第62話 剣の神器
「何で魔王ともあろう者が、住居侵入した馬鹿の罪を償わせるため、その元嫁を拉致して連れ去って行くの?」
なんというか……王を名乗る存在のすることじゃない気が。
スケールちっちゃすぎる。
親父は俺のそんな疑問に
「……俺も分からん。暇なんじゃ無いか? 魔王は」
首を振りながらそう返して来た。
うん……まぁ。
納得は出来ないけど、そうとしか言えない気がするね……。
「でな、母さんの生霊はこう言ったんだ」
あなた。
お願いです。
三種の神器を集めて、魔王の島まで来てください。
島に誰かが救出に来たのであれば、お前の罪を許してやると魔王が言ってます。
あなたには迷惑ばかり掛けて、本当に申し訳ございません。
……そう言ってボロボロ泣いたらしい。
で、そのときに「剣の神器の場所を教えます。魔王が教えてくれたんです」って言って。
それを聞いた親父はそのまま旅立った。
誰かに言うと止められることが予想できたのと、当時12才の姉さんがあり得ないレベルでしっかりしていたので
お金はあるし、1年くらい自分が居なくても大丈夫だろ。
理由を言って心配を掛けるよりはマシなんじゃないか?
そういうやや勝手な見通しで、真相を隠したまま出て行ったんだ。
「あのさ」
……俺は一言言いたくなった。
「親父、メチャクチャ過ぎるだろ。12才の女の子に7才のガキを押し付けて出てくって何なのよ」
俺が不機嫌になってることに気づいて親父は
「……それは本当にスマン。結局こうなってしまったわけだしな」
どうしても俺は母さんに帰って来て欲しかった。
スマンなアルフレッド。
そう、寂しそうに言った。
……この人、どうしても自分の奥さん……つまり俺の母さんを助けたかったんだな。
その親父の様子を見て、俺は色々分からなくなる。
親父の態度って、親としてどうなんだろうか……?
土壇場で家族に負担を強いて、失った妻……
言っちゃなんだけど、自分の女を優先したわけだよな。
でもその「自分の女」は、俺の母さんでもある……
俺は本当に分からなくなった。
「……もう良いですよ。お義父さん」
そこに。
セリス姉さんが溜息と一緒にそんなことを。
……じゃあ、もういいや。
姉さんが文句ないんなら、俺も無い。
俺の様子を見て、俺の意志について察したのか
「本当に悪かったな……ゴメンな……」
親父はもう1度、そう俺たちに詫びたんだ。
うん。
これでもうこれはおしまいだ。
なら
「親父、結局剣は見つかったのか?」
話を切り出す。
親父の話だと、母さんに剣の在処は聞いてたわけだろ?
だとするとまず、真っ先に剣の確保に出向いたんだと思うんだけど……
俺の言葉に親父は表情を引き締めて。
「ああ」
頷いた。
おお……
親父の返答に、俺もアガる。
見つかったんだ……!
ということは……
俺は親父が腰に吊り下げている一振りの太刀に注目した。
さっきから気にはなっていたんだ。
見たところ1メートルくらいの一般的な片刃の剣だ。
若干反りがある。
それは鞘に収まっていて、
そして
で、それに加えて
全く錆びている様子なんて見受けられなかった。
そして色は白。何の金属かよく分からない……。
けど、なんだか太陽の光がイメージ出来た。
俺の視線に気づいたのか、親父はもう1回頷いて
「アルフレッド、セリスちゃん……これが天空神剣ターズデスカリバーだよ」
抜剣してみせてくれた。
すると
……あたりに輝きが満ち溢れた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます