第23話 チームプレイ
俺は吹雪に巻かれて悲鳴をあげているラミアに踏み込み、間合いを詰め、斬撃を浴びせた。
姉さんがタイミングを合わせて魔法を解除し、俺が吹雪に巻きこまれないためのサポートを入れてくれる。
「ぎゃあああああ!」
俺の袈裟の斬撃を喰らい、斜めに切断されるラミア。
そのまま倒れ伏す。
俺は時間を掛けられないので、倒れたラミアの頭に鋼鉄の剣の切っ先を突き刺した。
力はかなり籠める。
剣に「歪まないでくれよ」と祈りながら。
剣は深く突き刺さり、その瞬間にラミアの身体がビクッと痙攣する。
……これでラミアは仕留めた!
剣を引き抜き、向き直る。
……もう一体の敵……牛頭蜘蛛身の魔物・ブルデビルに。
ブルデビルは姉さんたちを襲っていた。
ヤツは毒の息を吐き掛けて、姉さんたちを攻撃しているように見える。
ブルデビルの口から、薄い緑色の空気が噴き出しているように……見えた。
それに対して、姉さんとジェシカさんは口と鼻を押さえ、息から逃れようとしていた。
……助けないと!
そう思い、ブルデビルの背後から斬りつけるけども
剣の刃は入るが、それは致命傷では無かった。
痛みに震え、息による攻撃を中断し。
こっちに向き直って来るブルデビル。
……ブルデビルがデカすぎる。
身体に斬撃を浴びせても勝ち目はない……!
剣を振り下ろし、それを身体で納得し、俺は口と鼻を押さえて間合いを離した。
また毒の息をが来るからだ。
ブルデビルがこちらに蜘蛛の歩みで追い縋って来る。
だが……
「勇者様ぁ! 今ですよぉ!」
そのとき
ブルデビルの背中に、誰かが乗っていることに気づいた。
……その人影は小柄で……
ロリアだった!
ブルデビルの背中に、しがみ付いている!
危ない! 何やってんだ!?
そう思ったけど
今それを言ってる場合じゃ無いなと。
何故なら……言っても危ないだけだし。
それに……
ブルデビルが、意識を背中のロリアに向けてて。
こっちに意識が行っていなかったからだ。
チャンス。
俺は踏み込み、跳躍し、ブルデビルの額に突きたてた。
鋼鉄の剣の切っ先を。
頭に刺さるとさすがにこの大型の魔物も、ひとたまりも無かったのか。
大きく痙攣し。
ズズンと崩れ落ち。
それきり、動かなくなった。
「魔物の息で攻めあぐねていらっしゃるなと思ったのでェ。何か登れそうに見えたんですよぉ」
戦い終わって。
何故あんな危ない真似をしたのかと理由を訊ねたら
返って来たのはそんな言葉だった。
戦闘員でも無いのに、勝手な真似をしないでくれと言いたかったけど。
この場合、この戦いの決め手になったのは事実。
なんて言うべきかな……?
迷った。
認めるのは絶対違うし。
かといって、断罪するのも違う気が。
そんな感じで迷っているところを
「ロリアさん、その勇気は素晴らしいです。ですが……」
ジェシカさんに先を越される形になった。
彼女はこう続けた。
「あなたは非戦闘員なんですから、前に出るべきじゃないんです」
指を1本立てて、説教する感じで。
するとロリア
「身の程を知れってことっすか?」
ニコニコ顔の彼女のそんな言葉に、ジェシカさんは閉口する。
まぁ、そういうことなんだけどさ。
……言い方ァ!
そしてそこから数日歩いて。
その後何も起こらず。
「ここがカノンの街か……」
俺たちは無事、海辺の街のカノンに到着。
俺たちの前にはオレンジ色の煉瓦みたいなもので葺かれた、石の住居が建ち並び。
そして何処からともなく、潮のにおいも漂ってくる。
……さあ、水棲の魔女に会いに行くか。
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