第8章 魔王の島へ
第100話 変化する関係
「炎よ!」
俺は右手の人差し指で地面を指した。
神器の指輪が嵌っている人差し指で。
すると、火炎が地面を焼いた。
草の無いところを狙ったけど、もしかしたら虫が居たかもしれない。
今の火炎で死んでたら嫌だな。
ちょっとだけそう思う。
……だいぶ慣れたな。
この神器「自在の指輪ウェンドスリング」の使い方に。
この神器は望んだ現象を1つ召喚、もしくは消去できる。
文字にすると簡単だけどさ……
この召喚の決断がかなり厄介で。
サウラスはノーモーションで召喚をしてたけど。
リアルでやると、自己の脳内想像と、望むことの境目が厄介なんだ。
無意識で「暴発してはいけない」という思いがブレーキになるのか、上手くいかない。
なので、何かしら身体の動きが要求される。
だけど……
呼び出せる現象は種別を問わないな。
それが現象であると思えることはだいたい呼べた。
炎もだし、凍結もだ。
無論雷も出せた。
で、消去の方はわりとアッサリ出せる。
特に自分がそれを消さないと、被害を被る状況だと反射的に出た。
例えば、炎を出す練習時に俺、うっかり森の木を燃やしてしまったんだ。
迂闊だったんだけど。
で、背筋が冷えて反射的に「火よ消えろ」って強く念じてしまった。
するとその通りになり、森の火事は回避された。
消さないと大規模な火災が起きる。
そうなると俺に多大な責任が。
……こういう状況だと、ブレーキもクソも無いみたいだ。
だからまぁ、なんというか。
この指輪、攻撃に使うのはかなり訓練は要るけど。
万一の致命傷回避に使う分には、訓練要らん。
それがまぁ……
俺がこの、魔王岬に近いところにある街・デビルサイドで最後の修行に入って、気づいたことだった。
「アルフ」
俺が指輪の使用訓練を一通り終えて、水袋から水を飲んだところで。
姉さんが話し掛けて来た。
俺の稽古が終わるのを待っててくれたんだ。
……昔の姉さんは、稽古の途中でも合間を狙ってねじ込んで来たのに。
まぁ大体が、それは全体をスムーズに進めるための必須の要件で、姉さんの我儘では無かったから、俺はそれで反発して怒り出したことは無いんだけど。
明日、剣術大会あるから、出来れば今からエントリーしに行きたいんだけど、とか。
明日、山に実戦訓練がてらイノシシを狩りに行くから、武具の手入れを忘れずにしておくのよ、とか。
ようは早く言っといてよ案件。
大体がそういうのだった。
姉さんが俺を良いように使いたいからと、顎で使うようにズケズケ言って来たことはないんだ。
だけど……
あの塔……デモンド奥に存在し、神器の指輪を守り抜いて来た5重の塔を攻略してきた後。
姉さんは何か急に余所余所しくなった。
俺に対して積極的では無くなったんだ。
「姉さん、何……?」
用件を問うと、おずおずと姉さん
「デビルサイドの市長が、私たちの話をどこかから聞きつけて、夕方に宴を開くって言ってくれてるんだけど……」
何だか、俺と視線を合わせようとしない。
それに、内容……
「いや、それ、まさか今日じゃ無いよね?」
「今日だけど……?」
マジか。
お呼ばれだから、準備がいるじゃん。
もう今、午後の3時過ぎてるのに。
お呼ばれで時間ギリギリで参上するわけにもいかないだろ。
姉さんはそういうの気にするタイプだったはずだろ。
なのに、どうして……!
いや……
「分かった。急いで準備するよ」
本当は、理由は分かってるんだ。
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