第96話 魔物の存在意義
魔物が人間のためにいると仮定する。
そう考えると、色々見え方は変わって来るよな。
例えばさっき大問題になったインキュバスも。
そんな存在が居るせいで、結婚後旦那さんに関心を持たず、癖や性格を把握しようとしない女性は危機感が足りないということになっているし。
旦那さんの方も、奥さんとの思い出の積み重ねを怠ると、奥さんがインキュバスに狙われる隙になる。
そういう意識が生まれてる。
そして他人への侮辱用語として最大のものに「ゴブリン野郎」ってのがある。
意味合いは「卑怯で、強者に媚び
理由は、ゴブリンがそういう魔物だからだ。
でもこれって、ゴブリンが居ないと成立しない言葉だし。
ある意味、人間に「こうはなってはいけない」という実例を示していると言えないか?
あと、俺たちはラミアにも遭遇したけどさ。
アイツのやり口は「重大な内容を突きつけた後、泣き落としも交えた強引で勢い任せの言葉で犠牲者を押し切って、誘い出す」だったよな?
そんなの、魔物に限ったことじゃなく、人間の詐欺師にも存在する問題だろ。
そこで魔物がそういう手口をよく使うなら、人間の方も落ち着いて「内容の重大さ」に誤魔化されず、問題を冷静に考えられるようになったりしないか?
……どうしよう。
どんどん、魔物たちが人間に教訓や努力を促すために存在しているような気がしてきた。
「……色々考えているところ悪いが、どうするお前たち?」
色々ショックを受けている俺たちに、サウラスが意志を確認して来る。
最終意思確認……?
「問答無用で襲っては来ないのか?」
不自然に感じたので訊ねると
サウラスは
「お前たちは4つの試練を完全に乗り越えて来た有資格者だ。そういう相手では無い」
……そうなのか。
というか
俺たちがこの塔で何をやってきたのか、一部始終見てたみたいだな。
どうやっていたのか分からないけど。
「……サウラス。私たちはあなたから神器を奪わないといけないの。だから戦いは避けられないわね」
そこに。
姉さんが返答をした。
サウラスは姉さんに視線を向け
「……承知した。ならば掛かって来るがいい」
そう言い放ち。
玉座から立ち上がり、その手を前に構える……
レスリングの構えだ。
こいつ、騎士鎧に似た魔物・リビングアーマーなのに。
素手で戦うのかよ。
そこで俺が少し困惑していたら。
頭の中で火花が散り
「皆散って!」
言って俺は前に飛び出した。
皆もそれに倣う。
その一瞬後。
俺たちが立っていた場所が火の海になる。
……これが現象を操る指輪「自在の指輪ウェンドスリング」の効果……!
「我に挑むのであれば容赦はせぬぞ。……本気で掛かって来るがよい」
そこでサウラスはそう、俺たちに呼びかけて来た。
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