Epi36 本命のメイドさんとデート
妥協案を提示してみた。
「三か月、一切触れることなく、我慢できたらその時は考える。でどうだ?」
悩んでるな。三か月経過後に気持ちに変化が無ければ、俺も腹を括って相手をしてもいい、かもしれない。と逃げを打ちながらの提案だが。
やる、なんてことは言わない。繋がる相手は花奈さんだけでいい。葉月とも繋がる関係ではない。無理だから。猛烈にやりたくなる衝動に駆られもするけど。葉月は少々反則だ。可愛らしすぎる。
さあ、これでどうだ。
「わかりました。三か月後を楽しみにしています」
「あのさ、ちゃんと聞いてる?」
「聞いてます。三か月後には性交をしていただけると」
「違う。検討してもいい、だ」
そんなの知らないとか言ってる。この辺もまた葉月と同じかよ。実は姉妹じゃないのか? 幼い時に誘拐されたとか、他所に預けられていたとか。
「とにかく三か月後ですね。楽しみに待っていますから」
代わりに手出しは一切しないそうだ。誘惑もしない。ちゃんと研修に打ち込み、メイドとしての心得を身に着けておくとか。
まあ、今逃れられたなら、その先はまたその時考えよう。
でだ、花奈さんだよ。
どこに出掛けたんだ?
電話してみると、駅前のカフェでひとり寂しく、お茶を啜っているとか言ってる。俺に対しては「お愉しみの邪魔はしませんよ」とか言ってるけど、違うから。それは誤解だと伝えて待ってて欲しいと。これからすぐ向かうからって。
それと、どのカフェなのか、と思ったら、以前俺が行ったカフェだと判明。どうやら趣味も似てるようだな。気取った店より落ち着ける店だ。
急いで屋敷をあとにし向かう。
駅の反対側にあるカフェに飛び込むと、すぐに気付いたのかこっち見てる。
傍に行き「なんかごめん」と言っておく。
「直輝さん。少しはいいんですよ。違う人を知っておくのも、また勉強になりますから」
だから、あれは俺の耐性強化のための試練でしか無いわけで。と説明してもなんか納得してるのかしてないのか。
やっぱ嫉妬って根深いものだな。どうしても年齢差を意識するんだろう。男が年上なら問題は無い。でも、花奈さんの方が上だと、若い人より魅力が劣るとか。
「花奈さん。俺には花奈さんみたいな、包容力と優しさが必要だから」
俺を見てる。見つめてる。何を考えてるかはわからない。
「直輝さん。こんなに嫉妬深いのに、包容力なんて無いですよ」
「でも、やっぱ他の子とは違う。本当に必要な人だから」
なんか嬉しそうな表情をして、テーブルの上に置いた俺の手を取ってる。
撫で回してるけど、それもまたいい。
「直輝さん。こんな私だけど」
「一切気にしない。俺には花奈さんしか見えてないから」
まあ、ぶっちゃけ、花奈さんが居なかったら、葉月とやってる。我慢できるのも花奈さんが居てこそだ。俺の心の支えになってるし、防波堤の役割も大きい。
この気持ちはやっぱりあれだな。
「花奈さんの部屋に行きたい。そこでしっかり愛し合いたい」
まず顔が赤くなるのをみたことなかった。今日はしっかり顔を赤らめてる。
会計を済ませて店を出ると、戻る前に少し買い物をしたいそうだ。
「なに買うの?」
「貞操帯ですが、役立ってますか?」
「あ、それだけど」
痛くなりすぎるから無理があると伝える。極細ボンレスハムとか言ったら笑ってたけど。食い込むんだよな。
「渋谷に行きましょう」
「今から?」
「一時間以内に戻れますよ。そのあと、直輝さんの気持ちを受け取りたいので」
営業していれば入手できるとか、それって新しい貞操帯ってこと?
今回は車で行くそうだ。デートで行くなら電車を使うが、買い物だけだからと。
花奈さんのGRハチロクに乗り渋谷へ向かう。駐車場は目的地の近くにあるから、そこに車を置いて目的地へ。でも高いなあ。二十分で四百円かよ。
横断歩道を渡り、渋谷
道なりに進み突き当りを右へ曲がり、少し進んだ角地にアダルトショップがある。真昼間から堂々と営業してるんだな。
店内に入り、って全く躊躇しないんだ。お目当てのコーナーへ突き進み「ゴム製ならどうです?」とか言ってる。「金属製の物は丈夫ですけど、伸縮性が無いので挟むんですね」って。
なんか楽しそう。
結果、ゴム製の貞操帯になった。
「これを身に着けておけば、繋がるのを防げますよ」
「危機的状況になったら使わせてもらいます」
「今は大丈夫なのですか?」
「なんとか逃げ果せてる状態だけど、そろそろヤバそうだったんで」
店を出ると「ストリップとか興味ありますか?」って、一度も入ったこと無いし。
来た道を戻る際に目に入る看板には「道頓堀劇場」とかあるし。
「入ってみますか?」
「いや。普段から似たような状況にあるし」
「そう言えばそうですね」
裸を見たいだけならいつでも見られる。葉月を筆頭に倉岡とか青沼さんとか。それに花奈さんもだし。
若さ溢れる女子たちだ。しかも葉月はめちゃ可愛い。それを好き放題だからな。今さらストリップ劇場なんて行ってもと思う。
それを考えると俺の置かれた状況って、なんか凄すぎる。
素直に屋敷に帰り花奈さんの部屋に行く。
「ちょっと付けてみますか?」
「あーえっと」
「恥ずかしいですか?」
「いや、それは」
しっかり装着テスト。で、それを見て喜ぶ花奈さんが居る。
「これだとできませんね」
「外します」
笑ってたけど、さっさと外して、しっかり花奈さんを愛してみた。
事が済むと実に清々しい表情だし、やっぱりなんか癒しだなあ。葉月みたいに荒っぽくないんだよ。そこは年齢を重ねたものもあるんだろうな。それと性格の問題か。
「お嬢様のことを考えてませんか?」
「あ、いや、ちょっとだけ」
「今は私だけを見てくださいね」
「はい」
こうして最高の時間を過ごすことができた。これでまた葉月を相手に耐えることができそうだ。
最悪、今日手に入れた貞操帯を使うかもしれない。文句言うだろうなあ。目を吊り上げて怒り心頭って。だが、繋がるわけには行かないからな。
久しぶりの自室。
週に一回も使わない部屋って、なんの意味があるのやら。これなら葉月の部屋に荷物全部置いた方が楽だ。
それか花奈さんの部屋とか、いや、邪魔になるか。葉月の部屋ほど広くない。
久しぶりにベッドに体を横たえた。
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