Epi54 クルージングを楽しむ

 昨晩は花奈さんと一夜を共にした。邪魔も入らず朝まで一緒。

 目覚めると花奈さんの姿態が視界に入った。


「あれ? もう起きたの?」

「朝食の支度がありますから」


 裸から衣装を纏う姿。悪くない。

 見ていたら「直輝さんも起きてください」だそうだ。


 起きて洗面所に向かい顔を洗ったり歯を磨いたり。鏡に映る自分を見てやっぱ不思議だと改めて思う。今のこの状況があまりに良過ぎる。顔面偏差値なんて高くない。どこにでも居る冴えない男。取り立てて得意なことも無い。

 なのに曽我部の家に来てから、異常なまでにモテている。


「実に不思議だ」


 下半身がなんか、気持ちいいぞ。


「おい葉月。なにしてる」

「昨日愉しめなかったから」

「朝から盛るな。それと美桜ちゃんも」

「あの、ご迷惑でしたか?」


 ふたり掛かりで俺の股間を蹂躙してやがる。いつの間にか下半身を剥き出しにされてるし。しゃがんでいじってやがる。すでに昨日出し尽くしてるからな。今日は空気しか出ないぞ。

 それにしても、美桜ちゃんが実に残念なことになった。


「美桜ちゃんは両親に咎められたりしないのか?」

「口外しなければ問題ありません」

「いやいや、そうじゃなくて。こんなことしてて、知られたら怒られるでしょ」

「本人が後悔しなきゃいいんだってば」


 成人してればそれでもいいだろう。だが、まだ未成年なら親の言うことには従う方がいい。

 後悔するか否かなんて、この時点じゃ判断もできないだろうに。

 ましてや初恋だなんて。なんの経験も無い状態。結果の予測なんてできるはずも無い。


「ってことで」

「あ、直輝。仕舞うな」

「アホか。朝から盛ってられるかっての」

「ぶー」


 朝食を済ませると少しクルージングを楽しもうとなった。

 昼食の準備をする花奈さんが居て、その隣に立ってるのはなんと美桜ちゃんだ。


「料理の経験はございますか?」

「クッキングスクールに通ってます」


 葉月とは違って料理ができるんだ。少しポイント高いな。今どき女性がとか、無いにしてもできないよりできた方がいい。俺も少し習っておいた方がいいかも。

 そうすれば共働きでも家事の分担できるし。先々のためにも考えておこう。


「直輝は料理できる人の方がいいの?」

「まあできないよりは」

「じゃあ、あたしもやろうかな」

「無理だろ」


 無理じゃないとか言ってる。性格があるんだよ。向き不向きの。がさつな葉月じゃレトルト食品を温めるので精いっぱいだろ。包丁なんて危なっかしくて扱わせられない。指ごと切り落とすのが関の山だ。


「自分ができることを、しっかりやってりゃいいと思うぞ」

「料理できる」

「無理だっつーの。葉月の性格じゃ鍋に穴開く。キャベツ刻んだら自分の指刻む」

「やってみなきゃわかんないじゃん」


 頭で理想像を描いても無理なもんは無理だな。これはあれだ、花奈さんは料理もできる。美桜ちゃんも料理ができる。自分だけできない。焦ってるんだろうな。

 まあ、やる、なんて言ってもすぐに現実を直視することになる。

 その心意気はいいけど、違う分野で頑張ればいいだけだ。


 昼食はサンドイッチ。それを籠に入れてドリンクも持ち込み、クルージングを楽しむ。


 花奈さんが操船して海上を進む。一応釣り竿も持参してるから、釣りも楽しめる。

 俺を含む三人はバウデッキで、風を受けながら寛いでる。花奈さんと交代で操船できれば良かったんだが。やっぱ船の免許取っておこう。そういう話になってるし。

 適当な場所に来ると停船させアンカーを降ろし、暫し海上で釣りを楽しんだり、日光浴をしたり。


「全身日焼けするとあとが大変だぞ」

「大丈夫。直輝が全身隈なくサンオイル塗ってくれるでしょ」


 俺がやんのかよ。しかも、美桜ちゃんだけじゃなく、花奈さんまで丸裸。揃って一糸纏わぬ姿って。

 已む無く順に塗りたくるが、これは堪らん。股間が暴れてどうしようもない。


「直輝。ここも」


 ここも、じゃねえ。指で指し示す場所は股間じゃねえか。薄いとは言え毛があるから大丈夫なんじゃ、と思ったが、しっかり塗らされて喜ぶ変態が居る。

 美桜ちゃんにもせがまれ、花奈さんに関しては率先して。三人の感触はどれも最高だった。

 でだ、結局俺も剥かれて三人にオイル塗れにされた。


「ここは念入りに」

「やめろ」

「あとが大変だよ」

「ですね。日焼けしたら治るまでできないですよ」


 三人の指の感触があれすぎて漏れるっての。そもそもそこは日焼けさせないんだっての。

 昼食を済ませると、少しだけ泳ごうとなりスイミングラダーから、海に入って行く。

 花奈さんは船上で万が一に備えるそうだ。全員入ってしまうと、もしもの時に対処しきれなくなるとか。お嬢ふたりを預かっている以上、一緒に遊び倒せないらしい。

 俺が残っても、と言ったら「お嬢様たちは直輝さんと一緒に楽しみたいのですよ」だそうで。


 しっかり楽しんだら乗船して島に戻る。

 疲れたのか、バウデッキのソファで寝そべるふたりが居る。俺はと言えばフライデッキで花奈さんの隣に。操船している姿を見てるのもいい。


「直輝さんは疲れないのですか?」

「体力はそれなりにあるから」

「そう言えばそうですね。夜も激しいですし」

「いや、まあそれは」


 高校時代まで鍛えていて良かった、と言えばいいのだろうか。大学時代で鈍ったけど、それでもじっとしてることは少なかった。バイトで体動かしてたし。肉体労働もかなりやったからなあ。


 島に戻り花奈さんは夕飯の支度を。

 お嬢ふたりはソファでだれてる。さすがに遊び倒して疲れ切ったようだ。相手する必要も無さそうだから、室内や風呂にトイレ掃除をしておく。

 花奈さんはやらなくても、とか言ってたけど暇だし。


 その夜はさしもの花奈さんも疲れたのか、夜這いも無く全員大人しく就寝。


 でだよ、朝目覚めたら葉月が隣に居るし。その反対側には美桜ちゃんまで。

 こいつら夜中に忍び込みやがって。まさか繋がって無いよな?

 確かめたいけど、それをやると変態過ぎて確かめられないし。シーツに染みは無いから大丈夫と思いたい。


 あとで花奈さんに言ったら「確認すればいいじゃないですか」って。いやいや、俺が覗き込んでたら変態。


「誰も気にしませんよ。気になるのであればチェックしておくといいです」


 誓約書の件もあるのだから、遠慮せず足を開いて確認すればいいと。

 でだ、葉月に言ってみたら、しっかり大開脚。 

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