第28話 その男、サマール
ジェシカさんは酷く驚いて。
姉さんとロリアは冷静だった。
姉さんは
「なるほど……」
そう、呟いた。
さすがは姉さんだ。
インパクトに誤魔化されず、冷静に観察をしてる……!
俺は受け答えに出て来た男性に向き直り
「ここでは人魚との交渉を請け負っていると聞きましたが、間違いありませんか!?」
そう、確認をした。
前振り挨拶の意味もあるけど、間違いがあったら困るしね。
そしたら予想通り
「ああ、その通りだぁ……人魚と話をしたいだか?」
目の前の男性は俺の質問を肯定してくれる。
よし……
「はい! 俺はアルフレッドと言います!」
問いへの返答と名乗り。
まずは名乗らないと。
すると俺に続いて。
「その姉のセリスよ」
「お付きの神官のジェシカです」
「ロリアと申しましてェ」
……他の3人も名乗ってくれた。
それを聞き
「おではサマールだぁ」
男性の名乗り。
なるほど。サマールさんか。
双方名乗りが済み
「で、人魚と話したいだかな……」
サマールさんはそう言った後。
……なんだか、ねばつくような視線を向けて来た。
主に、姉さんとジェシカさんに。
……何なんだ?
視線を向けられた姉さんとジェシカさんも、なんとなくの気持ち悪さをその視線に感じているのか。
少し、居心地悪そうにしていたんだけど。
それは、すぐに明らかになった。
それは……
「そっち、ジェシカとセリスだか? ……どっちでもいいだぁ……おでに1発やらせるだぁ」
サマールさんの……いやサマールの隠そうともしないドエロい粘着質の視線。
それが姉さんとジェシカさんに絡みつく。
……ちょっと待てや!
「チョーっと待ってください。……支払いは金銭では無いのですか?」
俺は確認せずにはいられなかった。
到底そんな要求、飲めるわけが無かったから。
だがサマールは
「おでは貸家を複数持ってるだで、その家賃収入で十分食っていけるだから、金は要らんべさ」
……あー。
だったらその金でプロの女性を買えよ!
そう思ったけど、それを言う前に
「商売女を買うのは飽きたべさ。時代は素人の綺麗な娘っ子だぁなぁ」
……とんでもないこと言いやがる。
続けてこう言った。
「いつもニコニコ女体払いだべさ」
何だよ女体払いって!
そんな支払方法、ゴブリンや荒くれ男から助けられた女性からしか確認できない支払い方法だろ!
あと、ドラゴンに捕まっていたお姫様とか!
ダメだ!
そんなの人として許せん!
頭の中でサマールに泣きながらやられる姉さんやジェシカさんを想像しそうになり、慌てて打ち消す。
……でも、だったらどうすんだ!?
水棲の魔女とコンタクトが取れないと、情報が入らないぞ!?
そんな俺の思考が、袋小路に入り込みそうになったとき。
スッ……と
ジェシカさんが手を上げたんだ。
能面のような表情だったけど、少しだけ青ざめた顔で。
そしてこう言った。
わりとハッキリと。
「私が行きます……」
いやいやいやいやいやいやいやいやいや!
それは駄目!
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