第78話 魔の土地へ
超々優秀な馬が手に入ったので、俺たちはすぐさま魔の土地デモンド目指して旅立った。
「伝説的巨馬だが、一度屈服してしまうと大人しいものなんだな」
リリスさんが手綱を取って馬車を進めてくれる。
馬車を引いているのは馬王ブラックロード。
俺が絞め落として服従させた。
馬車はリリスさんがポケットマネーで購入した中古品だけど、繋いでいる馬が不釣り合いに、異常に立派なので。
道中すれ違う人が皆、俺たちの馬車を振り返る。
……しかし。
「リリスさん、すみません」
馬車の乗客席に座ったまま。
御者の席の人であるリリスさんに俺は礼を言う。
申し訳なさを込めて。
中古とはいえ、この馬車の購入代金は、リリスさんが持ち歩いている宝石の1つを換金して作ったんだ。
さすがに馬車をポンと買うお金が俺たちには無かったから。
その資金援助に申し訳なさが募って来る。
すると
「別に気にしなくていいぞ。馬車のことだろ?」
先回りする形で言われてしまう。
まぁ、それだけじゃないんだけど。
「馬車を買うお金を得るために数回仕事を入れるとして、それで失われるのは労力だけじゃない」
前を向き、手綱を取りつつ
リリスさんは言ってくれたんだ。
「……時間も掛かるだろ。私は自分の金で、自分の時間を買ったんだ。受益者は勇者様たちだけじゃないぞ」
俺たちの心的負担を軽減するためか。
何でもない感じで。
気持ちは嬉しいけど……
だからといって、はいそうですか、とは言えんよなぁ。
そして1週間くらい馬車で旅をした。
馬の能力が高いので、とてもスムーズに進んだんだ。
そして到着。
魔の土地デモンドの入り口に。
デモンド入り口には石碑が建っており。
こう、書かれていた。
『この先を行く者は死を覚悟せよ。助けは無きものと心得よ』
そして番兵が2人。
デモンド入り口の番をしていた。
傍には詰め所みたいな建物もある。
俺は意を決した。
「あのぅ」
進み出て、番兵に話し掛けた。
番兵2名が気づいてこちらに視線を向けて来る。
俺は
「デモンドに入りたいのですが、手続きをお願いできますか?」
話を切り出すと、番兵2名にしきりに「考え直せ」「何をしに行くんだ?」としつこく言われた。
俺が「5重の塔に用事があるんです」「勇者の使命として、どうしても行かないといけないんです」と返すと。
「勇者だと? 中は魔物で溢れかえってるんだぞ? 死ぬと思うぞ?」
「自分の力を過信するな。人間、出来ることには限界がある」
そう、さらに止められて。
それでも俺たちが主張すると。
最後は
「……究極、何が何でも行きたいと言ってる人間は止められないが、本当に良いんだな?」
そう、諦めた表情で兵士たちは折れて。
俺たちに、5人分の念書の用紙を取り出して渡してきたんだ。
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