第63話 ゆずってくれたのむ!

「……すごいですわ。剣身が輝いてます」


 ジェシカさんがうわ言のように呟いた。


「まるで太陽のようだ……」


 リリスさんの感想。


 そう。

 伝承通り、剣はギラギラ輝いていた。


 剣を直視するのが目に悪い。

 まるで太陽を直視するみたいに。

 そんな気になる明るさ。


 ターズデスカリバーは、抜くと周囲が昼になる。

 そう言い伝えられてる剣だけど。


 本当だったみたいだ。


「そう……まさに太陽の剣だろ?」


 俺たちに剣の神器を示している親父は誇らしげで


「父さんも手に入れたときは感動したさ……これで念願のターズデスカリバーを手に入れたぞ、ってな」


 俺たちにターズデスカリバーを見せた親父は、少し誇らしげに言った。

 気持ちは分かるよ。すごいもんな。


 だけど俺は


「親父、その剣を俺に譲ってくれ頼む!」


 そう直球で頼んだんだ。


 俺はこの剣を手に入れるためにこの町に入ったんだし。




「事情は分かった」


 俺たちは何故その剣を欲しがっているのかを親父に説明した。

 途中、俺が魔王討伐の使命を国王陛下から与えられたことを知ると


 そりゃすごいな。父親としてお前が誇らしいよ!


 って褒めてくれた。

 で、頭をまた撫でられたんだけど、ガキ扱いされて喜ぶ年齢じゃないとやんわり拒否。

 そして話を続けて……


 魔王の島に渡るために、三種の神器が必要で。

 すでに鏡は手に入れているとリリスさんを示しつつ説明。


 そこまで話して、親父は俺たちの現状を理解してくれた。


 けど


「……しかし、悪いがお前にこの剣を渡すわけにはいかないんだ」


 剣を譲ることを拒否された。

 何でさ!?




「いや、何でそうなるんだよ? 俺の言ったこと理解してくれたんだろ?」


 親父の返答が納得できなくて喰って掛かる。

 親父はすごく困った顔をしていて。


 教えてくれたんだ。


「……ここの町は、死人の町で」


 うん。

 それは知ってる。


 だからここまで何も飲み食いしないで、住人の怪しい言葉も無視して……


 そこでハタと気づく。


 ……親父、妙に若く無いか?

 見たところ、30代くらいにしか見えない。


 俺を置いて出て行ったとき。

 親父はすでに良い大人だったと思うんだよ。


 勇者と呼ばれる高名な戦士だったんだから。

 確か名を上げるのに10年くらいの活動期間があったはず。そう聞いた。

 そこから結婚して俺を育てて……


 だからまあ、どんなに若くても34才くらいが限界のはずなんだ。

 親父が7才の俺と12才の姉さんを置いて出て行ったときは。


 ……だったら、あれから9年経ってんだから、もっと老け込んでるはずなんだよ。

 若くて43才……つまり普通に考えると40代になってないとおかしい。


 40代の男って、もっと肌がくたびれて来てるはず。

 なのに、親父はそうでもないんだ。


 無論、世の中には若く見える人は居るけどさ。

 なのでスルーしてたんだけど……


 まさか……?


 俺がある可能性に思い当たったことに気づいたのか。

 親父は少し寂しそうに笑った。


「そうだ。勘が良いな……お前が察している通り……」


 親父はそう言った後、一拍置いた。

 そして


「俺は死人だ。……この町に取り込まれている」


 そう寂しい顔のまま、とんでもないそんな告白して来たんだ。


 ……そんな!

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