Epi103 旦那様へ相談とお嬢

 さて、葉月が戻っているとなると、真っ先にあいさつに行く必要がある。花奈さんを後回しは正直気が引ける。葉月なら放置でも一向にかまわんが。だが、主の立場がそうはさせないんだよな。

 仕方ない。先に行くか。


「葉月が戻ってるなら、さっさと顔出してくる」

「私は?」

「そのうちな」

「そんなあ」


 食わせる気は無い。最早一ミリ足りとて倉岡にはやらん。

 手を振り払いさっさと屋敷へ向かう。残念そうだけど葉月優先ってのは、メイドなら理解もしてるだろ。

 通用口から屋敷に入り葉月の部屋に。ドアを開けると、一気に華やぐ笑顔で迎える葉月が居る。


「直輝、寂しかった!」

「そうか。その前に、あけましておめでとうだ」


 まあそうだろうけど、飛び掛かってきて抱き着いて、俺の胸元で頬ずりしながら、だから、股間を漁るなっての。新年早々なんなんだ。

 こいつ、さっさと服を剥いで、ズボンを下げるな! パンツまで下げようとしてやがる。


「葉月、先にあいさつ」

「チ〇コにあいさつするから」

「違う。俺にだ」

「チ〇コは直輝だから」


 やっぱどっかおかしい。


「正月、誰かに使った?」

「使う相手は居ないぞ」

「じゃあ、たっぷり溜まってるよね」


 こいつ。


「全部吸い尽していいんだよね?」

「駄目だ」

「中条? 一ミリグラム程度残してあればいいよね」

「そうじゃねえ」


 何が一ミリグラムだ。ほぼ無いだろ、それじゃ。そうじゃねえ。

 新年早々食われてなるか。


「葉月、昼間っから盛るな」

「盛ってない。あたしの愛だよ」


 でだ、やっぱそうなるか。

 一気に服を脱ぎ散らかして、いつも通りの姿になり、そうなるとなあ。こっちも一週間出してないから反応が早い。


「直輝! 全部もらう」

「やらん」


 抵抗を試みるもがっつり食われた。

 せっかく花奈さんと愉しもうと思ったのに。真っ先に葉月に吸い尽されるとは。

 事が済むと満足げな葉月が居る。ベッドに横たわり、相変わらずいじくってるし。


「あ、そうだ。旦那様に話が」

「もう少し余韻」

「要らん」

「直輝、なんか冷たい」


 俺の手を葉月の股間に宛がい、まさぐらせるな。また反応しそうになるだろ。まあ、それが狙いだろうけど、そうは問屋がー!


「葉月! 二ラウンド目は無いぞ」

「三回は必要」

「要らん。だから食うな!」


 駄目だ。食らい付いたら放さない。まるでスッポン。

 二回戦が終わり、さっさとベッドを出ると「三回目は?」じゃねえっての。旦那様に用があるって言っただろ。

 こいつ人の話聞いてねえ。まあ、一週間離れてたから、寂しかったんだろうけど。それでもだ、まずは旦那様や奥様にも、年始のあいさつは必要だろうに。


「あいさつしてくる」

「そんなのあとででもいいのに」

「アホか。雇用主へのあいさつは常識だ」

「あたしじゃん」


 違う。最終的な雇用主は旦那様だ。葉月は間接的な雇用関係でしかない。金の出どころは旦那様だからな。

 せいぜいが最低限の命令権しかないんだっての。


 でだ、俺が服を着て旦那様の部屋へ行こうとすると、ちゃっかり付いてくる葉月だ。一応服を纏ってはいる。まあいいか。

 旦那様の部屋のドアをノックすると、入っていいと返答がありドアを開ける。


「遅れましたが、新年のごあいさつと、少々お話しが」


 張り付く葉月を見て微笑む旦那様だな。いい雰囲気とか思って無いだろうな。


「話し? 何かな」

「大変不躾で申し訳ありませんが、実は、妹がここでメイドの仕事をしたいと抜かしまして。無理なのは承知の上ですが、話をしたという事実が必要なので」

「メイド?」

「直輝、妹居たんだ」


 メイドねえ、とかなんかボソボソ。

 俺を見ると。


「年齢は? 学歴とか職歴があるならそれも」

「あ、年齢は二十歳です。高卒で今は事務職をしています」

「凡そ二年ほどの事務経験はあるのか」


 俺の横で「妹さんって可愛いの?」とか聞いてくる葉月が居る。邪魔だっての。今は旦那様と話してるんだから。


「面接してもいいんだが、確か北海道だったよね? こっちに出てくるだけでも大変じゃないのか?」

「それに関してですが、来月観光を兼ねて東京に出てくる予定です」

「そうか。じゃあ、日程が決まったら報告してくれればいい」


 予定を開けておくそうだ。

 どんな面接内容なのか、これで知ることができそうだ。と思ったら。


「守秘義務は兄妹間でもあるからね。兄妹だからと言って聞いたりしないように」


 マジか。つまり面接内容を知ること適わんと。そこまで徹底するってことは、やっぱ面接時に相当如何わしい内容を。今後執事が増えた際には、その体でもって誘惑するようにとか。本気で迫って繋がれとか。

 妹が誰かに食われるってことも。まあ構わんけど。あんなんでも貰い手が居れば御の字だ。


「わかりました」

「あれ? いいの?」

「はい?」

「少しは聞いてもいいんだけどね」


 なんだっての。試したってか?


「守秘義務は?」

「知りたいんだろ? どんな面接してるのか」

「あ、いえ」

「あとで聞けばいい」


 いいのかよ。なんか拍子抜けした。


「直輝。妹さんって可愛いの? ねえ、無視してないで」

「あのな。旦那様と話しをしている最中だっての」

「パパじゃなくて、あたしを最優先」

「旦那様、これ、いいのですか?」


 いいらしい。

 ついでだから聞かせて欲しいと。


「可愛いか可愛くないか、で言えば。わかりません。所詮、妹なので意識したこともないです」

「なんか、つまんない」

「そうか。履歴書は写真添付で頼むよ」

「畏まりました」


 でだ、葉月の奴、さらに深堀してきやがる。


「体型は?」

「知らん」

「見てわかんないの? おっぱいでかいとか、尻がでかいとか、腹が出てるとか」

「知らんっての。あえて言えば普通じゃないのか?」


 妹の体に興味を持ったらアウトだろ。あれは異性じゃない。ただの家族だからな。


「葉月。どうせ採用時には身体検査がある」

「あ、そうだね」

「え? 身体検査?」

「当然。身長、体重など服を用意する必要があるからね」


 あ、そうか。衣食住で服を用意する都合上、知る必要があるのか。まさか、旦那様、俺の妹に興味あるのか? 至って普通でこれと言った取り柄も無いぞ。可愛いと思ったことも無いし。ただの妹だし。

 と思っていたら。


「歳が近いから葉月の友だちに丁度良さそうだしね」


 だそうだ。それと。


「向後君の妹だろ? なにかしら光るものがありそうだ」

「え? いやいや、無いですよ。アホですし」


 期待するそうだ。

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