第74話 新たなる絆
「……勇者様は公平なんスね」
俺の話を聞きながら、ロリアはメモを取り。
メモ帳をパタンと閉じて一言そう言った。
俺はその言葉に
「そんなことないよ」
そう返し。
ゴーレムだった土の山に近づく。
土の山から、キラキラと光の粒子が発生し、蒸発していたけど。
この光の粒子が、人の魂。
あとは町の魂かな。
これが尽きたとき、除霊が完了するんだ。
そして俺が、じっと光の粒子を見つめていると
「勇者様」
傍にいたジェシカさんが、俺に言葉を掛けて来た。
俺はそちらに視線を向ける。
ジェシカさんは座って手を合わせていて。
俺を見上げていた。
そして
「ワタクシが躊躇わず除霊を切り出したことを、怒ってらっしゃいますか?」
真顔でそう訊いて来たんだ。
……それは。
怒ってはいない。
理由は、さっきも言ったけど。
親父がそれを望んでいないから。
だから俺は
「俺個人のことは、親父が何も言わなかったんで。だから何もないです」
それだけ、言った。
すると
「……勇者様はお強いですね」
そう、ボソリと。
ジェシカさんが呟いた気がした。
……そんなことは無いですよ。
俺は姉さんに視線を向ける。
姉さん……
親父がこの町に閉じ込められたせいで、一番酷い目に遭った人が何も言って無いんだ。
じゃあ、俺だって黙るべきだ。
でないと、まるっきり餓鬼だと思うんだけど。
自分の個人的な感情も制御できないなんて。
一番怒らないといけない人が、軒並み飲み込んでるのに俺だけ暴れるなんて、ただの我儘だ。
そんなことを思っていたら。
光の粒子の蒸発が途絶えて。
代わりに
空中に光が生まれた。
昼の光のような輝きだった。
それが落下してくる。
そして、突き刺さった。
ゴーレムの残骸の土の山に。
それは、親父が腰に差していた片刃の長剣。
天空神剣ターズデスカリバー。
俺は金属剥き出しの柄を握った。
そして、引き抜く……
異様に軽く感じた。
武器の重さで叩き切るような使い方には向かなさそう。
ただ……
神器は不滅で、絶対に朽ちないし、壊れない。
だから俺がフルパワーで使っても、全く問題なく使えるのは保証されてる。
それだけで、武器としての価値は無限大だと思う。
……そこで俺は、自分の腰にぶら下がっている鋼鉄の剣を納めていた鞘を見つめた。
入るかな……? 鋼鉄の剣は直剣だったけどさ。
入れてみたらギリ入ったけど、明らかにピッタリでは無い。
ここからクルスの町に戻ったら、新しい鞘を発注しないと。
そんなことを考えていると
「おめでとう勇者様! とうとう神の剣を手に入れたな!」
同じ武芸者としてか。
リリスさんが祝ってくれた。
俺は頭を下げて。
「……絶対に、皆で魔王の前に立ちましょう」
そう、仲間に宣言する。
こうして……
俺は、剣の神器・天空神剣ターズデスカリバーを手に入れた。
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