Epi104 久しぶりに愛しのメイド

 旦那様に話は通した。妹には、あとでメッセージで伝えればいいか。


「直輝。どこ行くの?」

「花奈さんの部屋」

「あたしは?」

「充分、相手しただろ。少しは休ませろ」


 出すなら寄越せじゃねえ。

 マジで一滴残らず吸い尽す気かよ。これ以上はやらん。せっかく一週間ぶりだと思ったのに、早々に出涸らしになるじゃねえか。

 縋る葉月を振り払い、花奈さんの居る部屋に。


「直輝、戻ってきたら吸うからね」

「吸わせるかっての」

「じゃあ、繋がるからね」

「ねえんだよ」


 三日くらい反応しない程度に花奈さんと愉しもう。葉月は今日ので充分だろ。

 寮に行くと玄関先に帰ってきたばかりなのか、青沼さん居るし。


「向後さん。おめでとうございます」

「ああ、おめでとう」

「今年こそ、よろしくお願いしますね」

「なんかおかしくないか?」


 抱かないぞ。全裸立ちション女は。俺の趣味の範疇外だ。

 それにしてもでかいキャリーバッグだ。何が入ってるのか知らんが。


「中身知りたいですか?」

「いや、結構」

「下着と替えの服と、向後さんへのお土産ですよ」

「土産?」


 キャリーバッグを開けてガサガサ漁ると、なにやら取り出してる。


「これ、どうぞ。田舎の調度品です」

「田舎どこ?」

「宮城の鳴子です」


 へえ。温泉地か。ってことは、もしかして。


「こけし?」

「よくわかりますね。特注品ですよ。私にそれを使ってヒイヒイ言わしてください」


 二の句が継げないとはこのことか。


「まさか電動とか」

「一応手動です。オプションで電動化も」

「アホだろ」

「アホじゃ無いんです。向後さんとの夜の秘め事に」


 こけし違いだろ。バカ過ぎて話しにならん。でも、花奈さんと。いやいや、そうじゃない。こんな如何わしい物を花奈さんにとか、あり得ん。

 少しは興味持ってたりするのか? じゃねえ。


「あ、中条さんに使ってみて、好評だったら私にも」

「あのなあ」


 どこまで行っても変態。


「返していいか?」

「せめて見てからにしてください」


 要らんけど。しっかり持たされた。部屋に転がしておけばいいか。

 とは言え、どんなものか多少は興味がある。少しだけ見て打ち捨てておけばいい。

 青沼さんを放置し部屋に行き、まずはその、こけしとやらを。


「うーん」


 これを何と呼称すればいいのか。葉月が見たら間違いなくチ〇コ、と言うだろう。つまりだ、珍こけし。顔も描いてあるけど、なんて言うかいやらしい表情。

 電動化とか、と思って下から見ると、蓋が付いてるし。もしかして電池?

 開けて見ると空間。つまりモーターと電池を入れると「ぶーん」って。なんか、少し使ってみたい衝動に駆られる。けどなあ、花奈さんにこんなもん使ったら、嫌がるかもしれんし。葉月なら喜ぶか。だったら葉月相手でもいいや。


 とりあえず花奈さんの部屋へ。

 ドアをノックすると素敵な笑顔が出てきた。


「直輝さん。あけましておめでとうございます」

「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

「こちらこそ。どうぞ」


 部屋に招き入れられて椅子に腰掛ける。


「それは?」

「あ」


 つい持って来ちまった。


「えっと、青沼さんからのお土産とか」

「そうなんですね。なんですか?」

「えっと、説明が難しいけど、見ればたぶんとしか」


 花奈さんに見せると手に取って観察中。で、俺を見て「使いたいんですか?」と。

 いや、それを花奈さんに行使する気は一切ない、と言いたいんだけど、正直な話、それを使った時の反応も気になるっちゃあなる。

 でも、失礼すぎるし。


「いいですよ。試してみますか?」

「え?」


 マジか? 花奈さん、道具もオッケーなの?


「伝統工芸品のはずなのに、なぜこのような形状なのか、ですね」

「俺も思った。けど特注だとか言ってたし」

「なるほど。そうですか。直輝さん、興味あるんですよね」

「あの、少し」


 貞操帯を使わせたこともあるから、今度は自分に遠慮なく使ってみればいいと。時に道具もまた新たな刺激になるからと。そうやって変化を持たせると、長く楽しむこともできるそうだ。

 大人だ。つくづく花奈さんは大人だよな。


 結局、凡そ二時間。

 しっかり愉しんだ。思った以上に花奈さんが乗り気で「できたら電動だともっと良かったですね」だそうだ。

 悶える花奈さんが色っぽくて、葉月で出尽くしたと思ったけど、しっかり頑張れた。やっぱ大人の魅力には抗えん。


「では夕飯の時に」

「またあとで」


 あ、そうだ。まだ未定だけど妹の件を。


「あの、花奈さん。実は妹が」

「妹? 直輝さんに妹居るんですね」

「一応。で、ここに就職したいって」

「そうなんですか。メイドの空き枠は無かったと思いますけど」


 そうなのか。じゃあなんで旦那様は。


「それはあれですね、もし素質があれば雇用するかもしれないです」


 一応事務職をやってると伝えると、経理を担当させる可能性もあるそうだ。屋敷内での帳簿に関しては諸岡さんがやってる。それを引き継げると考えたかも、だそうだ。

 事務処理専門でひとり雇用するのはありかもと。


「直輝さんの妹さん。可愛らしそうですね」

「いや、可愛いと思ったことは無いけど」

「それは兄妹だからですよ。兄が妹に恋することは、普通無いですからね」


 まあそりゃそうか。他人が見れば愛らしいとか思うかもしれんけど。あれがか?


 花奈さんの部屋をあとにして、葉月の部屋に行くと、仏頂面の葉月が居るし。

 あ、そうだ。この手に持ってるこけし。


「葉月」

「なに?」


 機嫌悪そうだ。

 でだ、持ってるものを見せると。


「直輝! なにそれ! ねえ、それってあれ?」

「わかるか?」

「もしかして、それをあたしに?」

「使いたいのか?」


 試したいと抜かす葉月が居る。やっぱり好きモノならではだな。でもこれ、洗わないと花奈さんが。


「使う前に消毒するから」

「うん。じゃあ今夜楽しみにしてるね」


 仏頂面から一気に超絶ご機嫌モードになりやがった。

 さすがは変態。興味津々だし、いろいろ試したい年頃かもしれん。その分、俺の負担が減るな。これはいいかもしれん。できれば電動化も。あ、そうだ。青沼さんに頼んでみるか。

 でもあれか、電動化したら使って欲しいと懇願されそうだ。それはそれで拙い。

 とは言え、やっぱなあ。


 まあいい、それはあとで考えよう。


 夕食後、まずは青沼さんの部屋に。


「あのさ、これ」

「使いましたか? どうでした? いい反応したと思うんですよ」

「いや、だからね、それで電動化」

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