第33話 TS勇者、汚っさんに凸する。
そして扉をノックをする。
「ごめんくださーい!」
うーむ。
我ながら。
女性の声はやっぱイイな。
とても聞き良い。
バトル以外はこの姿で通す方が良いかもしれない。
なんだかお腹も減らないし。
「おおおー、何の用だべ?」
ドスドスドス。
奥から足音が。
来た来た。
ガララ、と引き戸が開き。
体重3桁の禿げたおっさんが姿を現した。
「おでの子供を妊娠する覚悟は固まっただか?」
……1発やらせろから、孕めになってる。
こりゃますます姉さんやジェシカさんにはさせられないな。
そんなことを頭の片隅で考えながら、俺は話を切り出す。
「実はあの後、3人で相談しまして、アタシじゃダメかな、って」
なるべく俺が考える可愛い女子の仕草をとりつつ、そんなことを。
……あ、ジェシカさんが俺に対して引いてる視線を向けている。
そんな目で見ないで欲しいんだが……
だけど
俺の姿を舐めるように見つめているサマール氏は
「んんん、チチのデカさが少し物足りんべ。しかし……」
モモやケツのラインが良い、チチのデカさは必須項目じゃあねぇべ、って……。
「最悪乳首がついてれば、赤ん坊に吸わせてるところを想像できるから、それだけで充分ダベ」
サマール氏はそんなキモイこと言い、俺の腕を掴んで奥に引っ張っていった。
寝室に連れて来られた。
……さて、どうしよう?
部屋には汚れた、多分シーツ敷きっぱなしのベッドが1つ。
床には、布とか、袋とか。
ゴミがいっぱい落ちている。
そんなところで
「うへへへ。まず服を脱ぐだ」
サマール氏がキモく嗤いながら俺にそんなことを。
脱げってか。
……うん、まあ俺は裸に抵抗が無いからな。
そこは飲めるんだよ。
だけど……
ここで俺は演技する。
上手くできてるかどうか知らんけど。
「お願いします……裸になるのは受け入れますから」
これは交渉だからね。
飲める要求をホイホイ飲んじゃダメなのよ。
まあ、姉さんの受け売りだけど。
できるだけ弱々しく、顔色を窺うようにして続ける。
「……ですけど……行為のときは目隠しをしてください。どうか……」
俯きながら。
恥ずかしそうになってるかどうかはわからんのだけど。
どうかなぁ?
すると
「なぁに言ってんだぁ?」
オメエはおでに要求なんてできねぇだぞ?
そんなことを。
呆れた声で。
うーむ……
サマール氏の言ってることはもっともだ。
こっちは何かを要求できる立場には無いが……
ここで、俺は思う。
……泣けないか?
キツイことを言って、女子が泣きだすと、男は大体
くっそめんどくせぇ
って思うんだよな。
一般的に。
フェミニストならまた違うんだろうけど。
コイツはフェミニストではないから、間違いなくそう思う。
泣くってどうすれば良いのかね?
一般には何か悲しいことを思い浮かべなさい、ってものらしいけどさ。
……悲しいこと……
俺は記憶を掘り起こし。
思い出したんだ。
……姉さんとの思い出を。
あれは父親が出て行って、しばらく後のことだった……
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