第91話 俺の秘密事項

 4階に到達。


 ……ここ、何があんのかなぁ?


 見た目は何の変哲もない感じ。

 床も、壁も、天井も一緒。

 ただ、1本道。


 向こうに階段が見えた。

 すぐ終わりそう。


 ……逆に何か怪しいな。

 何か、とんでもないことを言われるのかも……


 俺はロリアを見た。


 彼女は床を調べている。

 彼女もこの階の形状が怪しいと思ってるのかね。


 ……この子、バトルでは戦力にならないけど、その他は多芸で役に立ってるよな。

 こういうときの警戒やら、博識さやら、ご飯係やら。


 ……料理の腕は姉さんもすごいけど、彼女も十分な腕前。

 ホント、多芸。


「なぁ、姉さん」


 そこで俺は姉さんにこの状況をどう思う? って訊こうとしたんだ。


 そこで急に思い出してしまった。


 俺が……


 姉さんと、ジェシカさんと、リリスさん。

 この3人全員と、関係を持ってしまったことを。



 ……最初はジェシカさんだった。


 2人きりになったとき、何だかよい雰囲気になって。

 衝動的に抱きしめたら、彼女は嫌がらなくて。


 そのまま……


 終わった後、彼女は幸せそうに微笑んでいて。

 その表情を本当に可愛いと思ったんだ。



 ……次にリリスさんと俺は関係を持った。


 稽古が終わった後に、水浴びをしていたら。

 偶然全裸で遭遇して。


 結婚の話が出て。


 そしたらいつの間にか……


 終わった後に、恥ずかしそうにしてる姿が普段の様子とギャップがあって。

 ドキドキした。



 最後は姉さんで。


 朝に俺が宿屋で姉さんを起こしに行ったら。

 寝ている姉さんが色っぽくて。


 ……なんだか、魔が差したんだ。

 身体を触ってしまったら、姉さんは実は起きてて。

 ベッドに引きずり込まれて、キス。

 すると俺も火がついて。


 ……終わった後に、姉さんが


「……好きよ。アルフ」


 そう耳元で言ってくれたのが本当に嬉しかったんだ。



 ……これだけなら、俺が墓まで持っていけばいいだけの話。

 俺が言わなきゃ、俺がパーティーの女性全員と関係持ったろくでなし勇者であるとは誰も知らない。

 彼女たちも傷つかない。俺は最低だけど。


 だけどさ……


 その後、数週間後に言われたんだよ。


 ……全員に。


 妊娠したって。


 どうしよう……


 俺の脳裏に、3人が。

 俺に妊娠報告をしてきた彼女たち3人の様子が蘇る。


 ジェシカさん。


「勇者様……ここに、あなたの子供が出来てしまいました。きっと、これは運命ですね。……魔王を討伐したら、一緒に育てましょう。よろしくお願いしますね。あなた」


 リリスさん。


「勇者様。いや、アルフレッド殿。私はあなたの子供を身籠ってしまった。こうなると結婚して貰うしかない。この冒険が終わったら、ウチの一族の一員になって欲しい。頼む……」


 そして姉さん。


「……アルフ。あなたとこうなって、子供まで出来て。私は私の真の気持ちに気づけたわ。……私はあなたのことが男の人としてずっと好きだったのよ。これからは夫婦になりましょう。いいわね? ……旦那様」


 ジェシカさんの嬉しそうな顔。

 リリスさんの恥ずかしそうな顔。

 そして姉さんの優し気な微笑み……。


 ……俺はこんな重大な問題を、今日、ここまでロクに解決しようともせずに引っ張って来た。

 何やってるんだ、俺……!


 俺は3人の女性の顔を見る。

 全員が、何故か深刻な顔をしていた。


 ……ひょっとして、気づいたのかもしれない。

 女の勘ってやつで。

 自分たち全員が、俺の子供を身籠っているって……。


 お、俺は……


 どうすれば……?

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