第76話 伝説的巨馬の話
「馬王ブラックロードって言うのはですねェ」
ケンタウロスが黒い雌馬を襲って産ませたとされる伝説的巨馬ですゥ。
体高は2メートル以上で、体重は1トンを超える筋肉達磨の化け物馬って話でェ。
馬力も足の速さも普通の馬と比較できないとかでェ。
……ロリアのそんな話。
へぇ。
魔物であるケンタウロスって、女性を襲うって話は聞いたことあるけど。
人間だけじゃ無くて、馬も襲うのか。
ケンタウロスというのは、上半身が成人男性、下半身が馬っていう魔物で。
好戦的で好色で、男性を見ると殺そうとし、女性を見ると手籠めにしようとする、極めて危険な魔物だ。
槍と弓の名手でもあり、彼らの技を見て、目で盗んで生まれた槍や弓の流派もあったと記憶してる。
「確か、ケンタウロスに襲われて出来た子供は人間になるんでしたよね……だったら、筋は通ってるんでしょうか……?」
その理屈なら馬を襲えば馬が生まれるはずですし。
ジェシカさんはロリアの話を聞いて、頭の中で内容を吟味してるみたいで。
結果としてメチャクチャな話では無いって結論に達したみたいだ。
「まぁ、ケンタウロスに産まされた子供は人格が粗野で、加えて体格に優れて、そして身体能力がやたら高い人間になるとは聞いているけど」
そこに姉さんの知識による補強。
曰く、伝説的な戦士がそういう出自だった場合もあるみたいで。
そこに照らし合わせると、馬王ブラックロードの伝説も作り話とも思えないらしい。
……ふーん。
でもなぁ。
伝説だからなぁ。
「でも、かなり昔の話なんだよね?」
俺は俺で、思ったことを口にした。
するとだ
「何言ってんすカ。まだ現役の伝説っスよォ」
ニヘラ、と笑いながら。
ロリアがそう言ったんだ。
……え? そうなの?
生きながらにして伝説になったって話なの?
そしてロリアの話はそれで終わらなくて
「しかも馬王がいるとされている山はァ、この近くですよゥ」
……マジか。
そんなすごい馬がいるのであれば、捕まえに行こうという話になった。
捕まえて、馬車を引っ張って貰おうと。
まぁ、どうやって調教するの? という問題があるんだけど、それについては
「暴れ馬を調教して騎馬にした英雄はたくさん居ますよォ。ケイジとか、ライオウとか。そしてそういうのは大体が、力でねじ伏せて従わせてるんですゥ」
……なんてことを言われた。
ようは俺に、化け物馬と力比べをして勝てと言ってるんだ。
……簡単に言ってくれるなぁ。
まぁ、やるけどさ。
やりゃあいいんだよね?
……俺は頭を掻いた。
なんか、ジェシカさんとロリアの期待が籠った視線を感じるし。
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