Epi119 木葉採月に至り決断する

 卒業式後は結局、何もせずに済んだ。

 花奈さんから葉月に直接具申した結果、葉月もならば大学入学後でいいと。


 あと数日で大学の入学式になる。

 今は葉月の部屋のベッドで戯れてる最中だ。これ、今さら性行為云々意味ねえよな、と思いつつも、最後の一線は別とか俺が線引きしてるだけか。


「まさか中条が二号でいいって言うと思わなかった」

「俺もだ」

「直輝と結婚する気満々だったんでしょ?」

「そうだと思いたい」


 現在、予行演習とか抜かして素股で励んでる。

 心地良すぎて漏れそうだ。


「で、妾なんて許すのか?」

「当たり前でしょ。中条の気持ちはわかるし、パパもママも仕方ないって」

「それさあ、外部に知れたら醜聞だろ」

「言わなきゃ誰もわからないでしょ」


 家庭内の恥部を口外する奴は、この屋敷内には居ないと。まあ確かにメイド連中は口にしないだろう。契約書に口外したら裁判沙汰と書いてるし。ただのメイドが曽我部と争って勝てるわけもない。蓮見さんにしても、そんなことを口にするわけもない。


「出入りの業者は?」

「同じ。会社ごとぶっ潰す、って脅してあるから」


 人生棒に振りたいなら口外すればいいと。代わりに家も何もかも失う覚悟を持てと。

 とは言え、出入り業者は屋敷内のことをほとんど知らない。庭師やシェフも居るけど、一切立ち入らないことが条件だとか。

 まあ、逆らってどうにかなんて、考える奴も居ないだろうし。


「直輝!」

「なんだよ」

「もう漏れてる」

「仕方ないだろ」


 出ちまった。


「早すぎる」

「早漏じゃねえぞ。葉月が良過ぎるだけだ」

「そう? じゃあ許す」


 アホだ。


「まだできるかな?」

「限界だ」

「ならまだできるね。予行演習はまだ続けるんだから」


 限度がねえぞ、この変態は。

 限界だって言ってんのに、どう聞こえてるんだ?


「あ、そうだ」

「なんだよ」

「中条とは週に二回までだからね」

「葉月とは一回でいいのか? 俺にも休息は必要だし」


 週に五回が標準だとか言ってやがる。休みなしじゃねえか。死ぬぞ。


「二回で充分だろ」

「じゃあ四回」

「二回」

「四回は譲らない」


 底抜けに変態だ。干からびたらどうしてくれる。

 その後、強硬に主張したら「じゃあ三回」とか、実に不服そうに言ってやがった。きりがねえんだよ。葉月相手にしてると。マジで死んだらどうする、と言ってみたけど、それで死ぬのはジジイだけだとか抜かすし。


「若いんだよ。あ、でも極楽の中で死ねるんだ」

「あのなあ」

「冗談だってば。直輝が死んだらあたしが愉しめない」

「そっちかよ」


 それも冗談とか言ってる。


「直輝と同じタイミングでお墓に入るんだよ。ずっと一緒」

「そんな先のことまで考えてるのか」

「そのくらい直輝が好きなの。愛してるんだから」


 ぎゅっと抱き着いてきて、胸元で頭をぐりぐり。足を絡めて股間をすりすり。

 この爛れた関係性は今後、さらに悪化するのか。いいのか、こんなんで?


「あ、そうだ」

「今度はなんだ?」

「うふふちゃんとかおりん」

「は?」


 ふたりも抱けと。期待して待ってるとか言ってる。


「ねえぞ」

「もちろんあたしが先。そのあと一回だけ貸すことにしてる」

「貸し借りするもんじゃねえ」

「そんなこと言ったら、うふふちゃん、泣いちゃうよ」


 いや、だからって、何人も相手にしないだろ。それやったらただのクソ野郎。

 その辺の感覚がどうにもぶっ壊れてやがる。


「一回だけの条件。だからいい。代わりにあたしをうんと愛して欲しい」

「本音は嫌なんだろ。妾だって本音は嫌だろうし」

「中条はもう仕方ない。直輝の気持ちが強過ぎるから」


 俺の花奈さんを見る目が、自分を見る時よりだらしなくなってる、とか。そこまで露骨に見てるとは思って無いんだが。


「鼻の下も思いっきり伸びてる」

「そんなことはないだろ」

「あたしを見る時の目付きと違いすぎる」

「そうか? 葉月も魅力溢れてるぞ」


 お、少し嬉しそうだな。

 まあたまには褒めておかないとな。可愛いのは事実だし、魅力溢れるのも事実だ。そのせいで悩みが深くなったんだし。

 で、キスしてくるし。


「うふふちゃん、かおりん、どっちも一回」

「無いだろ」

「まだ言ってる。あたしがいいって言ってる」


 ふたりとも本気で待ってるそうだ。ここまで我慢して、抱かれるのを心待ちにしてたとか。


「うふふちゃん、時々自分でしてるんだって。あたしが教えたからだけど」

「真正お嬢様が台無しだな」

「だから、お嬢様なんてひと皮剥けば一緒だっての」


 むしろ普通の女性より遥かにエロに興味あるとか。葉月だけ見ればそうだよな。こいつにはエロしかない。葉月からエロを取ったら何も残らん。


「ってことか」

「直輝。結婚したら週に七日」

「無茶だっての。花奈さんとはどうする」

「中条としても、あたしともする」


 性欲魔人だ。まさにエロの権化。


「あ、あと今月中に美沙樹さん来るんだよね」

「たぶん下旬じゃないのか」

「だったら、美沙樹さんもだね」

「なにを?」


 繋がれと。きっと期待してるとか言ってる。

 それこそねえんだよ。俺を変態仲間に引き摺り込むなっての。近親相姦なんて変態の極みだろ。まともな精神状態でできることじゃない。完全にぶっ壊れてる。

 ゆえにだ。


「それはない」

「期待してるのに?」

「忘れてるだろ」

「忘れるわけないじゃん。溢れてたんだから」


 絶対嫌だ。


「あ、萎んだ」

「当り前だ」

「妹は駄目なんだ」

「それが普通だ」


 普通なんてつまんない、じゃねえ。どこまでも変態な奴め。


 そして四月。

 入学式。

 旦那様と奥様がそれぞれ付き添い。葉月の格好はまあ、あれだ、普通だ。特に着飾ることはしなかった。

 車は俺が運転する。今回はロールスロイス・ファントムを用意することに。ドアを開け後席に旦那様と奥様に乗ってもらい、ナビシートには葉月が乗る。


「直輝はちゃんと迎えに来てね」

「まあ、そうしないと電車で帰る羽目になるからな」


 三人乗せて、これで事故でも起こしたら洒落にならんな。旦那様と奥様に葉月も一度に失う。

 いつも以上に慎重に運転する。

 そしていつもの場所に停車させ三人を降ろす。


「終わったら連絡入れる?」

「それだと遅くなるから、式典が時間通りならそれに合わせて待ってる」

「じゃあ、お願いね」


 こうして送り出し、一旦屋敷に戻ることに。

 屋敷に戻ると花奈さんが居る。


「お嬢様も大学生なのですね」

「一年は早いなあ」

「直輝さん。今夜?」

「逃げるさ」

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