第3章:水棲の魔女に会いに行く
第17話 とりあえずの目標
王都で「目的意識の塊の神の使徒」神官のジェシカさんと。
色々知識と技術があると豪語する「俺の活躍を見守りたい系」自称吟遊詩人のロリアを仲間に加え。
とうとう、本当に旅立たないといけなくなった。
……ロリアに関しては、俺は信用度に疑問があったけど、姉さんが
「別に悪い人じゃないと思うから良いんじゃないの?」
って、クソ珍しいお墨付きを出したので、入れることに。
本人は飯炊きから火の番、鍵開けまで雑用を全部こなすって言うしさ。
確かに問題ないならありがたくはあるんだけど。
……で。ジェシカさん。
彼女の場合「勇者というネームバリューが付いた使命に、自分の手を貸したい感」を隠さないで俺と接してくるから、グズグズしてたら何を言われるか分からんのよな。
やれ「お金が溜まって無いからー」とか「時期が来てないからー」とか。
……言えねえ。
ジェシカさんの俺への敬意と、期待に満ちた眼差し。
それが失望に変わり、ため息を吐かれ
「勇者様、あなた人生舐めてません? 生きてて恥ずかしくありませんか?」
こんな辛辣なことを言われることを夢想する。
……それがかなり凹みそうなんだ。
だからグズグズしてられない。
で、どうするべきか、なんだけどさ……
ハッキリ言って、分からんのよ。
どうやれば魔王の城に行けるのか。
情報ゼロ。
内心、途方に暮れてたんだよな。
最初はダラダラ修行がてら、ゆっくりこなしても問題ない、緩い使命だったから。
魔王討伐の道筋を、まともに考えてなかったけど。
いざ本気で取り組むとなると、ビックリするほど情報が無いことに気づいて愕然とした。
何で気にならなかったんだ?
仮にも使命として引き受けたのに。
……自分が情けないぞ。マジで。
そして困っていたら
「
ロリアが地図を広げながら、そんなことを提案して来たんだ。
……水棲の魔女?
知らなかったので訊ねると彼女は
「
……人魚、かぁ……
ちらり、とジェシカさんに視線を向ける。
すると
「この世の全てを知ってるという、伝説の人魚ですね」
穏やかに、そう一言。
……ということは、人魚って魔物じゃないのか。
創世の1週間で生まれた生き物のひとつだったんだな。
もし魔物なら、ジェシカさんはきっと狂うはずだし。
なので
「人魚って魔物じゃ無かったんですね」
そう、ポツリと言ってしまったら
「ええ。海に住む人類として生まれたのが彼らですわ」
上品に微笑みながら肯定。
ほらね、やっぱり。
……まあ、人魚が人類を襲ってきたって話を聞かないしな。
ちょっと考えれば分かる問題だったのかも。
魔物は例外なく人を襲ってくるんだよな。
襲撃を怠けるヤツはいても、友好的なヤツは1匹も居ないんだ。
そして今、俺たちは水棲の魔女が棲んでいるという北の街のカノンを目指して街道を歩いている。
馬車なら2日掛かる観光地。
海水浴で有名なんだよな。
その海に棲んでるらしい。
水棲の魔女。
行くのに馬車に乗らないのは、単純に金が無いからだけど。
それに関して。
誰一人として、俺に文句を言う
ありがたい。
だけど……
「……朝から歩き続けて、そろそろ半日以上歩いてる気がするので疲れてませんか?」
俺がそう呼びかけると
「わっちは別に大丈夫すよ~」
「ワタクシも大丈夫ですわ」
……ロリアとジェシカさんからそんな答え。
確かに瘦せ我慢の色が無いし。
余裕はあるんだろ。
ロリアに余裕があるのはちょっと驚きだったけど、ジェシカさんは白兵戦できるくらいには、身体を鍛えている女性だしな。
でもさぁ……
女性2人にこんなことを言われるとさぁ……
構造的に
このまま休みなしで歩かざるを得なくなるよな。
俺はそろそろ休憩したかったんだけど。
……仕方ない。
諦めて歩くかと覚悟を固めたら
「……今日はここまでにして、キャンプしましょう。この先に何かが襲って来たときに、限界まで疲労してたら対処できないわ」
セリス姉さんが。
俺が切り出しにくい提案をしてくれた。
……感謝ッ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます