第92話 どうしてこうなった?
俺はどうすればいい?
俺の自制心が甘いせいで、状況に流されて3人の女性と関係を持ってしまって。
かつ全員妊娠させたなんて。
どう考えても許されない。
……しかも。
彼女たちは、俺との子供について好意的に受け止めてくれたんだ。
産んでもいい、って言ってくれたんだよ。
……すごく、ありがたいことだろ?
俺の子供を産むことが、妊娠に付随した様々な苦痛を乗り越えてでも果たす価値があるって言ってくれたのと同然なんだぞ?
真っ当な恋愛を経ないで、成り行きで作ってしまった子供なのに。
それぐらい……俺のことは嫌いじゃないってことじゃないか。
そんな善意……いや、好意を。
俺は大きく裏切ってしまった。
どうしてこうなった……?
俺は3人の顔を見た。
全員が……
何だか、どうしたらよいのか分からない。
そんな困惑、焦り、悲しみ。
複雑な表情で、俺を見つめていた……。
俺は考える。
このまま放置すると、いずれ3人の女性のお腹が大きくなる。
そうしたら、どのみち妊娠がバレるんだ。
今のこの状況……
俺しか男が居ないんだから、3人の女性の妊娠が判明したら、父親は俺しかないって絶対に思う。
だったら、必ずバレるだろ。
だったら……
もうこれ以上は、先送りにするべきじゃないだろ。
……俺は覚悟を決めた。
俺はその場で膝を突き、姉さんとジェシカさんとリリスさんに土下座したんだ。
「ごめんなさい」
精一杯の謝罪。
許されるはずがないことへの、避けられない謝罪。
「俺、あなたたち全員とセックスしてしまった」
ハッキリと言った。
「状況に流された。俺の意志が弱過ぎた。全部俺のせいだ」
一切自分を守らず、これ以上彼女たちが情けなくならないように。
「そんな……酷い。初めてだったのに」
ジェシカさんが泣き崩れた。
「……勇者殿」
リリスさんはショックを受けていた。
「……アルフ……あなた、何をしてるの……? 私はあなたを軽々しくセックスしてしまうような知性の無い男の子に育てた覚えは無いのに……」
姉さんの言葉には怒りが含まれている。
多分、この後殴られるな……。
そんな予感があった。
姉さんは俺を懲罰するだろう。
それが呼び水になって、他の2人も俺を殴るだろう……
でもそれは、しょうがない。
それだけのことをしたんだから。
俺は覚悟を決めた。
……だけど。
「でも」
姉さんは俺をビンタしに来ないで。
……涙声でこう続けたんだ。
「私もあなたに謝らないといけない……お腹子供は、あなたの子じゃないかもしれないのよ……」
……え?
今度は逆に俺の身体と頭が冷えた。
どういうこと……? それ……?
顔を上げ、困惑する俺に。
姉さんはこう続けたんだ。
「あなたに抱かれた次の日の晩……私はインキュバスに騙されたの」
……何だって?
インキュバス。
魔物の1種で、人間の女性を使って繁殖する生物。
そしてその繁殖方法が……とても邪悪なんだよ。
インキュバスは変身能力を持つ魔物で、ターゲットにした女性が、身体を開いても良いと思える男性そっくりに変身するんだ。
多くが、旦那さんや恋人。
そしてセックスし、妊娠させる。
インキュバスの精子は女性の卵子を完全に乗っ取り、受精後人間の要素がゼロの胎児に成長し。
人間同様、十月十日を経て出産。
インキュバスの子は生まれてすぐ蝙蝠の翼を使って飛行できるので、もしインキュバスの子が生まれること確実なときは、事前に出産現場に網と刃物を用意するらしい。
逃がさないためにだ。
そんな女性の敵「インキュバス」
女性ならこの魔物については多くが警戒してる。
インキュバスの変身は
「奴らは思い出に分類される深い記憶と仕草だけは真似られないから、よくよく伴侶のことは観察し、騙されない関係性を築くんです」
そう言われてて。
姉さんも、それを知ってるはずなのに。
姉さんは泣いていた。
こんな姉さんを見たのははじめてだった。
「次の日の晩にあなたがやってきて、姉さんのことが好きだから、もう一度しようって言ってきて……私、応じてしまった……!」
そんな……
俺は目の前が真っ暗になった気がした。
勝手な話だけど……
姉さんのお腹に出来た子が、俺の子じゃないかもしれないなんて……!
それに大きく、ショックを受けていたんだ。
そこに
「私も実は、同じことが」
「私もだ……」
ジェシカさん、リリスさんの告白。
2人とも、真っ青になって告白して来た。
……何だって?
この2人も騙されたって言うのか……?
どうなってるんだ……?
俺の信頼している女性2人までもが、揃ってインキュバスに騙されるなんて……?
一体、何が起きて……
そのとき
「……あのー」
ロリアが申し訳なさそうに、手を挙げて。
こう言ったんだよ。
「……勇者様方。いくらなんでもおかしくないすかぁ? 仰ってること、クズ物書きの落書きレベルのエロ話っすよぉ?」
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