第107話 神器のチカラ

 祈りの結果として。

 雷雲が去ったので俺たちは


 魔王の城に向かっていく。

 トゥーラミラー……


 農業だけかと思ったら、こういう使い方もあるのか……


 屋外でしか使えないけど、凄まじいな……


 さすが姉さん……いやセリス……

 俺はちらりと、俺の隣を歩く女性を見た。


 すると向こうもこちらに目を向けて


 視線が一瞬、絡み合う。

 慌てて目を逸らす俺たち。


 ……なんかの本で読んだけど、冒険者で仕事中に恋愛を持ち出すなって言葉があって。

 それには納得してた覚えがある。


 そりゃそうだ。

 イチャイチャしてたら、他の面子からの横恋慕ってやつもあるだろうし。

 不愉快な気持ちだって湧くだろう。真面目にやれって。

 それに第一、警戒が緩む。


 遊んでるんじゃ無いんだから。


 だからそういうのは慎まないと。

 ……魔王の問題が解決するまでは。




 魔王城の入り口に辿り着くと、地面には真っ黒な鱗にびっしり身体を覆われた、2本の角を備えた巨大なオオトカゲが倒れていた。

 舌を吐き出してビクビクと痙攣しながら。


 ……天雷スゲェな……

 一撃でブラックドラゴンがこれだよ……


 最強種のドラゴンなんだぞ……?


 だけど、痙攣しているな……。

 つまり、まだ生きているってことか……


 ……これ、完全に倒しておいた方が良く無いか……?


 帰りのことを考えると。


 俺は魔王城の入り口を見た。

 扉のようなものは無いけど、狭く感じる。

 ……ここから出てくる瞬間を狙ってブレスを喰らうと不味いな。

 避けようがない。


 その場合、俺は指輪で助かるだろうけど……他のメンバーも無事である保証は無いわけだぞ……?


 だったら……やるしかないか。

 安全のために。


 俺は腰の鞘からターズデスカリバーを引き抜く。

 眩く輝く刃。


 その光に、俺は目を細めた。


 その瞬間だった。


 倒れたままのブラックドラゴンの顎が大きく開いたんだ。

 それと同時に。


 その口腔から、燃え盛る激しい炎が吐き出された。

 俺たちを飲み込もうとする赤い炎。

 まだ離れた状態で、凄まじい熱を感じた。


 だが


 それが瞬間的に、消滅してしまった……。


 ……指輪の……ウェンドスリングの効果。


 ブラックドラゴンのブレスまで完全無効化してしまうその効力……


 凄まじいな。


 俺はその性能の高さに恐怖に似たものを感じながら、倒れたブラックドラゴンの頭部にダッシュを掛け。


 大きく跳躍して、抜き身のターズデスカリバーの刃を、天雷を喰らって行動不能に陥っている、そのブラックドラゴンの頭部に深々と突き立てる。


 グギュアアアア!


 同時に、ブラックドラゴンの最期の叫びが響いた。

 こうして……俺は


 驚くほどあっさりと、竜殺しドラゴンスレイヤーを達成してしまったんだ……。

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