第154話 謁見の間の戦い 対ニギル戦

ゴッサリアが消えてすぐ、




脳内チップ経由で待機していた全軍を




ここガラドレス城に向かわせた。




とにかくゴッサリアの素性の件は後回しだ。




今は、皇帝がいるであろう謁見の間の扉、




この目の前の透視不可能な扉を開けることが先だ。




巨大な分厚い特殊な素材で出来た扉は、




兵が十人がかりでもびくともしない。




「どいてくれ」




俺は扉の隙間にフラレウムを突き刺し、




炎で熱してみた。




しばらくすると剣の周りが赤くなり、




ドロドロに溶ける。




十数分後、人一人通れるだけの穴が開き、




俺たちは内部へと足を踏み入れた。




驚いたことに中は緑溢れる庭園だった。




天井は開いており、小川が流れ小鳥が舞っている。




「なんと……」




ソーンだけではなく、みんなあっけにとられていた。




奥に進むと豪奢な宮殿があった。




千里眼で内部を見る。




大量の近衛兵が待機している。




有翼人兵も……あれは【千夜の騎士団】か?




一人、片翼の有翼人がいる。魔素がはっきり見えた。




あれがリアムか……よし、顔は覚えたぞ。




そして一番奥に……いた、皇帝だ。




丸々と肥えた身体をしているのに、




顔は暗く、まるで病人のようだった。




「スノウ、扉を開けたら一斉射撃だ。




その後はルレ、騎竜兵を突っ込ませろ」




二人は静かに返事をし、扉の前まで前進した。




「3、2,1……」




バンっと勢いよく扉を開け、




護衛兵団が連弩を乱れ撃った。




豪華な鎧を付けた敵兵がバタバタと倒れる。




後方から飛び上がった有翼人兵が向かって来たので、




俺は炎蛇を天井に向けて放つ。




数人を燃やし、残りは慌てて地面に降りた。




「行くぞ! 蹴散らせ!」




ルレが声を上げ、白毛竜に乗って突撃する。




敵は一瞬で蹴散らされ、戦線は崩壊した。




流石に近衛兵だけあって中々の強さだったが、




こちらも精鋭だ、負けるはずはない。




順調に敵の数を減らしていった。




混戦の中、リアムを探すが姿が見えない。




どこへ行った?




その時、頭上から一人の兵士が落ちてきた。




凄まじい音と共に着地した地面は不自然なほどにへこんでいる。




その理由はすぐに判明した。




茶色のローブに覆われているのは保守機械だった。




ただ、だいぶ古いようで、




動くたびに錆びついた音とやかましいモーター音、




そして至る所から黒煙が噴き出し、




長い間メンテナンスされてこなかったのが一目瞭然だ。




「やれ、ニギル!」




血だらけの敵部隊長が叫ぶ。




ニギルと呼ばれた保守機械はギギギギギ……と体を鳴らしながら、




腕から刃物を出し、中腰に構えた。




「盾を……」




スノウが言い終わる前に保守機械は地面を蹴り、




スノウとその周りの兵士を強力なパワーで吹っ飛ばした。




「スノウっ!!」




転がった護衛兵たちは幸いなことに致命傷は負わなかったらしく、




全員なんとか身を起こした。




目線を横に向けると、ルレ隊は敵の有翼人部隊と交戦していた。




あっちはあっちで手一杯だろう。




「止めるぞ!!」




「まて王子!」




コイツは放っておいたら被害がデカい。




俺は炎弾を撃ちながら駆け出し、




燃えるフラレウムでニギルを斬りつけた。




ガン!! と金属音と共に手首から生える刃物で防いだニギルは、




背中からもう二本の腕を出した。




一本は途中から千切れ、細いケーブルなどが垂れ下がっている。




俺を攻撃しようと態勢を変えた時、




リンギオとソーンの剣がニギルを襲った。




それを両腕で防いだニギルは、顔をぐりんとリンギオに向けた。




カパッと開けた口が光り出す。




まずい!




ビャッ!! と一瞬、光の筋がリンギオの肩を貫いた。




「がッッッ!!!」




レーザーだ。




その場に崩れ落ちたリンギオだったが、




流石と言うべきか、咄嗟に腕に短剣を刺してねじり、




ニギルの右手首を破壊していた。




と同時にソーンも剣を回転させ、左腕を一刀両断した。




一旦後ろに引いたニギルはガタがきたのか、




左膝を折った。




いや違う。膝の関節部分に刺さっているのはアーシュの短剣だ。




いつの間に?




気付けばソーンの下でしゃがんでいたアーシュは、




その体勢のまま次々と短剣を投げる。




コイツはマジで護衛というより暗殺者だな……。




カンッカンッと壊れた腕で短剣を防ぐニギル。




「アーシュ!! 投げ続けろ!」




「え! あっ、はい!!」




この機械を壊すのは今しかない。




ほんの一秒にも満たない間にそう考えた俺は、




気が付けば地面を蹴り、ニギルに向かっていた。




フラレウムの刀身を赤くなるまで熱し、




姿勢を低くしながら一直線に駆ける。




音が、なくなる。




ニギルはまだアーシュの短剣を防ぐのに忙しい。




口が光る。




手前で一回転。




レーザーが出る直前でフラレウムが腹を貫いた。




ジュアアアアアア!!




と金属の溶ける音。




そのまま俺は一本背負いの要領でニギルの上半身を真っ二つに焼き斬った。

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