第69話 亡霊の町
「我々は不死になり、最初の200年はそれなりに楽しくやっていたと思います」
町長の話は続く。
サンヴィリアに永遠の命を与えられ、見捨てられた。
神の加護が無くなったけど、まぁいいや。
そう思い直し、仲直りしてこの町の住人はやっていくことにした。
だけど……
200年を過ぎたあたりで、町の住人同士がいがみ合いはじめたんだ。
些細な違いや、軋轢。
それが忍耐で耐えられる限界を超えたらしい。
ある日、決壊するように争いがはじまった。
……元々。
彼らがそうなったそもそもの原因が「殺し合い」なんだ。
200年も持ったのが驚異的な長さなのかもしれない。
燻っていた憎悪が再燃しなかったのは。
でも……
「いくら争い、傷つけあっても誰も死なないんです」
そう。
不死だからね。
殺し合いになっても、誰も死なないんだ。
そしてさらに憎悪の溝が深まっていく。
いくらやっても無駄な殺し合いはだいぶ長く続いたけど、それもやがて沈静化。
だけど、町の住人たちの間に出来た溝はそのまんまで。
結果、この町の住人は「相互で本当は憎み合っているのに、無駄だから殴り合わない」そういう関係性になった。
……最低の環境じゃんか。
で、その環境に嫌気が差して町を出ようとすると、当然ながら出られない。
人間関係最悪な環境に閉じ込められ続ける……
それだけでも地獄だけど……
長く生きるに従って、住人たちは別の思い……
「恥ずかしかった」
「情けなかった」
そんな思い出が重なっていく。
それも彼らを苦しめた。
死にたい。消滅してしまいたい……。
そう思った住人たちは、たまに外部の人間が町に偶然入り込んだとき、この町の現状を伝え、町ごと除霊して欲しいと訴えた。
素人考えで、自分たちは悪霊になってるんじゃないのかと思ったんだな。
でも……
「何も変わらなかったんです」
……そりゃま、そうかもな。
除霊がどれくらいの労力か知らないけど。
何で、見ず知らずの人々のためにそんな労力を払わなきゃならんの?
どう考えても大仕事になるのに。
やる理由ないよね。
やる理由だと? 苦しんでいる町の住人がどうなってもいいっていうのか?
除霊以外彼らは救われないんだぞ?
そんなこと言われてもさ……
何で俺がそんなことをしなければいけないんですか?
この一言で終了だ。
そんなの当たり前だ。
見返りもないのにやれないよ。普通の人は。
「そして最終的に我々は、町に来た人間を仲間に引き込むことを喜びとするようになりました」
訪問者に永住の言質を取るか、何かモノを与えるとその訪問者は町の住人になる。
それに気づいたので。
……俺はこの町に入って経験した数々のそんな罠を思い出し、ゾッとする。
やっぱり彼らはそういうつもりだったんだ……
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