第72話 VSゴーレム

 10メートル超の土人形……ゴーレムは腕を振り上げる。

 腕の重さはトンに達するのかな。


 それが振り下ろされたので、俺は最小限の動きでそれを躱し


 反撃で鋼鉄の剣で斬りつける。

 コイツさえ倒せば、神器の剣・ターズデスカリバーが手に入る。

 神器は不滅だから絶対に破損しない。


 俺のフルパワーでも絶対に壊れないんだ。


 鋼鉄の剣は、王都で一番質のいい剣だけど、それでも俺は気を遣いながら使って来た。

 壊れると買い直しで出費になるからね。


 下段から上への斬り上げで、ゴーレムの腕が結構ザックリいってる。

 さすが鋼鉄の剣だけど……


 多分、刃が歪んでるだろうな。

 その予感があった。


 土とはいえ、固められて岩石一歩手前の硬度だから。


 そこに、ジェシカさんからの助言が来る。


「勇者様! ゴーレムは額にその存在を繋ぎとめる栓のようなものがあります!」


 なるほど。

 そこが急所なのか。


 出来れば事前に教えて欲しかったけど、今更それを言ってもしょうがないよね。

 大体、ゴーレムの大きさがここまで大きくなるのは、町ひとつ丸ごと除霊、なんて無茶をやった場合に限られるんだろうし。

 本来はもっと小さいんだろ?


 多分だけど!


 俺は腕を斬りつけられても怯まずに、逆の手で殴りかかってきたゴーレムの一撃を躱しつつ、その手に飛び乗った。


 そしてそのまま腕を駆け上がるが……


 ギオオオオオ!


 俺の意図を察したゴーレムが、俺を払い落そうと暴れる。

 駆け上がるのが不可能になり、鋼鉄の剣をかろうじて持ったまましがみ付くけど……


 暴れられると、登れない。


 ……参ったな。


 それでも何とか登ろうと足掻くんだけど……


 すると、ゴーレムの動きが少しマシになった。


 何故か、と視線を下にやると。


 リリスさんがハルバードを木こりが樹木にやるみたいに、刃を足に打ち込んで。


 姉さんがそんなリリスさんを殴り倒そうと腕を振り上げているゴーレムの腕を、多分念動力で押さえつけている。

 ゴーレムは力比べ状態に入ってて、こっちの腕への注意が薄れているみたいだ。


 ……今のうちか!


 俺はこの隙に一気に腕を登り切り。

 ゴーレムの肩の上に立つ。

 グラグラするが、この程度は耐えられる!


 真っ直ぐに頭部に向かう。


 ゴーレムの顔は、目と口の3つの穴が開いていて。

 額の部分に……


 何か、文字のように見える輝きがあった。

 読めないけど、文字っぽい。


 でも、ジェシカさんの言葉からすると……これが「存在を繋ぎとめる栓」のようなもの、だろ!


 俺は躊躇わず、全力で鋼鉄の剣の切っ先を撃ち込んだ。

 輝く謎の文字に、刃が半ばまで埋まる。


 その瞬間。


 グオオオオオオオオ!!


 悲鳴が轟き、同時にゴーレムが崩れ始める。

 足場が無くなり、俺も落下するんだけど。


 俺は地面に叩きつけられなくて


 途中で何かに受け止められて、ゆっくり着地した。


「……ご苦労様」


 そこに姉さんがやってきて。

 転がっている俺に手を差し伸べてくれたので


「まあ、なんとかやれたよ」


 少しの満足感を得ながら、俺は姉さんの手を借り、起き上がって


 仲間たちのところに向かったんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る