第26話 主観なのよ
「まずは外見が違い過ぎるってことの意味、それを理解なさい」
最初に姉さんはそう言った。
最初、姉さんの言ってることの意味が分からなかった。
そんな俺たちに、姉さんが続けてこう言った。
「アルフ、あなたは私たちが普通で、向こうが醜い種族だと思ってるでしょう?」
……うん。
こう言っちゃなんだけど、そう思ってる。
ちょっと傲慢に思えるかもしれないけど、本心だ。
だから俺は、ちょっと周囲の目を気にしながらも、頷いた。
すると姉さんは溜息をつき
「そこが間違いなのね。……私たちが普通である根拠ってあるのかしら?」
……え?
普通の根拠……?
分からなかったから、言葉に詰まった。
普通は普通だろ?
ぶっちゃけ、俺の容姿は普通だと思う。
姉さんは昔「可愛い」とか言ってたような気がするけど、それは身内の欲目だろうし。
客観的に見て、普通だわ。
姉さんとジェシカさんは、綺麗。
ロリアは、悪くは無いけど……仕草がなんかキモイときがある。
これは多分正当評価。
しかし根拠を示せと言われても……
皆がおそらくそう言うと思う、じゃダメなのか?
そんなことを俺が考えていたら。
「ほらね、答えられないでしょ? ……美的感覚なんてものは主観なのよ」
……主観?
意味が分からなかったので
「主観ってどういうこと?」
「……勇者様、それはつまり、勝手な思い込みって意味かと思いますわ」
察しの悪い俺に、ジェシカさんの援護が飛んだ。
勝手な思い込み……?
俺の思う容姿の優劣が、俺の勝手な思い込みだっていうのか……?
なんだか、ショックだった。
そこに姉さんの言葉が畳みかけてくる。
「私たちが人魚を不気味な生き物だと思っているのと同じように、人魚たちは私たちを不気味な生き物だと思っているのよ。まずはそこを理解するのね」
人間が人魚には不気味……
俺はあの、頭部と胴体が一体化し、首が無い生物の不気味なノッペリ顔を思い出し、理不尽さを感じた。
彼らにはアレが普通で、こっちが異常……。
あり得ん、って思った。
けどさ
ふと
(そういや、互いに互いの容姿が凄まじく醜いと思っていたとしたら……)
繁殖出来ないな。
相手に容姿で全く興奮出来ないのに、交配したいとはなかなか思わないだろうし。
……人魚も魔物では無く生物である以上、男女があるだろう。
魔物の中には、オスしかいないとか、反対にメスしかいないとか。
そういうのが居た気がするけど、生物にはそういうのは無かったハズ。
そうすると、そこで生物として破綻するよな。
もし俺たちの価値観が絶対であるとするなら。
そこでようやく、俺は納得するに至った。
彼らにとって、あれが普通なんだ、ってことに。
「……分かったようね。では、次よ」
俺たちの正しい認識への到達を理解して、姉さんは頷いて。
次に、その容姿の違いを踏まえた上で出てくる疑問点について指摘してくれた。
それは……。
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