第71話 最後の抵抗
町からは普通に出ることが出来た。
一瞬、出られない誰かが居たらどうしよう?
そう思っていたんだけど、杞憂だった。
全員、出られた。
「勇者様」
リリスさんが俺に話し掛けてきた。
視線を向けると、リリスさんは
「お父様のことは残念だったな……」
何と声を掛ければ良いのか分からないけど、黙っていられない。
その表情に、そんな気持ちが溢れてる。
リリスさんは父上がまだ存命中だしな。
自分と重ね合わせて、そう思ったのかもしれない。
流石の俺も「アンタに何が分かるんだ? ほっといてくれ」なんて言うほどクズでも無い。
彼女のこの言葉は善意から出た言葉なんだから。
「……お気遣いありがとうございます」
素直に感謝した。
そしてジェシカさんは
土を掘って、人型の人形を作っていた。
無論、寝た状態の。
粘土じゃないからね。
……あれは何だろう?
ぶっちゃけ、ジェシカさんが俺に慰めの言葉をくれるかもしれない。
そんなことをコッソリ考えていたんだけど。
それもせずに、一心不乱に。
何か、ブツブツ言いながら。
「迷える子 浄化の祈り 届きませ 天上へと 天へと還る」
……
でも、5・7・5じゃ無いよなぁ……?
俺が首を捻っていると、姉さんが
「……あれは神官魔法の除霊の法よ」
そう、こっそり教えてくれた。
俺は
「でも、祝詞が変なんだけど?」
そう、疑問を口にすると。
姉さんは
「何にでも例外はあるの。除霊の法の祝詞はどうも言葉が決まってるらしくて……」
その構成が、5・7・5・7・7らしい。
へぇ。
姉さんが言うには。
除霊の法は除霊対象をイメージしながら祝詞を唱え続け、土人形に除霊対象を封じるそうだ。
ただし、その対象の同意を取ってることが必要。
無許可で勝手にやっても発動しない。
……その辺はさっきのことで分かってる。
俺は、親父との別れを思い出し、少し沈んだ。
そして。
除霊対象が大きければ大きいほど、土人形は周囲の土を取り込んで肥大し、デカくなる。
ズズズ……
ジェシカさんの作った大きさ30センチほどの土人形が、周囲の土を取り込んで膨れ上がっていく……
30センチが60センチになり、60センチが2メートルになり……
8メートルを超えたあたりで、土人形はむくりと起き上がって来た。
……そろそろか。
土の巨人。
そう表現するのがピッタリだ。
これは霊の生存本能の塊。
霊の意思は除霊による消滅を受け入れていても、霊の本能は存続を望み、その本能が最後の抵抗をする。
それが、これだ。
ゴーレム。
そういう名前だそうだ。
この疑似生命体は。
除霊はこの疑似生命体を退治することで完了する。
土巨人は膨れ上がりながら立ち上がり、吠えた。
オオオオオオオオオ!!
……完成したみたいだ。
最終的な大きさは10メートル超。
あとは、倒すだけ。
俺たちは各々、自分の武器を構え、魔法を使う構えを整えた。
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