Epi43 清楚なお嬢様は崩壊した
清廉潔白、純朴にして純情。清楚にして高貴。お嬢様とは斯くあるべき。
世の男性の理想の体現者。だよな? 俺だけか? そんなこと思ってるのって。
だが、このままでは目の前に居る、理想の体現者が崩壊しかねない。
「だからなのでしょうか。今までは思考の埒外でしか無かった、その、ち、こ、ですか。とても気になるのです」
「いい傾向だね」
「良くないぞ」
「なんで? 普通だっての」
なんか、葉月の奴、俄然元気になってきてないか?
「あの、向後さんの、ち、こ、がとても気になります」
「なるよね。それが普通だし。含んでる時とか至高の瞬間だよ」
「なわけねえ」
「なってるんだってば。直輝のだから」
不味い。楠瀬さんがどんどん葉月に毒される。
葉月と付き合うということのリスク。変態色に染まってしまっては、楠瀬さんのご両親に申し訳が立たん。きっと教育方針自体が、清廉で清楚なお嬢だったんだろう。それが葉月のせいで、性欲塗れの変態性欲者になってしまう。
なんとしても防がねば。
「私にも頂けるのでしょうか?」
「見たことあるの?」
「実物はありません。教科書ではあります」
「あんないい加減な絵と違うから。温もりとか硬さとか、脈打つ感じは実物を握らないと」
やめろ! このど変態め。
「葉月。妙な世界に引き込むな」
「妙じゃない。世界中の誰もがしてる。隠す方がおかしい」
「じゃなくて、それはお嬢様が話のネタにすることじゃない」
「してるってば。これでうふふちゃんも仲間入りできる」
妙な幻想を抱くなとか言ってる。お嬢様なんて呼ばれてる連中だって、一皮剥けばベッドで悶えるただの女だとか。
こいつ、一応お嬢の癖に女性を下げるのが得意だな。
「葉月の言い分だと女性に失礼な気がするぞ」
「女の敵は女。外野は黙ってればいいの」
もっと自由であるべきと言ってる。性を卑猥なものと決めつける方がおかしいとも。生物である以上、当然の行為であり生殖活動あっての、生物の繁栄だとまで言ってる。
「多くの生物にはオスの機能とメスの機能しかない。人の場合、精神的な面で性の不一致はあっても、肉体はみんな同じ。だったら、性交だって当たり前のこと。いちいち蓋をするからいやらしくなるんだよ」
もっともらしいことを言ってるが、それだと性が乱れるだろ。自制することも必要なんだし。
だが、俺の言い分なんてあっさり切って捨てられた。
変態を極めると屁理屈で押し切るようだ。
「楠瀬さんは葉月のように育ってない。家庭環境もそれを避けてきた。だったら、その家庭環境を壊すようなことはしない方がいい」
「そんなの知らない。何も知らずに世間に出るより、知って出た方がいい」
「そりゃ一理あるけど、葉月からだと変態になる」
「変態じゃない。性に忠実なだけ」
ええい。口の達者な奴だ。
「うふふちゃん。気になるなら泊って行きなよ」
「お母様の許可を取らないとなりません」
「じゃあ、あたしから言っておく」
了承しやがった。まさか、本気で興味を持ったのか?
そしてその対象者は俺。このお嬢様の前で股間を見せびらかすのか? やめてくれ。俺の精神が耐えられないし、理想像が壊れて行くのに耐えられない。
「葉月。ごり押しは止めた方がいい」
「ごり押しじゃない。普通に友だちが友だちの家に泊まるだけ」
こんな時だけ普通を装いやがって。実態はエロ教育をしようと企んでるだけだ。
変に染められたらのちのち困るぞ。
「あの、向後さんの、ち、こ、ですが、今夜披露して頂けるのですね?」
あかーん! 完全に葉月に染まった。変態が増えるだけだろ、これ。
「もちろん。お触り自由。もちろん含むのも」
「無いぞ」
「なんで? 高貴なお嬢様を蹂躙できるチャンスだよ」
「高貴かどうかはともかく、然るべき手順を踏んで」
そんなのどうでもいいと。欲望に忠実であればいいとか。変態は言うことが違う。
「あたしとは繋がれない。でも他所のお嬢様なら関係無いよね」
「やめてくれ。流されるから」
「流されてお嬢様を昇天させればいいじゃん。あたしも昇天させて欲しい」
楠瀬さんを見ると、目がらんらんと輝いてる。興味津々って奴か。やばいな。このままだと葉月の思うがままになる。いくらなんでも性的な接触は、楠瀬さんの両親に申し訳立たん。絶対に阻止しないと。
「葉月」
「なに?」
「如何わしいこと禁止」
「興味持ってる」
興味は興味。それはいずれ成人してからでも遅くは無い。自由意思で行動できる年齢になったら、自己判断でやりゃいい。今は親の庇護下の存在だ。好き放題の性なんて許されるわけないだろ。
なんで葉月はその辺の感覚が、皆無になってるんだ?
「年齢を考えろ。責任のすべてを負える年齢じゃない。つまりー!」
「小言は要らない」
なにしてやがる! このど変態。俺の股間を握り締めるな。
楠瀬さんが恥ずかしそうに目を覆ってるが、しかし、その隙間からしっかり観察してるし。
「うふふちゃんも、こうやって握るといいよ」
誘うなバカタレ!
「あの、それは?」
「ここにチ〇コがある。触ってれば変化するから」
「あの、よろしいのでしょうか?」
「いいに決まってる」
じゃねえよ! バカなのかこいつは。
「やめんか、バカタレ!」
「いいじゃん」
「駄目だっての」
「あ、駄目って言われて悲しんでるよ」
残念そうな表情の楠瀬さんが居る。マジで期待したのか?
すでに葉月に毒されてしまったと。こんな失態、執事として失格だろ。
「葉月。まずは手順を踏んでからだ」
「手順って? 回りくどい口説き文句から入って、適当に性欲誤魔化しながらデートして、気分が盛り上がったらキスして、何か月も掛けてやっとセックスするってこと?」
「いや、まあ、そうなんだけど」
身も蓋も無い言い方しやがって。
「くだらない。男女が惹かれ合ってるってのは、そのまま性欲じゃん」
そうだけど、それだけじゃないだろ。
精神的な繋がりってのもあって、愛だの恋があって。と言っても通じなかった。愛があるから性欲がある。性欲があるからこその愛だとか。
最早手に負えない。
「電話しておくね」
「お願いいたします」
泊まりは確定のようだ。
それと楠瀬さんに対しても、距離を縮めるためにタメ口をとか。
「他人だよ。躊躇する理由ないよね」
「曽我部家の執事をバカにされるぞ。曽我部家も教育できてないって」
「くだらないんだってば。格式とかただの見栄っ張り」
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