第32話 隠していた本心
温泉から上がった。
熱かったので、のぼせている俺。
パンツだけ穿いて、涼んでいた。
仲間たちはそんな俺を置いて、相談している。
「服はどうしましょうか?」
「サイズが分かんないでしょ」
「同感ですねェ」
……何言ってんのかなぁ?
ああ、しかし……
服はしばらく着れんわ……
……俺が眺める中。
3人はヤカンに温泉のお湯を汲み。
それを姉さんが両手で抱えて、魔法で温度を下げていた。
それが分かったのは、ヤカンに結露が起き始めたからだ。
……ああ、なるほど。
姉さんたちが何をしようとしているのか。
それが読めたので、俺は身体を起こした。
そして近づき、頭を差し出した。
こう言いながら
「姉さん、水を掛けてくれ」
……正直、少しドキドキしていた。
姉さんのことがあったから、女性になってみたいという願望が、実はちょっとだけあったからな。
別に男に愛されたいとかじゃなくて。
純粋に綺麗なものになってみたいというか。
だってさあ、姉さんは地元じゃ男に羨望の目で見られてたんだぜ?
それに少しぐらい憧れてもいいだろ。
じょろろろろ……
ヤカンから、非常に冷たい水が出る。
姉さんが冷ました温泉の水。
冷たさで一瞬息が止まったが……
身体の違和感でそれどこじゃなくなった。
……全身がムズムズしていた。
股間と胸部が特にムズムズする。
そしてそのムズムズが消えたとき。
……俺の胸が浅く膨らんでいて。
股間を探ると、アレが無かった。
16年間、ぶら下げ続けたアレが……
おお……
パンツの中を覗くと、消失確認。
うっほお。
視覚的に「マジでねぇよ!」を実感する。
……こういうのに内心憧れていた。
パートタイム女体化。
別に男を辞めたいわけじゃないけど、女にもなってみたい。
そんな気持ち。
感動する。
これで戻りたくなったらお湯に入れば良いんだよね?
最高じゃん!
そんなことを考えて、こっそり喜んでいたら
「アルフ、私の予備のコートを貸してあげるから、服を買いに行きましょう」
……がってんだ!
表面上は戸惑ってる風を装いながら、実は楽しくこっちの姿の服を選ばせてもらった。
女体化した俺は、所謂たぬき顔の貧乳系アスリート女子だったので、健康的に肌の露出が多めのピッチリした黒い服……多分ボンテージ、いやビザール?……を選んだのだけど。
これで姉さんバリのナイスバディだったら、プロの女性を疑われるが、俺の場合は「分不相応の服を着ている背伸び女子」って感じで、なんとも良い感じになったんだ。
「なかなか可愛いわ。身体がスラリとしているから下品な感じしないし」
「そうですねぇ。よくお似合いですよ」
姉さんとジェシカさんの評。
……正直に言おう。
嬉しかったんだ……!
「それじゃあアルフ、
「行きましょう勇者様」
姉さんとジェシカさんのそんな言葉に……
俺は、心で言った。
任せてくれ!
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