第7章 自在の指輪ウェンドスリング
第75話 馬王
「勇者様、ナイスな鞘だと思うぞ」
「勇者様! 良くお似合いだと思います!」
「発注して3日……。思ったより早く上がったわね」
クルスの町にて。
発注し、そして今日納品されたターズデスカリバーを納める鞘について。
三者三様のリアクション。
リリスさんは鞘を褒め。
ジェシカさんはその鞘に納められた神剣を腰に吊るした俺を褒め。
姉さんは鞘の発注から納品までの期間を褒めた。
……この件、個性が出るのかね。
そこに
「次は魔の土地デモンドっスねェ」
ロリアがメモを取りつつ、次の目的地について触れた。
デモンド……
魔物が
今の俺には剣の神器ターズデスカリバーがあるけど……
だから安心かというと……
「多分、魔物が物量で攻めて来ると思うんですよォ」
それな。
俺が「デモンドに指輪があるかも」って思ったとき。
一番にクリアしないといけない問題として頭に浮かんだのがそれだよ。
絶え間なく襲ってくる魔物問題。
いくら、俗に「1度に襲い掛かれる魔物は4匹まで」って言われててもさあ。
それがエンドレスに続いたら、いつかは体力の限界に達してやられる。
それに
キャンプできないだろ。
休めないじゃん。
無理。
無論、この想像があまりにも悲観的で、実際はそこまで酷くないかもしれないけど……
全く、何も対策立てないで挑むのは無謀でしょ。
何かしら、エンドレスで魔物が襲ってきても無問題と言える方法……
もしくは、それを回避する方法を考えないと。
皆でしばらく考える。
そして
「……馬車を使うのはどうだ? 私は馬車を扱えるぞ?」
貴族らしい発想。
リリスさんがアイディアを出して来た。
しかも、自分で御者がやれるという。
……なるほど。
使い慣れている人のアイディアだな。
……しかし
「馬にも限界無いですか?」
デモンド入り口から、指輪の在処として怪し過ぎる建物である5重の塔まで。
そこを一気に駆け抜ける。
馬車1台引っ張って。
……まあ、馬1頭では足りないよね。
多頭立て馬車。
そんな馬車、手綱取るのは相当難しい気がするんだけど。
その辺を訊くと、リリスさんは黙り込んでしまう。
悩み顔で。
……やっぱ難しいのか。
でもさ。
アイディアとしてはかなりイイ線行ってる気がするんだけどな。
魔物をいちいち相手しないで、振り切って目的地を目指す。
そんなことが可能な馬さえ何とか確保できればなぁ……
そう思い、俺が思考をはじめると
「あんのぅ」
……おずおずと。
ロリアが手を上げてくる。
俺は顔を上げた。
こういうとき、ロリアは有用なことを教えてくれるんだよな。
……何か知ってるのか? ロリア……?
「ロリアさん、この状況をクリアする何かが?」
ジェシカさんも期待の籠った声でそう一言。
ロリアは頷いた。
そして言ったんだ。
「皆さんは馬王ブラックロードの伝説はご存じですかァ?」
馬王ブラックロード……?
俺は心で復唱した。
知らなかったから。
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