第44話 ヒュドラとの戦い終わって

 ヒュドラを倒した。


 そして死んだヒュドラの中央の首を切断し、公爵家に提出。

 そこでリリスさんともお別れ。


「良い経験をさせて貰った! ありがとう!」


 ヒュドラ退治の経験をしたいから仲間になった。

 そういう約束だったからね。


 別れるときに握手した。

 リリスさんは満足そうな顔をしていた。




「どうなるんでしょうね」


 酒場に戻って来て。

 テーブルに皆で座って感想会。


「これで終わりの可能性はあるわけよ。期待はしても良いと思うわ」


 姉さんはお茶を飲みつつ俺を見て


「しかし、首を減らすのではなく、増やして倒すのは斬新な発想だったと思うわ」


 ……何か褒められた。


 ちょっと嬉しくて頬を掻いた。


「まあ、増える首に対処するのは結構大変だったけど、姉さんもサポートしてくれたし、ジェシカさんも」


 そう言いつつ、お気に入りの果汁入りの水をグラスに注いで飲んでいるジェシカさんに視線を向けた。


「神官系魔法だけじゃなく、前衛要員も問題なくこなしてくれたから出来たんだよ」


 俺のそんな言葉にジェシカさんは


「魔物を前にして、冷静にならずに殺意を解放して良い状況は神官の血が滾りますから」


 あれぐらいなんでも無いです。

 少し照れくさそうに。


 言ってる内容を別にしたら、ホント奥ゆかしいお嬢さんって感じて、可愛いんだけど。


 ……俺たち姉弟と組むまでは、ソロで仲間募集状態だったことを思い出す。


 アレは環境がブラックだったこと以外にも、こういう彼女の性質の部分が確実にあるよなぁ……。


 そんなことを思っていたら


「……しかし、リリスさんがここでお別れなのは惜しかったですね」


 そこでジェシカさんのその一言で。

 今回の戦いの限定的な仲間になってくれたリリスさんに話題が飛ぶ。


 ……確かに彼女は惜しかった。

 嫌な人間では無いし、期待以上の実力を見せてくれたし。


 彼女だって、ヒュドラの首を刎ねまくり、行動不能になるまで持ちこたえられた実力あるんだから。

 出来ることなら、この先も一緒に来て欲しかったよ。


 でも、この戦いだけって約束で仲間入りを認めたし。

 彼女もその覚悟しか無かっただろうし。


 ……正直、俺が勇者であるということでテンション上がってくれたから


「約束ではこの戦いだけということだったが、できればこのまま……」


 って言葉が出ないかなと期待してたんだけどなぁ。

 世の中、そんなに甘く無いな。


 彼女には彼女の人生があるから、無理強いは出来ないよな……




 そして数日。


 生活費を稼ぐための討伐依頼をこなして帰って来たとき。

(お金が無いと旅も出来ないし、宿にも泊まれないからね……)


 酒場のオジさんにこう言われたんだ。


「公爵家から呼び出しがあったぞ」


 ……おや?

 これはひょっとして……?

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