Epi8 お嬢は気になるらしい

 メイドの中条さんを相手に俺も大人になれた。年齢的なことじゃない。

 きっと一皮剥けたことだろう。もっとも高校生くらいの頃に、アレは剥けるようになったが。ひとり激しかったからなあ。あの頃は猿だった。

 昔はそれをするとバカになる、なんて言われてた頃もあるらしい。今は医学的にも適度にやっておくのがいいとか。正常な成長を促す意味でも、正しいやり方でと。

 なんてアホなことを考えていたら。


「公私を分けておきましょう」

「どう言う意味?」

「仕事では中条と。プライベートでは花奈かなと呼んでください」


 名前で呼んで欲しいって、最早恋人関係。


「私は向後さん、直輝さんと呼びます」


 なんか照れ臭さもあるが、これはこれでいい感じだ。そう言えば、中条……花奈さんの年齢って。


「あの、失礼かと思うけど、その、年齢」

「気にするのですか?」

「そういうわけじゃないけど」

「二十六歳ですよ」


 それ程上じゃない。姉さん女房としてはいい塩梅かも。

 もうひとつ気になることが。


「あの、なんで俺と?」

「理由が必要ですか?」

「だって、釣り合い取れてない」

「だからですね」


 意味不明。

 そのうち理解できるだろうって。今は花奈さんで発散して、お嬢の前では聖人君子で居ればいいとか。必ず誘惑してくるが、こうして居れば抗えるだろうとも。

 少なくとも去勢の危険性を回避できるから、ありがたく花奈さんを頂けばいいと。

 ああ、そうだ。まだあった。


「えっと前山さんとかは?」

「私をメインで。他は適度に、であれば文句は言いません」

「いや、それ、なんなの?」

「複数と経験していれば、お嬢様に手を出す心配はないでしょう」


 でもさあ、女子高生。ある意味ブランド。ましてや十七歳なんて、青い果実の如し。


「十七歳であってもケースによっては法律違反ですよ」

「え?」

「未成年者に成人が手を出すのは」

「あ、そう言えばそうか」


 成人と未成年者の関係性では、真剣な交際や婚約など、その時の状況が問われる。

 双方合意の上で金品のやり取りが無く、互いに愛しているなどであれば、罪に問うのは難しいが。ただし、合意したつもりでも、強制性が認められると、強制性交等罪だ。これに関しては年齢に上限はないから、相手次第の部分は大きい。例え夫婦間でも成立してしまうのだから。

 貶める目的なら合意は無かった、と言えば犯罪者に仕立てることも不可能ではない。


「お嬢様は結構狡猾ですから」

「じゃあ」

「犯罪者に仕立て上げられないよう、充分、日々の行動には注意を」


 怖い。あの一瞬の笑みはそれを含んでるのか。

 そうなると、握らせるとか、出すとかそれ以前の問題だな。性に関しては知らぬ存ぜぬ、触れず触れさせずを徹底しよう。


「他の使用人にも注意してくださいね」

「適度にって」

「全員が私と同じとは限りませんよ。ここから追い出したい、なんて考えの子も居ないとは限りません」


 つまりだ、迂闊に誘いに乗るなと。だったら、花奈さんだけでいい、なんて思ったりも。

 俺の前にお嬢付きのメイドが居た。俺が来たことでお役御免となれば、恨みを抱いていても不思議じゃないかも。

 いやあ、危ない危ない。危うく片っ端から誘いに乗るところだった。


 ベッドから出ると「入浴を済ませてしまいしょう」と言って、風呂場に連れ出された。そこでまたも発散してすでに出涸らしになった。

 かなり性欲旺盛な人なんだ。それに付き合える俺も大概だけどな。


 夕食を済ませ解放されると部屋に戻る。

 執事の心得は何度でも読んで、そらで言えるようにしておけと言われてる。とりあえず頭に叩き込むべく、読み返しているとドアがノックされる。

 もしかして花奈さんか、などと思いドアを開けて、思わず仰け反った。

 笑顔で俺を見るお嬢が居るんだよ。

 眉間にしわが寄るのを感じつつ理由を問う。


「あの、こんな時間に何の御用でしょう? まだ研修中の身なので、お嬢様とは」

「顔見るのも駄目なんて無いでしょ」


 少し話もしたいとか言ってる。


「大旦那様や旦那様の許可は?」

「あるわけないでしょ。あたしが勝手に来ただけ」


 これ、あかん奴や。

 あとで知れたら絶対叱責されるだろ。


「お部屋にお戻りください」

「イヤ」

「では許可を取って来てください。私はまだお嬢様と接する許可を得ていません」

「堅い! 硬いのはチ〇コだけでいい。あ、筋肉も硬めがいい」


 思わず卒倒しそうになる言葉を平然と口にしてるし。お嬢様だろ? それが平然と「チ〇コ」って、なんだよ。

 目の前で仁王立ちしてるし。ドアの前でのやり取りになってるけど、これ、部屋に入れるわけに行かないよな。なんか、めちゃ可愛いけど、やっぱ変態なんだ。


「お嬢様。わがままは言わないでください。三か月後にはきちんと対応しますから」

「少しくらいいいと思うんだよね。チ〇コ触るとか舐めるとか、しゃぶるとか」


 脳天を突き抜ける甘い言葉。JKにそれをしてもらえる、なんて考えると股間が爆発しそうになるだろ。


「話しをと先程聞きましたが?」

「プッ〇ートークって奴じゃん」


 ポルノ映画のタイトルだろ、それ。つまりやる気満々。危険すぎる。


「いけません。高校生であることの節度をもって」

「堅いんだってば! チ〇コ吸わせろ。あたしのを吸え。命令だからね」

「そんな命令に従えません」


 従いたい。けど去勢される。

 上目遣いで見ても駄目だからね。事はお嬢だけに留まらず、俺の股間の命運も掛かってる。このすさまじい誘惑に抗えないと、俺は男としての機能を失う。

 宦官じゃないんだし、そんなのは絶対嫌だ。


「お嬢様。最低限、大旦那様の許可をお取りください。それなしには一切の接触は致しません」

「ぶーぶー」

「ぶーぶーではありません。さっさと自室へお戻りください」

「ここはあたしの部屋でもある。だから好きに出入りする」


 なんなんだ! この娘っ子は。どんだけ性欲旺盛なんだよ。しかもやっぱりシースルーだし、全部見えてるし、俺の股間はモリモリ君になってるし。

 聖人君子なんて無理。

 暫し押し問答をしていると、救世主が現れた。


「お嬢様。何をしているのですか」


 花奈さんだ。早足で向かってくると、お嬢の首根っこ掴んでるし。


「中条! あたしは――」

「関係ありません。こんな時間に男の部屋を訪れるなど言語道断。大奥様に申し付けますよ」

「うー」


 花奈さんに引き摺られて行くお嬢だ。まるで子猫の如しだな。

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