第63話 ケモズ共和国攻略編 ユウリナvs〝パラディオン〟管理者2

左右から迫る〝075G〟〝02〟のスピアを身体を捻って躱し、


〝9990〟の頭を蹴り上げる。


3体は一旦下がり、電磁スピアを構え直して、再度一斉に襲ってきた。


コピーしたかのような同じ動作で迫りくる2本の突きを避け、


一本を掴んで叩き折る。


ユウリナは4本の腕から刃渡り10cmの電磁カッターを出し、


残る2体の猛攻を受ける。刃先が衝突するたび、バチっと小さな電撃が爆ぜた。


「システムヲ復旧シマス。現在、転換炉稼働率46%。


80%以上ニナレバ皆サンノ〝追イ込ミ〟ヲ開始シマスネ」


隔壁などを使ってこのダンジョン内にいる生物を転換炉まで誘導する気らしい。


「ソレハダメヨ」


ユウリナは腕を銃口の形に変形させ、レールガンで〝02〟の頭を吹っ飛ばした。


「中々ヤリマスネ、通リスガリノ機械サン」


電磁スピアを折られた〝075G〟が口に相当する部分からレーザーを出した。


エネルギーの収縮を感知していたユウリナは、


軌道を計算しギリギリのところで避けた。


後ろの壁のエネルギー充填機が数個爆発、炎上する。


「驚キデス。マサカ躱セルトハ」


「舐メナイデ。アナタノ本気ヲ見セテ欲シイワ」


ユウリナは気分の高揚を感じていた。


全機能、全潤滑油、全パーツが熱く滾っている。


『転換炉稼働率53%ニ到達。第94隔壁ヲ解放シマス』


管理者はあまり撃ってこなくなった。


下手に躱されてエネルギー充填機を傷つけたくないのだろう。


〝9990〟が電磁スピアで攻撃してきた。


ユウリナも電磁カッターで応戦する。


人間の常識を超えた凄まじい速さでの打ち合いが続く。


〝075G〟は動いていない。レーザーのエネルギーを溜めているようだ。


まるで演舞のような剣劇を数十秒繰り広げ、ユウリナは〝9990〟の電磁スピアを破壊した。


「アナタハ私ヨリ古イデスネ。一体何時カライルノデスカ?」


ユウリナは無視して電磁カッターで、


〝9990〟の腕を、脚を、首を、流れる様な動きでバラバラにした。


〝9990〟のパーツが全て床に落ち、ユウリナが振り返った直後、


〝075G〟のレーザーが左手の一本を直撃した。


ジャッ!! と一瞬で手首から先が溶けた。


「ドウデスカ? アナタモ本気ヲ出シテ下サイ。次ハ頭ニ当テチャイマスヨ?」


「ウフフ、ソレハ楽シミネ」


ユウリナは背中を変形させ、筒の様なものを8個出し、


そこから勢いよく蒸気を噴出させた。


あっという間に部屋が蒸気で満たされ、視界は真っ白になる。


ユウリナの視覚画面には『空間飛沫水分量93%』の表示。


『転換炉稼働率66%ニ到達。第32隔壁ヲ閉鎖シマス』


視界は真っ白だが、


二体とも赤外線やモーションセンサーなどが当たり前に搭載されているので、


戦いに支障はない。


「旧式ナノニ高性能デスネ。アナタノパーツハ非常ニ魅力的デス」


「ヨク喋ル機械ネ」


「アナタモ機械ジャナイデスカ」


「私ハアナタトハ違ウワ」


〝075G〟がレーザーを撃ってくる。ユウリナは躱さなかった。


腕に当たったが、ダメージは外装に傷がつく程度だった。


部屋中に舞った大量の水分子が、光を曲げて威力を減退させたのだった。


『転換炉稼働率71%ニ到達。第47隔壁ヲ閉鎖シマス』


ユウリナは腕を二本融合させ巨大なサーベルを形成した。


一気に距離を詰め、切りかかるが〝075G〟に止められた。


「水蒸気デレーザーヲ封ジ込メタツモリ? バレバレデスヨ?」


ユウリナは残る腕からカーボン繊維の強化ネットを発射した。


「ムムッ!」


「アナタガソウクルノモ予測シテタワ」


ネットに囚われた〝075G〟は激しく抵抗するが、もはやどうしようもなかった。


「ココマデガ私ノ作戦。マァソコソコ楽シメタワ。アリガトウ」


ユウリナはネットを締め上げた。バキバキと音を立てながら〝075G〟は全身を砕かれた。


「恐レ入リマシタ。力デハアナタヲ止メラレマセンネ」


再びホログラムの赤毛美人が現れた。


ユウリナは部屋の中央に移動した。黒い球体に手をかざす。


「ココヲ破壊スレバ、アナタハ暫ク復旧出来ナイワネ?」


「ハイ、ソノ通リデス」


赤毛美人は手を広げて肩をすくめた。


「ジャ、マタ会エタラソノ時ニ」


『転換炉稼働率76%……』


ユウリナは強力な放電を行い、黒い球体を吹っ飛ばした。


部屋は再び闇に包まれる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る