Epi11 変態の総本山がやってくる

 訓練で汗だくになり、今日はお仕舞ということで風呂に。

 付いて来るのは花奈さんだよな。一緒に入るってことか。


「あの」

「ご一緒しますよ」


 まあ、もうね、したいからいいんだけど。散々暴れて花奈さんを欲してるし。

 でだ、風呂場に行くと誰か入ってる。


「先客が居ますね」

「じゃあ、後にした方が」

「入っちゃいましょう」

「え、いいの?」


 籠に脱ぎ捨てられた服はメイド服じゃなく、普段着のようだ。一番上にブラがご丁寧に被せてあって、そこそこのサイズ感がある。

 それを見た花奈さんは誰だかすぐに分かったようだ。


「槇さんですね。今日は休日なので、こんな時間に入ってるのでしょう」

「話したこと無い」

「ミーティングでは見てますよね」

「あんまり記憶に無いけど」


 年齢三十歳とメイド長の次に古株。


「私の方が立場は上なんです」

「優秀だから?」

「自分で言うのもなんですけど、その辺は認められたとしか」


 まあ、優秀だよな。優秀だから教育係もできるんだろうし。

 でだ、さっさと俺の横で服を脱いで、きちんと畳んで整頓しながらも、しっかり裸を披露してくれてる。

 くびれもいい感じだ。引き締まってるんだよな。


「見てないで入りましょう」

「いいの? だって入ってる」

「かまいません」


 堂々と浴室のドアを開けると、こっちを見る女性がひとり。


「中条さんと、まあ、向後さん」


 恥ずかしいとかないのか?

 浴槽に浸かってるから、現時点で体型は不明だけど。軽く紅潮した顔は色香が漂う感じだ。これは若い子には無いものかも。

 で、そのまま浴槽から立ち上がって、しっかり披露してくれてるのか?


「ちゃんとしたあいさつはまだでしたね。こんな格好で失礼ですけど、槇、と言います。夜のお伴もいたしますから、中条さんに飽きたら遠慮なくどうぞ」


 いや、その。

 なんて言うか、アラサーならではの色香が。少しだけ緩い感じの腰回り。意外にも大きな双丘は花奈さんより少し位置が下がる。何か全身柔らかそうな。

 これはこれで。じゃないって。俺には花奈さんが居るんだから。


「直輝さん。たまにはつまみ食いもいいですけど、必ず戻って来てくださいね」

「あ、え? いや、その、大丈夫だから」

「まあ、うぶそうで可愛らしい。でも下はとっても元気」

「その言葉がすでに中年ですよ」


 花奈さんが窘めてるのか? 舌なめずりしそうな槇さんだし。そう言えば丸出しだったと今気付いた。

 先客が居たことで花奈さんとの情事は無かった。

 あとで部屋に戻ったら大いに盛り上がろうと言ってたけど。

 結構な好きモノっぷり。俺もだけど。


 部屋に戻り少しすると花奈さんが来て、なまめかしい態度で接してくる。

 まあ、そうなるとあれだよな。我慢できないし、しっかり頂きました。


 花奈さんが部屋をあとにし、少ししたらドアがノックされる。こんな時間に誰だよ。まさか、槇さんとかじゃないよな。

 ドアを開けると一気に脱力感が俺を襲う。


「向後。相手しなさい」

「しません」

「一発決めれば大人しく引き下がる」

「しませんよ」


 一発も一握りも無い。一切ない。あってはならない。鉄の掟だ。


「お嬢さま。こんな遅い時間まで起きてると、肌が荒れますよ」

「セックスすればきれいになる」

「なりません。気のせい、気の迷い、戯言とも言います」

「女性ホルモンの分泌が良くなる。イコールきれいになる」


 このお嬢、母屋から抜け出してよく来やがる。

 どうすれば追い返せるのか。ああ言えばこう言う。頭は切れるみたいだし、行動力もあるんだろう。俺みたいな半端なアホだと、手玉に取られるレベルだ。

 どうすれば。


「今日、中条相手に出したの?」

「答える義務はないと思います。プライベートに関しては」

「出しちゃったんだ」

「いや、だからね」


 にやにやといやらしい笑顔。高校生がそんな顔するもんじゃない。とんだエロ娘だな。


「出涸らしってことは無いよね」

「お嬢さま相手には一滴も存在しません」

「一滴じゃなくても、雀の涙程度でもいい」

「それすらありません」


 じゃないっての。こんな会話じゃお嬢に乗せられてるだけじゃん。

 口達者だし、マジで頭の回転早いみたいだし。俺レベルじゃ対処不能だっての。つくづく花奈さんは優秀なんだな。こいつを制御できるんだから。


「JKはいいよぉ」

「間に合ってます」

「ピッチピチだよ。ほら、水も弾く若い肌。魅力あるでしょ」

「必要ありません。間に合ってます」


 でだ、足元を見ると微妙に駆け出す感じが見受けられた。すかさず今日の訓練を思い出す。


「こうごー! 抱けー!」


 襲い掛かる猛獣を往なす。すかさず体を斜めにして、突進するケダモノをかわし、横に薙ぎ払うと。


「向後の癖に生意気だ!」

「お嬢さま。夜も遅いです。訓練ならば明日にしましょう」

「ぶー」


 こんな感じの攻防を繰り返していると、音もなく忍び寄りお嬢の後頭部に、手刀が炸裂したようだ。


「あたー!」

「お嬢様。こんな夜分に何をしているのです?」

「夜這い」

「大奥様に申し付けておきます」


 それはやめろと喚くお嬢だ。なんだ、婆さんには弱いのか。

 結局、花奈さんに助けられた。まあ、こんな所で騒いでりゃ、誰かが気付くし。お嬢を軽く往なせるのはやっぱ花奈さんだ。

 それを見ても優秀なんだと理解できる。俺がそこに至るのに三か月じゃ無理な気はする。

 またしても首根っこ掴まれてるし。


「向後。三か月後には首を洗って待ってろよ」

「お嬢様、違います。手出し無用ですから」

「いいじゃん。チ〇コ吸いたいし」

「お嬢様はもっと清廉であるべきです」


 なんて言うか、年齢にそぐわない幼さと、年齢を超えた賢さが同居した、不安定な存在に見えてきた。好奇心も旺盛なんだろう。好奇心旺盛ってことはモノを知ってるわけで。勉強も進んでやりそうだ。

 ただ、発する言葉が幼いし行動も幼い。なんでこんな幼児性が残ってるのか。


 ずるずる引き摺られるお嬢には手を振っておく。

 花奈さんには頭を下げて。


「こうごー。三か月後はやり倒すから」

「お嬢様は受験勉強です。やり倒す時間はありません」

「受験なんて楽勝。寝てても受かる」

「優秀で何よりですが、油断していると落ちますから」


 どう育つとああなるのか。

 まあいずれお嬢付きになれば、わかる部分もあるんだろう。


 これでやっと寝られる。花奈さんには明日お礼を言っておこう。

 それにしてもお嬢も、もう少し恥じらいを持って欲しい。

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