Epi9 メイドが次々誘惑してくる

 花奈さんの行動により危機は去った。あのままだと、きっと部屋に押し入られ事に及んだであろう。そして哀れ俺は去勢され男を辞めるのだ。

 なんとか、あの強引さに抗う術を身に付けないと、マジで三か月後のお嬢付きになった途端、股間とさようならすることになるだろう。大切な相棒なんだよ。こんなんでも。と思い股間をじっと見る。そこそこイケてね?


 朝になり一階の洗面所へ。

 うん。昨日より鮮烈な姿が目に入る。


「あの」

「後ろから遠慮なくどうぞ」


 洗顔中に顔をこっちに向けて、でも前屈みだからねえ。しかも今日は上に着てるパジャマを胸元まで捲り上げてる。おかげでプリッとしたケツが完全に丸出し。なかなかに良い形状で、感触もきっといいんだろう。

 だが、これを眺めているわけにはいかない。放置だ放置。

 二階の洗面所へ向かうと、別のメイドが居る。


 勘弁して欲しい。


「あ、えっと確か向後さん」


 俺に気付いたんだろうけど、この人、恥じらいはないのか? 下に居る前山さんもそうだけど、ここのメイドに恥じらいは無い、そう思っていいんだろうか。

 こっちは上半身裸。ぷるぷる。ぷるぷる。実によく揺れる禁断の果実。下はパンツ一丁。


「少し待ってくださいね」

「いやあの」


 名前、なんだっけ? 確か、田部たなべさんだっけか。

 年齢は花奈さんより上だったっけ、知らないけど。ただ、屈んでいる状態のその良く揺れる物体。実に……。

 じゃない。ここも駄目なのか。

 仕方ない。あとはトイレだ。


 階下に戻りトイレに入ると。あのさあ、なんでそこに居るの?


「おはようございます」


 おはようございます、じゃない! あなたは男なんですか? なんで立ちション。

 弾ける水滴。下半身を男性用便器に突き出し、傍から見ると実に滑稽な姿勢。しかも全裸。

 確か苗字は青沼さんだよな。メイドの中で一番若い二十歳だった気がする。


「あの」

「足とかにかかるんですよね。ですから裸なんです」


 いや、それ以前の問題だろ。ちゃんと座ってすれば、そうはならない。男とは構造が違うのだから。

 濡れたらティッシュでふき取るだけか?

 なんて思ってたら「体を流して来ます」とか言って、俺の手を取るんだよ。


「なんで?」

「ご一緒に」

「無い」

「素っ気ないですね」


 実に惜しいと思いつつ、手を振り払いトイレから追い出すようにした。


「見せては?」

「無いから」

「少しは」

「無いんだってば」


 トイレのドアの前で暫しの攻防。外に追い出し、やっと本来の目的である歯磨きと洗顔を済ませる。余計な時間を浪費することになった。

 ここのメイド。みんな変態しか居ない。他にもあとひとり居る。まだ遭遇してないけど。せめてまともであって欲しい。今となっては淡い希望でしかないが。

 これはあれか、お嬢が変態だから変態が集まったとか。目の寄る所とか類友とか同類相求むとか。


 部屋に戻るとそこには花奈さんが居た。


「おはようございます。今日から午前中の予定に変更があります」


 どうやら教習所の調整が済んだらしい。今日から優先的に通い、さっさと免許を取得させるそうだ。金に飽かしたとかじゃないだろうな。他の教習生を飛び越して優先ってことは、向こうも商売だから金を積まれりゃ、意向に沿うんだろうけど。


「日曜日を除く毎日、教習所に通って頂きます。一発で合格してくださいね」


 それで、ドライブに連れて行けと言ってる。休日は基本シフト制。休みを合わせるから一緒にお出掛けとか。そして外で大いに盛り上がろうとか言ってるし。


「二日間し放題ですよ。誰の目も気にせず」


 なんか、変態の頭目はお嬢だとして、次席は花奈さんかもしれない。


 早々に教習所へ行くのだが、花奈さんが連れて行ってくれるようだ。

 服装は普段着でいいらしい。スーツ姿で教習受けても変だし。


「こちらへ」


 車を用意してるみたいで、最新型のGRハチロクだし、しかもマニュアル車。

 颯爽と運転席に乗り込む花奈さん。そして、隣に乗るよう指示してる。乗り込むと、まあ様になる花奈さんだな。服はメイド服じゃなく普通の服。スカート丈が短いせいで、太ももが露わになってるけど。上に着てるシャツは盛り上がりが見事だし。まあ、服の下はすでに何度も拝んでるし、楽しんでるし。

 小気味良いエンジン音を響かせ、華麗なクラッチワークとアクセルワークで、敷地をスムーズに出るとエンジンをひと吹かし。一気に加速し心地良いGが体にかかる。


「運転上手いんだ」

「慣れですよ」


 教習所へ向かう間、今朝のメイドのことを話してみた。


「言いましたよ。精神修養を兼ねてますと」


 つまりだ、朝から誘惑しそれに手を出さずに居れば、合格なのだとか。手を出していいのは花奈さんだけ。

 けど、本当にそれで良かったのか?


「私だけ特別に教育係兼、恋人を仰せつかってます」

「はい?」

「私の気持ちを汲み取って頂けてますから」


 ということは、花奈さんは俺に惚れてる?


「ってこと?」

「そうですよ。履歴書を拝見させて頂き、写真を見てどっと溢れましたから」


 いや、溢れたって、どこが、なんて聞くまでもないんだろうけど。

 教習所に着くと手続きを済ませる。


「では、終わりましたら迎えに上がります」


 そう言って教習所を後にする花奈さんだった。

 俺はと言えば、早速教習開始となる。いいのか、こんなんで。


 今日の教習が終了すると、時間通りに花奈さんが迎えに来てるし。


「では、昼食を済ませてしまいましょう」

「屋敷に戻るの?」

「いいえ。せっかくなので外食しましょう。どこかリクエストはありますか?」


 特に無いけど。屋敷のまかないも食材がいいのか、何食っても美味いんだよな。

 それとシェフの腕もいいと思う。半端な人を雇うわけないだろうし。


「ファミレスでいいんだけど」

「フレンチでもイタリアンでも高級寿司でも懐石でもいいんですよ」

「いや、胃がもたれそうだから」


 ということで昼はファミレスのランチになった。


「普段は外食もしないんです」

「屋敷で飯出るし」

「こういう機会にデート気分を味わうのもいいですね」


 この人、本気で俺に惚れてるのか? どこが良くてと思わなくもない。年下で頼りないだろうし、就職全敗でやっと拾ってもらった程度だし。

 まさか、俺の愚息に惚れ込んだとか。さすがにそれは無いか。

 目の前に座る花奈さんの見た目はいい。胸もでかいし尻も揺れ具合がね。魅力的な人なのは間違いない。

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