第66話 七つ目の神
「町長?」
俺は親父の言葉に言葉を返した。
話が読めないので混乱して。
親父は
「ここから先の話は、町長から聞いた方が良い。今言った話も、俺が後から町長に訊いたことなんだから」
……ああ、なるほど。
親父の話はあくまで「聞いた話」だから。
より正確な話は、大元に近づいて聞いた方が良い。
子供でも分かる理屈だわな。
だから
「分かった。行こう皆」
振り返って呼びかける。
皆は
「ええ」
「ハイ」
「うむ」
「行きましょうかァ」
……異論は無いみたいだった。
連れて来られたのは。
それなりに立派な家。
周囲の家よりひと回りは大きい石の家。
立派な庭も存在してる。
親父は
「ズハウス殿ー! いらっしゃいますかー!?」
外から大音量で呼びかける。
そしてしばらく待っていると
「……アルティア殿か。何の用かな?」
中から、白髭で、禿頭の老人が出て来たんだ。
「町長のズハウスと申します。諸事情で全くもてなせないことをご容赦くだされ」
家の中に入れて貰えて。
応接セットのあるリビングのような部屋に通されて。
……老人は町長ズハウスと名乗った。
この町がこうなってから、ずっと町長をしているらしい。
「事情は知ってますので大丈夫です」
町長さんの向かいの椅子に座らせて貰いながら頷く。
この町でまともなもてなしを受けると、町から出て来れなくなる。
そんなもん、望む方がおかしいし。
すると町長さんは少し寂しそうに笑って、言ってくれたんだ。
この町がどうしてこうなったのか。
この町に神器の剣を持った男がやって来た。
彼曰く、神の啓示を受けたので、盗んで来たと言った。
町の人間は困惑し、やがては恐れたそうだ。
折角、差別から逃れるために町を作ったのに。
この男が町に来たことで、良くないことが起きるかもしれない。
そう思ったけど。
そこに神様が降臨したんだそうだ。
「……神様、ですか?」
思わず復唱してしまった。
町長は神妙な表情で頷いた。
そして教えてくれたんだ。
その神の名を。
「神様は……サンヴィリアと名乗りました。自分は創造神の生き残り。この世界には、実は最初は七柱の神が出現していたんだ、と……」
七柱目の神・サンヴィリア。
聞いたことがなかった。
俺はそこで反射的にジェシカさんの表情を盗み見る。
……彼女も知らないようで、激しく動揺をしていたんだ。
そしてその動揺を押さえ込み。
ジェシカさんが口を開いた。
「……その七柱目の神は、何を要求されたのですか……?」
話を前に進めるための質問。
他にも訊ねたいことはあるけど、今聞かないといけないのは多分そこだろ。
そんな自称・由緒正しい神様ならば。
降臨して何も要求しないのは変だ。
用事があるから出て来たんだろうし。
すると町長は
「……この地に、十の願いを忠実に守った町を作れ。それが出来るのであれば我が加護を与える、と仰いました」
教えてくれたよ。
そんな要求……いや、試練を与えられたことを。
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