第77話 女こえー

馬王バオウやーい! 女性の来訪者が来たぞー!」


 木々の間を縫うように存在する山道を歩きながら。

 大声を張り上げつつ、歩く。


 馬王ブラックロードは人間の女性が大好きで、人間の女性を見つけると触って貰おうと姿を見せるらしい。


 そう言う話だったので、俺たちパーティーには女性が4人も居るのだから、きっと余裕だろうと思って山に入ったんだけど。

 出て来ない。


 ……これは何故か?


「……男が混じってるのが良くないのかも」


 それに対して、姉さんのコメント。

 なるほど……




 なので。

 俺はその場で水袋の水を被って、女になって黄色い声で再度トライした。

 服は着替えない。そこまでしなくても大丈夫だろ。


馬王バオウやーい! 女性の来訪者が来たぞー!」


 すると


 ブヒヒヒーン!


 すぐに大きないななきが聞こえ。

 巨大な黒い姿が山の木々の間から出現したんだ。


 ……どんだけ女が好きやねん。




「すごく大きいな」


「すごい筋肉ですわ」


「カッコイイー!」


 リリスさん、ジェシカさん、女体化した俺。


 3人でブラックロードを囲み、その体躯を褒める。

 馬王は確かに大きかった。


 体高が2メートルを超えるので、よじ登るのにかなり苦労したし。

 筋肉のゴツゴツ具合が半端ない。


 この馬、どれだけの馬力があるんだ……?

 数頭やそこらでは効かないぞ……


 まさしく、ゴリマッチョの馬だった。


 ブルルル……


 女性3人に褒められて、馬王もまんざらではないみたいで


 お前たちも乗らないか?


 目で、リリスさんやジェシカさんにも誘いを送ってる気がした。

 調子こいてるね……


 そのとき


「アルフ」


 こっそりとした感じで。

 姉さんの声。


 見ると、近くで姉さんがヤカンを持って立っていた。


 おお。


 俺が見ている前で。

 姉さんはヤカンを念動力で浮かし……


 じょぼぼぼ……


 良い感じの温度に温められたお湯を、俺にぶっ掛ける。

 馬王ごと。


 瞬く間に股間にイチモツが生え、男に戻る俺。

 ベルトがキツくなる。

 そしてそのまま、女3人に囲まれて肉体を褒められ、デレデレしていた馬王の首に腕を回し手先をクラッチ。

 力強くその首を締め上げた。


 ……馬が背中に無警戒に乗せた人間に絞め技を掛けられたら不可避説……


 ブヒヒーン! ブヒヒーン!


 天国一転。

 馬王は暴れるがもう遅い。


 俺が男に戻ったあたりで、続く展開を予想していたジェシカさんとリリスさんは

 少し離れた位置で、こっちを見てる。


 なんか、無表情気味に。


 怖。

 ……馬王としては結構トラウマなんじゃないのかね?

 ふと、そう思った。


 そして。

 約10分間の格闘の後。


 馬王はオチて、膝を折り。


 俺たちに敗北した。


 ……こうして。

 俺たちは伝説の馬「馬王ブラックロード」を手に入れたのだった。

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