Epi5 夜と朝のメイドはエロい

 越してきての初日はなんとか終わった。


「明日から六時起床です。寝坊しないようにしてください」

「はい」

「もし、今日から必要であれば、入浴後に私の部屋へ来てください」

「あ、今日は大丈夫だと思います」


 なんか少し残念そうな顔した気がする。この人も変態だったりして。別に好きでもない男の相手するんだから、やっぱ少々変態入ってそうだよな。

 その後、使用人の食堂へと案内され、夕食をとるのだが、その際に使用人を紹介され、料理人も紹介された。

 女性のメイドが中条さん含め六人。男性は俺と旦那付きの人は面接官ではなく、執事そのものだった。

 中条さんは中堅どころのようで、その上にメイド長が居た。年齢はまあ、俺より三十歳くらいは上とだけ。少々怖い感じのおばはんだ。

 一番若いのは二十歳だとか。メイドさんが俺の相手、なわけないか。そうなると。


 疑問は他所に自己紹介を済ませ、明日から屋敷の一員として働く。


 夕食後自室として宛がわれた部屋に入る。

 広さは執事にしては充分すぎる八畳くらい。風呂やトイレは無い。ウォークインクローゼットはある。

 ベッドにナイトテーブルとタンス、テレビもあるのか。丸テーブルと机と椅子二脚。それとノートパソコンもある。

 テーブルの上を見ると敷地配置図と、母屋や別棟の間取り図に鍵が複数。

 寮の方は各部屋に誰が居るか、名前も入ってるな。俺の名前もすでにあった。


「そしてこれか」


 手にしたのは「執事の心得」と書かれた冊子。明日までに読んでおけと言われてる。今日説明したこと以外にも、いろいろ知るべきことが書いてあるらしい。

 一通り目を通してから時計を見ると、すでに午後九時半。風呂入って寝るか。明日は早いし、寝坊したらまずいだろうから。

 寮の間取り図を見て浴室を探す。


「一階にひとつ。二階にひとつ。二階は女性用だろう」


 ということで一階の浴室へ向かう。タオルなどは部屋にすべて用意されてる。着替えの下着やパジャマも。必要十分な衣類がすべてあるんだよな。まさに衣食住完備。

 ちなみに服は自分で洗濯する。寮の掃除も使用人がやる。屋敷の掃除もだけどな。


 暗い風呂場に入って照明のスイッチを探し、灯すとまあ、ここも広いよなあ。脱衣所には棚があり、籠も置いてあって、そこに着替えや脱いだものを入れる。

 曇りガラスの扉を開けると浴室だ。蓋がしてあって外すともわっと湯気が上がる。

 そう言えば風呂掃除も交代制だったっけか。


 一日の疲れを癒すべく体を洗い湯船に浸かる。湯舟だけでも大人三人が余裕で入れそうだ。


「はあああ」


 寛ぎの瞬間。いつもは銭湯だった。ひとりで浴槽を占拠できる幸せ。

 寛いでたら脱衣所のガラス戸が開いた。視線をやると、いや、マジで?


「向後さん。背中を」

「あの、なんで?」

「訓練ですよ。初日は私がお相手します」


 じゃなくて、聞いてない。全裸。見事な凹凸。こっちに来るし。これどうしたらいいのさ。


「興奮しましたか?」

「いやあの」

「いきなり耐えろ、と言われても無理でしょう。今日は特別ですから」


 そう言って体を流すと湯舟に入ってくるし。そして俺の傍に来て手が、やばいって!


「湯船に出さないでくださいね。出したら向後さんが自分で掃除するんですよ」


 フィクションではありがちな出来事。初っ端から洗礼を受けた感じだ。


「明日からも入れ代わり立ち代わりです。精神修養も兼ねてますので、抗ってみてくださいね」


 そう言って風呂を後にする中条さんだった。後姿も申し分ない。尻の揺れが見事だ。

 これをラッキーと思えばいいのか、災難と思えばいいのか。普通はラッキーとか思っちゃうんだろう。欲望のままに突っ走れるわけじゃないが。

 それでもラッキーなんだよな。

 すっきりしたところで風呂から上がり、この日は就寝する。


 翌朝、目覚ましのアラームがけたたましく鳴ってる。

 無理やり起き上がりアラームを止めて、洗面所へと向かうが、メイドさんだろうか、ひとり居て顔洗ってる。


「少々お待ちください」


 二階の住人が一階の洗面所使うの?

 パジャマ姿の女性は昨日紹介されたひとり。確か前山とか言ってたっけ。年齢は二十三歳とか。大学卒業してすぐにここへ来たとか言ってたよな。つまり俺より先輩。

 それにしても、パジャマ姿なんだけど上だけ。下はどうした? しかも丸出し。


「あの、その下」


 顔を俺の方に向ける前山さんだけど、問われてる意味を理解しないのか「なんですか?」って顔してるし。

 パンツも穿かず丸出しなのはなんで? と疑問を抱いたんだが。


「あの、下着」

「あー。穿いて寝てると邪魔なんで」


 だからって尻丸出し。なんだか分け入りたい情動が。


「後ろからどうぞ」

「は?」

「したいんですよね。遠慮は要りませんよ」


 いやいや、そうじゃなくて。朝から盛る気はないし、ただ疑問を抱いただけだし。


「男の人もぶらぶらさせてた方が、いつも元気になりますよ。下着で締め付けると温度調節がうまく行かないので、就寝時は身に付けない方がいいです」


 そうじゃないんだってば。とは言え、目の前の果実。どうしたってねえ。

 だが、今はそんなことをしている暇はない。さっさと身支度を整えて、研修に備えないとならないんだから。

 そうこうしてるうちに、洗面所が空いた。前山さんの洗顔が済んで「したくなったらいつでもどうぞ。二〇四号室ですから」と言って、階段を上がって行った。

 なんだこのメイド。


 身支度を整え集合場所となる母屋の使用人控室へ向かう。

 ドアを開けるとすでに全員集合しているようだ。


「では、全員揃いましたのでミーティングを始めます」


 号令をかけるのはメイド長だろう、年配のおばはんだ。

 毎朝、役割分担と作業内容を伝えているらしい。


「向後さんは午前中は座学。午後は体術と寮のトイレ掃除を」


 教習所は現在調整中。決まり次第通うことになっているそうだ。

 ミーティングが終わると、俺は中条さんと一緒に別室へ。リビングや応接室とは反対側の廊下を突き進み、三つ目のドアを開ける。


「向後さん。昼まで座学ですので、しっかり学んでください」


 十畳くらいの部屋だろうか、シンプルなつくりで虚飾を排してある。長机がひとつと椅子がみっつ。その上にはタブレットがひとつ。

 長机の向かいには大型のディスプレイがある。教卓のようなものもあり、そこにはタブレットだろう、置いてあるみたいだ。

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