よし、簡単! もうこれ俺の物!


いつの間にか入り口付近に避難していた四人は団子みたいに一つになっていた。


おじさん団子。……やめてくれ。


「ねえ、外出ていい? 一回本気出してみたいんだ」

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