Epi53 夏の海は人を開放的にする

 岩場で飛び込めと抜かす葉月だが、もちろん歩いて海に入っていく。

 怪我するからな。


「水着、着た方がいいぞ」

「要らない。直輝も脱げ」

「無粋ですよ。向後さんは脱がないのですか?」

「脱がない」


 海面上に見えるふたりの笑顔は眩しいが、これ、水面下では結構バタバタしてるんだよな。大股開いて水かいてるから。水中からの眺めは楽しそうだ。じゃねえ。

 それにしても、美桜ちゃんがすっかり葉月色に染まってしまった。

 早々にマスクをしてシュノーケルを咥えると、潜っていくふたりが居る。

 楽しそうだなあ。


 マスクをしてシュノーケルを咥え、ふたりに続いて潜るのだが、まあ、透明度が高いのか先に潜るふたりが見える。

 水中で見る葉月の体がねえ。水圧の抵抗を受けてぶるんぶるん言ってるんだよ。

 美桜ちゃんでさえも、やっぱあれだ、体には適度な脂肪が付いてる。ゆえにぷるんぷるんと尻や太もも辺りが。

 いかん。見て喜んでる場合じゃない。ふたりに万が一のことが無いよう、きちんと監視してないとな。


 五メートルも潜ると一旦浮上し、また潜るの繰り返しをするふたりだ。

 葉月がなんかサイン出してる。

 なんだって? 水中でも水着を脱げとか、アホすぎだろ。よほど裸で潜らせたいらしい。まあ魂胆はわかってるけどな。


 海底には海藻が多く茂り波打ち、その間を小魚が無数に泳いでる。サンゴもあるみたいだけど、大半は海藻だな。岩には海苔も大量に張り付いてるし、ついでにアワビが居た。葉月のじゃないぞ。本物のアワビだ。

 道具が無いから剥がせないな。

 あ、伊勢海老も居る。けどなあ、確か今の時期は禁漁だから、勝手に獲ると。

 葉月は知ってるのか、確認しておこう。


 水中で葉月にサインを出すと、頷いて浮上するようだ。


「葉月。伊勢海老居るけど獲っても大丈夫か?」

「たぶん」

「漁協とか文句言ってこないのか?」

「言わないでしょ。島の所有権あるし」


 島の岩場まで文句を言えるわけないとか言ってる。ただ、漁協の管轄内だと面倒だから確認したんだが。まあいいか。少しくらいなら。

 本来は確認すべきなんだが。よい子はマネしちゃ駄目だからね。


 再び潜りのんびりしている伊勢海老をふん捕まえて、葉月と美桜ちゃんに見せてみる。

 親指立てて喜んでいそうな。


 一度全員海から上がり、暫し休憩することに。

 これ、すっかり当たり前な感じになってるけど、ふたりとも全裸。つい視線が固定されてくるけど、できるだけ見ないようにはしてる。

 そう言えばなにも持参してない。


「飲み物、持参してなかったな」

「喉乾いてるんだけど」

「持って来るから待ってろ」


 一度戻って花奈さんから受け取るが。


「直輝さん。私も行きましょうか? 昼食の準備もできてますし、部屋の掃除も終えたので」

「じゃあ一緒に潜る? ふたりとも全裸だけど」

「直輝さん。そこはきちんと水着を着てもらわないと」

「言っても駄目だった。俺の言うことなんて聞きゃしない」


 じゃあ、花奈さんからも言う、ってことで一緒にふたりの待つ岩場へ移動する。

 飲み物やタオルに昼食も持参していく。体が冷えると風邪ひくし。少しすれば腹減ったってなるだろうし。

 で、岩場に行くと花奈さんが水着を着るよう促すが、やっぱ聞き入れるわけもなく。


「中条も全裸」

「しませんよ」

「解放感を味わうのも旅の醍醐味」

「お嬢様。節度は必要です」


 だがしかし、花奈さん?


「なんですか?」

「あの、股間が爆発しそう」

「出しますか?」

「直輝。モリモリしてるよ」


 頼みの綱の花奈さんだったが、結局、葉月に毒されたのか、それとも対抗心なのか。一糸まとわぬ姿になってるし。

 俺、ここで憤死するかも。


 その後、日光浴を楽しんだり潜ってみたり、昼食を取って軽く泳いでみたりと楽しんだ。

 ついでに三人に蹂躙されたけど。またしても我慢ならずだった。


「夏はつい開放的になってしまいます」

「中条も少し砕けていい感じだった」

「砕けたわけではありません。直輝さんを楽しませただけで」

「物は言いようだよね」


 ちなみに、葉月が美桜ちゃんの股間を見てた。何してるのかと思ったら「あるか確認してた」だそうだ。朝のことがあって少し気になったらしい。


「してないし、しっかりあるし」

「俺に見えるようにやる必要はなかった」

「でも、見てたじゃん」

「あの、向後さん。いつでも……どうぞ」


 どうぞと言われて、はい頂きます、なんて言えるわけがない。顔真っ赤にして言うことじゃないし。葉月は平然と口にするし、堂々と見せてくるけどな。変態だから。

 その後、遊び疲れて建物に戻る。


「べとべとするからお風呂入ろう」


 葉月のひと言でシャワーを浴びて、四人でジャグジーに浸かる。

 もう慣れた。ここに来てずっと裸ばっかり見てるし。でも股間は常に元気だ。きりがねえ。

 そうなると放置するはずも無く、搾り取ろうとする変態娘と、すっかり毒された美桜ちゃんが居て。花奈さんが制止するもやめるわけもなく。


「流されてばかりです」

「仕方ないよ。諸岡さんみたいにはやっぱいかない」

「諸岡も楽しんだと思うけどな」

「私はとても充実していますよ」


 少し凹み気味の花奈さんと、欲望のままに突っ走る葉月。そして最初の頃と大きく変化した美桜ちゃんが居る。

 葉月曰く、もうひと押しすれば自分を曝け出すはずだそうだ。今はまだ仮面が剥がれ落ちてないとか。これを帰るまでに剥がして、素の美桜ちゃんにするんだとか。

 そう言えば、諸岡さんも少し饒舌になってたな。いつもは怖いくらいの表情も穏やかだったし。やっぱ楽しんだのかもしれない。


 夕飯を済ませると、さすがに疲れたのかソファでだらんとする葉月だ。

 その隣に同じく、だらんとする美桜ちゃんが居る。


「ふたりとも疲れたのでしたら、早めに就寝なさると良いですよ」


 花奈さんに言われ揃って寝室へ向かったようだ。


「直輝さんと一緒に居ることではしゃぎ過ぎたのでしょう」

「まあ、それはさすがに見ててわかった」

「直輝さんはお疲れではないのですか?」

「俺? 多少は疲れたけど、泳ぐのは得意だし」


 遠泳だって二キロ程度は楽勝だ。鍛えといて良かったと思う。


「では、今夜も」


 あかん。花奈さんもきっと開放的になってる。それとやっぱ絶倫。俺もか?


 部屋の片付けやジャグジーの清掃をふたりで分担し、さっさと終わらせるとベッドになだれ込み、ふたりだけの濃厚な時間を過ごした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る