王様に16才の誕生日に魔王を討伐してこいと言われた。青銅の剣1本と小遣い銭を渡されて

XX

第1章:下賜されたのは青銅の剣とお小遣い

第1話 運命の誕生日

 世の中、いつまでに何かにならなければいけないってのは、別に珍しいことではない。

 それは職人だったり、商人だったり、兵士だったり。

 親が死ぬまでに職人として独り立ちしろとか。

 親が身体がきつくなる前に、家の商人としての仕事を覚えて、早く引退させてくれとか。


 そんな強制、普通にあることだ。


 ……だけどさ。


「アルフ、起きなさい」


 俺みたいなタイプの強制は、多分そんなに無いと思う。


 朝。

 ベッドと……書き物机ひとつと本棚以外、特にモノが無い俺の部屋。

 そこにズカズカ踏み込んで。


 5才年上の義理の姉のセリスが部屋のカーテンを開け放つ。

 俺は朝日が眩しくてベッドの上で縮こまるけど。


「起きなさいって言ってるでしょ!」


 怒鳴られるので、しぶしぶ身を起こした。

 俺は朝が弱いから、寝ていたいのに。


 セリス姉さんは許してくれないんだ。


 全く。

 昔から友人に


「あんな美人が義理の姉なんて羨ましい」


 とか


「義理なら結婚できるじゃん! ナイス義理逃げ!」


 とか言われているけどさ。


 セリス姉さんは家族に対してはキッツイんだよ。

 別に何処にも仕事に出てない俺に、毎朝決まった時間に起きることを強制してくるし。

 日々の稽古だって、計画から逸れることを絶対に認めない。


 雁字搦めにしてくるんだよな。

 優しそうで美人でナイスバディ。

 これは役満だろ、もっと感謝しろとか言われたけど……


 勝手なこと言うな!


 全く。

 嫁にでも行ってくれれば、俺も少しは休みやすいと思うのに。

 姉さんは別に、箸にも棒にも引っ掛からないはずは無いのにさ。


 性格は今言った通りクソ真面目で自他ともに厳しい感じなんだけど。

 煙たいだけで性格は破綻してないし。まともだし。


 それにさっきの友人の言葉通りさ……

 スタイルも悪く無いしな。


 あまり義理とはいえ弟の身でこういうのはどうかと思うけどさ。


 まあ、巨乳なのよ。

 ちなみにデブじゃないぞ?


 真っ当な意味での巨乳だ。

 だから貰い手無いはずないんだけど。


 なんかさ


「あなたを置いてお嫁になんていけないわ」


 ってさ。

 そういうこと言うんだよ。


 正直、過保護やめてと言いたいけど。

 そういうことを言っていいのかという想いがあるから言えずにいる。


 真心なのは間違いないはずだし。


 ……って。


 枕元の時計を見たら、朝5時じゃん!

 6時じゃない!


 起きるのはいつもは6時で、7時までに朝食。

 そして8時から昼まで剣の稽古。

 その後昼飯で次に魔法の修行。


 そういう流れのはずなのに


「早すぎる! どうして! って……」


 姉さんが、いつもの町娘風茶色のワンピース服を着てなくて。

 黒いとんがり帽子と、同色のローブ。


 魔術師の正装だ。


 ……何で?


 そこで考え、思い出した。


 そうだ……


 今日はこの俺……アルフレッドの16才の誕生日。


 ……皆はアルフレッドとは言わず、アルフって呼ぶけどな。

 呼びにくいとか、何か気取ったフルネームだから嫌だとか。

 カッコいいから俺のイメージと違うとか、可愛く無いからとか言ってさぁ。


 って、そうじゃなくて。


 今日は俺がお城に呼ばれて、国王陛下に正式に使命を賜る日なんだよ。


 そう……

 魔王討伐の使命を……!

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